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Lip's Red 2 -狂った科学者と銀雪の狼  作者: kouzi3
第1章 混迷の基盤世界
7/27

(6) 「偽(いつわり)の狼」と「偽りの守護者」

・・・


 私は、怒っている。

 突如として取り囲み、あまつさえ私の大切な従者(ヴァレッツ)を二人も奪い去った者たちを…

 私は、怒っている。

 その予兆を全く察知すらできず、理不尽な力の行使を許してしまった自分のふがいなさを…

 何よりも…失われた従者…ウィラとティグルの命を悲しむこともできず、目の前の「狼」と名乗る者たちへの怒りだけに突き動かされようとしている…自分の情の無さに…


 「あん?…このお嬢ちゃん…何かヤル気満々だけど…何者だ?」

 「…ていうか、俺らの仕事は碧色の森泉国(イエメルアーダス)からの侵入者退治だけなんだが…この姉ぇちゃん…とオッサン…何か服とか違わねぇか?…森泉国とは…さ?」

 「でも…アッチからスゲェ勢いで攻め込んで来たんだぜ?」

 「…う~ん?…間違いなら面倒くせぇ~なぁ?…金も出ないし」

 「俺らで言ってても埒開かねぇし…嬢ちゃんに訊かねぇか?」

 「あぁ…そうだな。お前訊けよ」

 「お…俺?…い、良いけどよぉ…」


・・・


 「ん…なぁ?…姉ぇちゃん…誰?」


    【インクルゥド・スタンダァダィオゥ・ドッツ・ヘッダ…】


 「あん?…何?…どっから来たかでも良いけど…教えてよ?」


    【インクルゥド・スタンダァドラィブラルィ・ドッツ・ヘッダ…】

    【ヴォイド・メイン…インテジャ・アィ・イークォル…】


 「ちょ…ちょっと待て…こ、これって…ひょっとして…」


 私は、詠唱する。判断の遅れ、決断の甘さで…これ以上、大切な従者を失わないために。

 術式の初期化は済んだ。後は…高速詠唱に移り術を発動するだけだ。


 「…私が…誰かなど…どうでもいい…」


 私は、怒りを吐き出し…そして高速詠唱をするため目を閉じ…集中する。


 「ひ、姫様…い、いけません。こんな場所で術を行使すれば、銀雪の氷原国(フルィスケルツリン)の王どころか…ファーマス王子にも察知されます!」

 「構わぬ!…この者どもは、我が従者を問答無用に亡き者としたのだ…二人も!」

 「王たちに察知されれば…さらに多くの危機に従者がさらされるのですぞ!」

 「!…くっ…」


・・・


 集中が乱れ…術式の私は、高速詠唱へと入れなくなった。

 ラサが、初めて聴くような厳しい口調で私を叱ったからだ。いや。その内容が、私の燃え上がる怒りに冷や水をさしたからか…。


 「…お、お前等…何者だ?…い、今の…詠唱…じゃ…ないのか?」


 詠唱者(シャンティル)による儀式を見たことがあるのだろうか…「狼」と名乗る連中が、私の詠唱に気づき…ザワつく。ラサが、私にだけ聞こえるように囁く。


 「…姫様。好都合です。敵は、動揺し…警戒しています。これは好機です。私は、今から一芝居うちます…。姫様は…それに調子を合わせてくださいね?…いいですね?」

 「な…に…どういうこと?」

 「すぐに分かりますよ。では、参ります!」


 ラサが雪石竜子(スヌォウドゥラグァン)の背中で立ち上がる。

 そして、胸の前で何かを挟むように手のひら同士を向け合わせ目を閉じる。

 合掌の状態から、丁度良い距離を探るように…少しずつ間隔を開けて…やがて体の幅と同じほどの距離で手のひらを固定する。

