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拡張版・終わりなき川  作者: 田中(1.2.3.4.5.6.7.8.10.12.14.15.16.17.18.20)バカ(2.3.9)、師匠(7.9.11.13.20)
第3章
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喪失

黄昏ーー夕日に照らされた時間は不安を苛むものである。

特に、夕焼けの教室はがらんとした物淋しさが苛むものへと変化するものだ。

それは誰もが感じる普遍的色彩の感覚であり、懐旧ノスタルジアに因る寂寥感である。今というものの欠陥でもあり、過ぎ去りしものへの妄執である。夕焼けに魅せられた妖女の呻きであり、そこに忘れ去られた一つの空のバッグである。

この夕映に見合うよう、想いを失う少女がここから離れないでいた。いつもは優しい丸まった目は、今だけは虚ろに日を見つめている。首を擡げた姿勢で豊満な体は一層丸まって見える。亜麻色の髪は、日に侵されてキャラメル色に変色している。

この教室に彼女以外は存在しない。それはもう五時に差し掛かるところで、部活動や帰宅によりこの半端な時間にここは暗がりの目立つ寂しい場となるのであった。

そんなところに居るのは矢張り苛まれたからである。

そこで苛むのは矢張り後ろ影と共にあるためであった。

恋人の様子がおかしいーーそれに違いはなく、昨日と変わらず悩みぬいている。その悩みもかれこれ冬を跨いで今春に渡るものである。まず、恋人のおかしいとは去年の暮れからであった。兆候というものを含めるなら半年程前の事といえる。だからもう許しがたい罪を胸に刻まれたような気持ちなのである。


もう放っておくべきかーー今へと至る十月に感じた秋風のようにそれは心に注ぐ。

この日は空の半途で不透明な壁を作り、憂鬱の大地に降り注がぬ。ただ望みの色だけを光として地に届けるだけである。それは青にも見え、黒にも見え、赤にも見え、黄にも見え、少女には見分けのつかなかっただけの幻であった。実際は灰しか舞わぬ空に見た切望の景色なのである。


夕日の中で寒さを感じた後、「ほっとくべきか……」そう呟いた気がした。

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