番外編 お風呂のお兄様
夕食を終え、お風呂に入る私。湯船に浸かり、目を閉じ静寂を楽しむ。この時間が何よりの癒し。しかし、それは長くは続きません……。
「う〜す、入るぞ〜」
「お、お兄様っ」
私が入っているにも関わらず、お兄様は堂々とお風呂場に入ってきました。
「ふぅ〜、気持ち良いな。良い湯加減だ」
「…………」
「ミモリ、背中を流してやろう」
「えっ? い、いえ、結構です。お兄様」
「遠慮をするな。さぁ、こっちに来い」
湯船から出て、洗い場に向かうお兄様。
「お、お兄様っ、お兄様のお手を煩わせるわけには……」
「……ミモリ、俺に二度、同じ言葉を言わせる気か?」
「……す、すみません」
有無を言わせぬお兄様に観念し、洗い場に向かう私。お兄様はお風呂場に来ると何故か性格が変わってしまうのです。お風呂場だけ強気なお兄様……謎です。
「痒い所は無いか?」
「だ、大丈夫です」
私の背中を洗って下さるお兄様。
「お、お兄様」
「何だ?」
「あ、あの、私達もその、もう良い年頃ですし、そろそろ一緒にお風呂に入るのはやめにしませんか?」
お兄様とは小さい頃から一緒にお風呂に入ってきましたが、そろそろ限界です。恥ずかしいです。
「……ふぅ。ミモリ、俺とお前は世界でたった二人だけの血の繋がった兄妹だ。そんな悲しい事を言うな」
「す、すいません……?」
「分かれば良い。続けるぞ」
そう言い、私の背中を洗って下さるお兄様。ちょっと言っている事がよく分かりませんでしたが、何も言い返せません。お風呂場のお兄様は、もの凄い迫力です。
しばらくして、お風呂から出て先に着替え終わるお兄様。ここら辺でお兄様の性格は元に戻ります。
「お、おやっ」
脱衣所のドアを半開きにし、御顔を半分出し、此方を覗くお兄様。その後、挨拶を途中までし、ドアを閉め――
「すみ」
と、ドア越しに微かに聞き取れるぐらいの声量で、残りの挨拶をします。私の返事など待ちやしません。そのまま何処かへとお兄様は消えていきます。
これが私のお兄様。少し変わったお兄様。休日の一部分のみの御紹介でしたが、これでお兄様の御紹介を終わりたいと思います。
ありがとうございました。