 次の瞬間。ラサは全方位に向けて強烈な風の因子(ファラクル)能力(パーランス)を発動。「狼」と名乗る連中に向けて氷原の雪を舞上げて視界を奪う。


 「我が名はラサ。我が姫の守護者(ガルディオン)だ。まずは二人。あの世へ送ってやるから…先に逝ったウィラとティグルに詫びてこい!」


・・・


 雪石竜子の背中からラサの姿が消える。

 いや。消えたと思われるほどの速さで跳んだのだ。

 まだ、舞い上がった雪により視界はほとんど無いに等しい。


   【がっ…】【かはっ…あぐ】


 正面と斜め右前方。続けざまに苦悶する声が聞こえ…人が倒れる音がする。

 その音で、やっと「狼」と名乗る者たちが慌て出す。


 「って。ちょっ…ま、マジかよ!?…守護者だと!」


 私は、そこでやっとラサの「一芝居打つ」という言葉の意味を悟った。

 ラサは、私の詠唱に動揺した敵の心の隙をついて暗示をかけ、自らを守護者と名乗ることで敵の戦意をくじき、敵が実力を出せないうちに離脱しようと考えているようだ。

 ラサは暗示を得意としている。今は、敵と…そして自分に対して同時に暗示をかけたのだろう。この世界では、詠唱者と守護者という組み合わせは特別な意味を持つのだ。対峙しただけで、体がすくんでしまうほどに…


しかし…


・・・


 「慌てるんじゃねぇ!!…ここは俺たちの縄張りだ。相手が守護者だろうと何だろうと、いつも通りやれば勝てる!」

 「…お。おぅ。そうだな。そっちの詠唱者も、今の様子じゃぁ…詠唱を途中でやめなきゃならない事情を抱えてるみたいだしな」


 さすがに一瞬でこちらの従者を二人も消し去った連中だ。リーダー格と思われる男の一喝で、すぐに体制を立て直す。


 二人を倒した後も、ラサは動きを止めずに疾走する。

 未だに人数は、相手の方が多い。こちらはジンとクアが不在…そして、今、二人の従者の気配が消え…残るはラサ始め8人。気配を読む限り…相手は総勢14人。今、ラサが敵の2人を昏倒させ、残りは12人。ラサの力が別格だとしても…4人の差は厳しい。

 いや…敵は、不意打ちとはいえ、こちらの従者を一瞬で二人…消し去ったのだ。

 実力も…侮れない。


 動きを止めて囲まれたら勝機はない。初撃を免れた我が従者たちも、ラサの動きに併せて敵の的を私やラサに集中させないように、複雑な動きで飛び回る。

 暗示の束縛から易々と逃れた「狼」と名乗る相手たちは、配置を変えることなく我が従者たちの動きをじっと観察している。

 我が従者たちの動線が交差し、敵の一人の視界を遮った瞬間。

 ラサが闇色の光を指先に集め、闇のつぶてを連射する。

 ラサの闇の技は強力だ。通常の風や水の因子による防御程度では防げないハズだ。…が、敵の目前に何か見えない壁でもあるかのように…ラサの攻撃は相手に通らない。


・・・


 「!…姫様。お逃げください。何人か従者たちを付けます。こいつらは………なかなかやる…」


 ラサが私に叫び…因子通信(コミュータ)で指示を受けたのか2人の従者が私の両脇に現れる。確か、エルスとテトという名の比較的老齢な従者だ。


 「待て。…ラサ、私は…」

 「姫様を守りながら戦う余裕が、私にはないのです!!…未熟な私をお許しください!…さぁ。エルス!テト!…私と残りの者で、何としても止めて見せる…だから…頼んだぞ」

 「…ち、違う…ま、待て…ラサ!!」


 私の命令を聞かず、ラサの姿が掻き消える。

 本気のラサの力は、間違いなく凄まじい。だが…相変わらず、こちらの従者の火や水、風などの様々な攻撃が襲いかかる中…敵は未だにその数を減らすことなく…それどころか立ち位置すら変えていない。

