殺されるなら今。
「よし、行け。どうせ殺されるなら今だ。」
その声をインカムから聞いて、『俺』は走り出した。
重機関銃を握りしめ、足音を立てずに静かに接近する。
敵を視認するまでの間、俺はなぜ、自分が死地へと赴いているのかを考える―。
昔から、戦闘員をどうするかについては様々な議論がされていた。
特に、何年か前からテロが増えたことで、「わざわざテロ集団を制圧するために、専門の戦闘員とはいえ無謀な攻撃をさせるのか」と対策を求める声が広がった。
これに対して、ある機密会議が行われた。目的は「人的被害を最小限に抑えるための方法を見つける事」だった。各国の防衛大臣や兵器開発担当の技術者などが様々な議論を交わした。
その中で最も目的に向いているとされたのが、自律型兵器や遠隔操作型兵器の開発。しかし、その開発と実用化には多くの年月を要する。そこで、ある技術者がそれまでの「つなぎ」として、冷酷だが二番目に適しているある方法を考え出した。
目の前に敵のアジトが現れた。俺は思考を中断した。『俺』は機関銃の安全装置を外し、正確に敵戦闘員達に銃口を向ける。俺はもう嫌だった。逃げ出したかった。しかし、首筋に埋められたチップが俺の意思とは別に『俺』を動かす。『俺』は銃を乱射しながら、死から免れない戦地へと突入する。
これは、残忍で非道極まりない処刑。俺は自らの犯した数々の罪を悔い、神に何らかの奇蹟を願いながら『俺』が銃弾の飛び交う戦地に踏み込むのを防ごうとがんばった。
しかし、無慈悲にも一つの弾丸が心臓を貫き、俺は見事に「死刑を執行」された。




