朝食のお兄様
私のお兄様は、少し変な御人です。そんなお兄様のとある休日を、皆さんに少し御紹介したく思います。
時刻は午前7時。目覚まし時計が鳴り、目を覚まし、アラームを止める私。欠伸をしつつ、ベットから降りるこの時。決まってこの時に、自室のドアが開くのです。
「おっ、おはっ」
ドアを半開きにし、御顔を半分出し、此方を覗くお兄様。その後、挨拶を途中までし、ドアを閉め――
「よ」
と、ドア越しに微かに聞き取れるぐらいの声量で、残りの挨拶をします。私の返事など待ちやしません。そのまま何処かへとお兄様は消えていきます。一方的な朝の挨拶。
着替えを済ませ、朝食を食べるために1階へと降りる私。そうしたら、いつの間にかお兄様は私の後ろに居るというのが、いつもの決まりです。
「ふぃっふぃ〜」
今日もお兄様は御機嫌な御様子。この謎の言葉は機嫌が良い時のみに出るそうです。
「おはようございます、お兄様」
ここでようやく、朝の挨拶の御返事。
「あ、ちょっと。あ、ちょっと。あ、ちょっと」
そう言い右往左往をし、最終的に自席に着き何事も無かったかの様に振舞うお兄様。その後、朝食が始まります。
毎回この朝食時に、お母様はお兄様にある事を尋ねます。
「コタロウさん、今日は何処かお出かけをする御予定はありますか?」
「っ!?」
お兄様はあまり外に出ない御人です。それを心配し、お母様は毎回お兄様に御予定を聞いています。
「せっかくの休日ですから、何処かお出かけをしてはどうでしょう?」
「ふぁっ、ふぁっ、ふぁ〜くっ」
お兄様のクシャミです。お兄様はお母様の「お出かけ」と言う言葉に反応し、よく、クシャミをするのです。
「お風邪ですか? お兄様」
「だ、だいじょぶ」
「まぁ、大変。コタロウさんお風邪ですの? 今日は安静にしていた方がよろしいですわね」
「お薬をお持ちしましょうか? お兄様」
「ふ〜。だ、だいじょぶ、ぐっじょぶ」
「? そうですか。分かりました」
朝食を終え、一息。お兄様の方を見ると、いつの間にか何処かへと居なくなっていました。