 しかし、さすがにラサや我が従者たちの猛攻に、敵は防御に集中せざるを得ず、敵からの攻撃は止まっている。

 その隙に…ラサは私に逃げろと言うのだ。

 エルスとテトが、私の乗る雪石竜子の腹を蹴る。私の意志とは関係なしに、私の体はラサたちの闘う場所から遠ざかろうとしている。違う。違うぞ、ラサ。こんなのは、違う。


 「ラサ!!!」


・・・


 私は、狂ったように走り出した雪石竜子から振り落とされないように、必死にしがみつくことしかできない。エルスとテトの操る雪石竜子に両脇から挟まれ、彼らが最も安全だと考える進路へと誘導される。

 ラサと、ラサと共に残った従者たちの猛攻により動きを制限された「狼」と名乗る敵たち。その配置の隙を縫うように、3人と3匹が駆け抜ける。横をすり抜けようとする時、私へと攻撃する構えを見せる敵もいるが、エルスとテトの2人が風と水を操り簡易の結界を張る。水と風は、氷原の寒さのため一瞬で細かい氷の霧となって敵の視界を奪う。

 敵の後方へ抜ける!…そう思ったその時…


 「…甘いなぁ…。ここは…俺たちの縄張りだぜぇ?…氷霧なんかで目潰しになるもんかよぉ。…それっ!…喰らいなっ!」


   【っっっつつづづづどぅどぅどぅどぅどぅどぅずずずずがぁぁあああん!】


 「!…姫様!…くそっ!」

 「エルス!…」


 敵が、あの不意打ちと同じ技を放つ。

 私の乗る雪石竜子が、エルスの雪石竜子に横から突き飛ばされて大きくよろける。

 次の瞬間………エルスと、エルスの騎乗する雪石竜子の姿が掻き消える…。


 「え、エルス!?…」


・・・


 「姫様…こっちです!!」


 エルスの気配が消えた…?…またしても一瞬で?

 しかし、テトはそれを振り返ることもなく、私の雪石竜子を斜め後方から押すように速度を上げさせる。

 これで、こちらの従者の人数は7人…私を入れても8人だ。敵は12…いや、今、ラサが…また1人を昏倒させて11人。

 しかし…何故だ?

 我が白暮の石塔国(ファイストゥーン)最強のラサを持ってしても、相手により強烈な要素(ルリミナル)の波動を叩きつけることで、辛うじて昏倒させて行動の自由を奪う…これが精一杯だ。

 なのに…何故…敵は、こうも簡単に…一瞬にしてこちらの従者を消しさるのか?

 我が従者も、ただで敵の攻撃を受けているわけではない。自らの周りの要素(ルリミナル)を支配し、敵の技の波動を跳ね返すための防御結界を常時展開しているハズなのだ。それが…厳しい訓練を受けた従者にとっては、呼吸と同様に当たり前の振る舞いなのだから…


