夕食のお兄様
時刻は午後7時。そろそろ夕食の時間。新しく買った小説を読んでいた私は、キリの良い所で本を閉じ、夕食を食べるために1階へと降ります。そうしたら、いつの間にかお兄様は私の後ろに居るというのが、いつもの決まりです。
「ふぃっふぃ〜」
夜もお兄様は御機嫌な御様子。この謎の言葉は機嫌が良い時のみに出るそうです。
「こんばんは、お兄様」
お兄様に夜の御挨拶。
「あ、ちょっと。あ、ちょっと。あ、ちょっと」
そう言い右往左往をし、最終的に自席に着き何事も無かったかの様に振舞うお兄様。その後、夕食が始まります。
夕食時にはお父様がお仕事からお帰りになり、一緒に食事をします。
「……コタロウ」
「っ!?」
お兄様を呼ぶお父様。
「今日一日、何をして過ごしていた?」
「…………」
内向的な性格のお兄様を常に心配しているお父様。夕食時にお兄様の今日一日の出来事を聞くのがお父様の日課です。
「……俺に二度、同じ言葉を言わせる気か?」
「っ!? ふぁっ、ふぁっ、ふぁっくふぁざ〜」
お兄様のクシャミです。……の、はずです。
「お、お兄様……」
「だ、だいじょぶ」
「……おい、ちょっと待て。今、お前ファックファーザーと言わなかったか?」
「く、くしゃみ……ずず〜っ」
そう言い、鼻をすするお兄様。
「そ、そうか。風邪か? 気をつけろよ」
「ん」
「お薬をお持ちしましょうか? お兄様」
「だ、だいじょぶ」
「そうですか。分かりました」
「あ~、……まぁいい。今日は早く休めよ」
「ふぃっふぃ~」
夕食を終え、一息。お兄様の方を見ると、いつの間にか何処かへと居なくなっていました。