 「…て、テト。ま、待て…。待つんだ!…気が付かないのか?…何か…おかしい」

 「お話は後でいくらでもお聴きいたします!…ですが、今は…逃げて下さい!」

 「ち、違う………た、頼む…私の話を聞いてくれ!」

 「姫様…左!!…くっ…くそう!…」


・・・


   【っっっつつづづづどぅどぅどぅどぅどぅどぅずずずずがぁぁあああん!】


 テトが消える。

 私の目の前で…またしても…一瞬にして。


 「…と、止まれ!…雪石竜子。お願いだ…私の言うことを聴いてくれ!」


 私をかばってテトも消えた。


  【っっっつつづづづどぅどぅどぅどぅどぅどぅずずずずがぁぁあああん!】

    【っっっつつづづづどぅどぅどぅどぅどぅどぅずずずずがぁぁあああん!】

   【っっっつつづづづどぅどぅどぅどぅどぅどぅずずずずがぁぁあああん!】


 護衛役を失った私の元へ、駆けつけようとしたアグナが…ドットが…キュルラが…その行動切替の一瞬の隙をつかれて…続けざまの轟音と共に…姿を消す。

 ラサが叫ぶ…


 「姫様…我々が命に代えても…敵の足止めをします。…どうか…そのまま駆け抜けて下さい。…メイリア!…レノウ!…三角陣形で姫様と敵の間だけを死守するぞ!」


 ラサは、残った二人の従者に命じて…自らはさらに速度を上げる。

 鬼神の形相で、敵の1人に闇の技を叩きつけ…何とかまた1人を昏倒させる。


・・・


 今…こちらの従者は、ラサの他には…メイリアとレノウの二人だけ。

 敵の数は未だ10人も残っている。どれだけ攪乱しようと…囲まれるのは時間の問題だ。


 「ラサ!…ラサラサラサ!!!…落ち着け…何かおかしい!…頼む…気づいてくれ!」


  【っっっつつづづづどぅどぅどぅどぅどぅどぅずずずずがぁぁあああん!】

    【っっっつつづづづどぅどぅどぅどぅどぅどぅずずずずがぁぁあああん!】


 しかし、私の叫びは…立て続けの轟音にかき消されラサに届かない…


 「メイリア!!…レノウ!!!…くっ…ひ、姫様!!!」


 ラサが叫ぶ。遂に、我が従者は、ラサだけを残して、全て消えてしまった…

 私の隣に、疾風の如くラサが現れる。私の盾となるために。


 「ふぅ…なかなか手こずらせてくれちゃったけど…後はオッサンと嬢ちゃんだけだ。」

 「・・・」

 「さすがに『守護者』は…強いねぇ………と、言ってやりたいところだが…オッサン。もう、いい歳なんだから無理はしない方がいいぜぇ?…嘘だろ?…守護者ってのはさ」


 私の横に立つラサ。呼吸が荒い。一人で4人を昏倒させたのだ。無理もない。


・・・


 「くぅっ…泣けるねぇ。姉ぇちゃんを守ろうと…『守護者』だとか…嘘までついて、頑張っちゃうんだから…俺ぁ…感動しちまったよ?…ホントだよ?」

 「さぁ…一気に、二人とも消しちまっても良いんだが…。氷原国軍から報奨金が出るのか出ないのか………アンタらが誰なのかによるんだよねぇ。俺たちのために…ちょいと名乗っちゃくれねぇかな?」


 私の横で…ラサが必死に考えている。どうすれば、この絶体絶命の状況を打開できるのか。どうすれば…私だけでも逃がすことが、できるのか…と。

 私に向かって口を開きかけたラサが、思いとどまり…また苦悩の表情を浮かべる。

 ラサが、今、何を考えたのか…私には分かる。自分を…一か八か…本当に守護者として選定の儀を行え…そう言いたいのだろう。本当の守護者となれば…この状況を覆すことができるかもしれない。

 それならば…私は、もっと早く…決断しなければならなかったのだ。私が…ラサを守護者としなかったことで…9人もの従者を失ってしまった。今更…ラサを守護者として…私は…おめおめと生き延びるべきなのだろうか………いや。9人を失ったことは…私の罪だ。その裁きはいつか受けなければならない…しかし、今、ここでラサを守護者とすれば…少なくともラサ1人は、生きながらえさせることができる。

 ただ…

 ただ、その前に…一つ確認したいことがある。

 私は、「狼」と名乗る者たちのリーダー格の男を睨みつけながら言った。


 「…確かに…ラサは『偽りの守護者』かもしれぬ。…しかし…それを言うなら…お前たちとて…『偽りの狼』ではないか」


・・・


 「はぁ?…何言ってんだ?…この姉ぇちゃん?」

 「おぉ。俺等は隠し名が『狼』っていうだけで…そりゃぁ…本物の『狼』じゃねぇけどな…ってか、そもそも伝説でしかない『狼』に、本物も偽りも無ぇだろう?」


 相手の男たちだけでなく、ラサも私を心配そうに見つめてくる。

 私は、ラサだけに聞こえるように…しかし、ハッキリと告げる。


 「ラサ。…この者たちは…それほど強くない。目を醒ませ。お前は暗示にかかっているのではないか?」


 呼吸を整えながら、ラサが再び敵に目を向ける。


 「…何か…コソコソ話してるようだけどよぅ。答えないなら…まぁ、それでもいいや。ただ働きになるかもしれねぇが…こっちも4人倒されたからな…そのオッサンには、どのみち消えてもらうつもりだからよ」

 「おぉ。俺、良いこと思いついちゃった!…うぃひひひ。オッサンよぉ?…アンタたち、そのお嬢ちゃんを…どうしても守りたいみたいだけど…オッサンが大人しくやられてくれるんなら…お嬢ちゃんだけは、消さずに…氷原国軍へ引き渡すだけにしといてやるぜ?」

 「おぉ!…いいねぇ!それ!…俺も、女の子虐めるのは、好きじゃねぇんだよ」


 くっ…やはり相手は心理戦を得意としている。折角、ラサを冷静にさせるチャンスなのに…こちらの弱点を突く駆け引きをしかけてきた。

 敵を観察し始めていたラサの視線が、再び私へと帰る。


・・・


 駄目だ…ラサ。私だけでは…。頼む、気づいてくれ………そう願う私の思いも、ラサには伝わらない。ラサが、悟ったような表情で敵の指示に従うことを決意しようとしている。私だけでも、生還させようと…その思いがひしひしと伝わってくる。

 私は、最後の望みを込めて、ラサへと言葉をかける。


 「ラサ…諦めるな。私は、決意した。お前を今から本物の『守護者』とする」


 だが…ラサは、疲れたような笑顔を私に向けて首を横に振る。


 「…もう、良いんですよ…姫様。…姫様はご存じないと思いますが…彼ら…氷原国特殊傭兵部隊『狼』は…森泉国との領土争奪戦において…あの基盤(サードレイヤース)世界最強と言われる…ファーマス王子の守護者、マルルィア殿と互角の戦いを繰り広げたと言われているのです。…信じ難い話でしたが…実際、彼らが健在である以上…彼ら…『狼』の実力は、本物です。…私が、今更『守護者』となったところで………」


 くっ…それか…暗示を使った戦闘を得意とするラサが、敵の暗示に易々とかかった理由は…『狼』という特殊傭兵部隊の既得情報に対する先入観があったからなのだ。

 いや…それとも…やはり私の思い過ごしなのだろうか?…しかし…


 「ラサ。騙されるな。奴らが約束通り、私だけ助けるなどという保証は無いぞ」

 「いいえ…。姫様。もし、そうなら…こんな問答などせずに、彼らは既に、我々二人ともを…その手にかけているハズです。…マルルィア殿とも互角に戦える強者が…姑息な手段を使うとは思いません。…姫様だけでも助かるのであれば…従者としては本望です」


・・・


 私たちの会話を聞いていた「狼」を名乗る連中は、ニヤニヤとした嫌な笑いを浮かべて…こちらを見ている。

 私には、十分に姑息なことをしそうな連中に見えるのだが…


 「さぁ。覚悟はできたかな?」

 「待て。私の身分を素直に話す。我々は、決して森泉国の人間ではない。だから、私だけでなく、ラサも…私の従者も、手にかけないでくれ」

 「…ん~。どうしようかなぁ…なぁ?…どうする?」


 一番、不真面目そうな顔をした男が答える。


 「あぁ?…駄目、駄目。もう、時間切れだよ。…っていうか…着ているもん見れば、なんとなく想像つくしねぇ。アンタ…白暮の石塔国の人だろ?…で、そっちのオッサンが、さっきから『姫様』とか…呼んでるから…まぁ、そこの姫なんだろうさ?」

 「おぉ。それだ!…じゃぁ…聴く必要もなくなったな。お姫様ゴメンな…悪いけど、このオッサンは…消さないと厄介だからな…ということで、オッサン。覚悟は良いな?」


 待て!…と、言おうとしたが…相手はもう聞く耳を持っていない。私の方を見ることもなく、リーダー格の男がその腕を振り上げ、手のひらに不可視の力を集め…振り下ろす。

 くっ…もう駄目なのか?…マモル殿…あなたなら…どうするだろう?…どんな危機的情報でも、最後まで諦めない…あなたなら…考えろ。考えろ考えろ…私。

 しかし、無情にも…その手は振り下ろされる。ならば…ラサ一人では死なせない。私は、ラサの隣へ…その正体不明の攻撃をラサと共に受けるため、体を投げ出した…


・・・


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