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HEART Of STEEL  作者: ブッチ
第一章 業火の一振り
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Hard Impact

戦闘シーンを書くのは難しい…書いてて楽しいけど… P.S. 間違いに気付いたので投稿し直しました。他にもあるようならご報告下さい

 その部屋は朝の9時とは思えない程に暗かった。その部屋が元々、地下にあるというのもあるのかもしれないが、それでも異常であった。

 地下にいることに圧迫感を与えない為に造られた、疑似的な青空の光も、カーテンによって遮られ、部屋に取り付けられた電灯は、部屋の主がスイッチを切った為にその役目を果たすことはない。

 その部屋のレイアウトは見る人間によっては、奇妙という評価を下しかねなかった。

 その部屋の大部分を構成する家具のほとんどは、飾り気の無いものばかりなのだが、その中に点在する小物の類はどれもがこの部屋に似合わない、可愛らしい雰囲気を発していた。ぬいぐるみ、コップ、手鏡、花瓶等、数は多くないが、そこそこの種類のものがそろっていた。

 この、ちぐはぐな部屋の主たる、女性…、アリス・フローレンは、顔を膝に埋め、体を抱え込む様にしてベッドの上に座っていた。

 彼女のG・S乗りにしては珍しい美しい両腕には、何本もの引っ掻き傷が存在し、短く切り揃えられた茶髪は、手入れもされずボサボサになっていた。そして、なにより彼女の思考は四日前の出来事に囚われたままであった。


「……なさい…、………が、…の時……げなければ、…ーカスは……くて済んだのに…。ごめ……さい…」


 アリスのなにかが壊れたような呟きだけが、彼女が生きていることを証明していた。

 もし、彼女の顔が膝によって隠されていなければ彼女の表情を確認することができただろう。その端整な顔立ちは、今や複数の感情がごった煮になっていた。

 師を失った悲しみ。師を助けられなかった自責の念。あのとき、師を見捨てて逃げたことへの後悔。未熟な自分に対する怒り。もう、あの温もりを手にすることができない、という事実への恐怖。そして…、

師を殺した相手に対する純粋な殺意。

 これらの感情はアリスに一つの決意をさせるには、充分だった。


「殺す……。必ず…奴を……、殺す…!」



「来るぞ!左だ!」


 ケビンが無線にむかって怒鳴り、機体に回避行動をとらせると同時に、ビルの壁を突き破って赤いG・Sがケビンとハロルドの機体に切りかかってくる。ケビンの機体はそれを紙一重で回避すると、アンノウン機にむかってマシンガンを連射する。しかし、アンノウン機はそのまま反対側のビルに突っ込んで姿を消してしまう。


「クソッ!あの野郎、またかよ!オイ、ハロルド大丈夫か!?」

「左のライフルの銃身を少し持っていかれたが、大丈夫だ!しかし、この状況はまずいな…」


 少し前に、二人の前に現れた、アンノウン機はビルの壁を突き破って姿を現したかと思うと、二人に突撃してきた。それを避けると、アンノウン機はそのままビルに突撃していった。最初は逃げたのかと考えたがその考えはすぐに違うことが分かった。アンノウン機はビルを隠れ蓑として、利用したのだ。

 本来、G・Sは二種類のレーダーとモニターによる目視で敵を捕捉する。しかし、二人の機体はソナー探知レーダーをジャミングによって使い物にならなくされている。つまり、現在ケビン達は熱探知レーダーと目視のみで戦闘を行なう必要があるのだ。それに追い討ちをかけるが如く、アンノウン機はビルの内部を移動することで、目視による索敵も制限し始めたのだ。


「しかし、どういうつもりだ、あの野郎?奴の実力ならこのまま俺たちを殺れるだろうに」


 ハロルドの疑問ももっともであった。二人が交戦している、この機体はマーカス・レインを斃したのと同一の機体であるのはイージスからの情報と照らし合わせて、ほぼ間違いないだろう。なのに、それ程の実力者相手に不利な状態で戦っているにも関わらず、ハロルド達の機体はまだ大きな損傷を受けていないのだ。


「大方、俺等の実力を測ってんのか、ただ単にいたぶってるんだろ?どちらにしろ余裕満々ってことには変わりねぇけどな。むかつく野郎だ」


 ケビンは苛立たしげに吐き捨てると、レーダーが捉えた、ビルの向こうにいるアンノウン機に向かって両手の銃を撃ち込むが、相手も予測していたのか、加速することで回避する。


「チッ!舐めやがって!」


 ケビンが舌打ちをして、レーダーを頼りに撃ち続けていると、レーダー上のアンノウン機の温度が急に上昇したかと思うと、今までと逆方向に向かって高スピードで突き進み、射線上から外れてしまった。


「ハァ!?コイツいまなにを…!」


 ケビンが言葉を言い終えるまえに、アンノウン機は壁を突き破ってケビンの機体めがけて切りかかってくる。ケビンは機体をアンノウン機の左側に向かって回避行動をとらせることでこれを避ける。


「いい加減、目が慣れてきたんだよ、この単細ぼ…って、うぉぉぉぉ!」


 回避した直後、アンノウン機はこれも予測済みだったのか、すれ違い様に左手のショットガンをケビンの機体の左腕めがけて、撃ったのだ。その結果、至近距離からの一撃を受けた左腕は破壊されてしまったのだった。


「ケビン!大丈夫か!?」


 ハロルドがアンノウン機に向かって発砲しながら、声を上げる。アンノウン機はそのまま、ビルの壁を破壊して内部に消えてしまった。


「クソッ!あの野郎、左腕をぶっ壊していきやがった!修理費、いくら掛かる思ってんだ!畜生!」

「その調子なら大丈夫そうだな」

「バカ言ってないと、冷静さを保てねぇんだよ。それより、どうする?本格的にキツいぜ、これは。」

「まったくだよ。畜生、とんでもない厄ネタに飛び込んじまったぜ…。とにかく、ここはマズイ。広場に場所を移そう」

「ジャミングは大丈夫なのかよ?」

「とりあえず、コイツの性質だけは割れたんだが、コイツが無効化できるのはソナー探知限定らしい。」

「そういう事なら、さっさと行こうぜ。こんな、アホみたいな死に方は御免だ」

「確かに、反政府組織のG・Sにバッタリ出会って、二人がかりで挑んで負けましたじゃ、カッコ悪いな」

「そういうこった。行こうぜ」


 二人は軽口を叩き合うと、機体を遺物が存在した、広場に向けて猛スピードで移動させる。アンノウン機も狙いに気付いたのか、ビルから隠れるのを止めて二機を追い始める。


「構うな!このまま走り抜けろ!」


 ケビンがこう叫んだのには理由がある。まず一つは、G・Sは背部にのみブースターが取り付けられている関係上、ブースターを使って、そのまま後退するという事ができない。ブースターは可動式で、ある程度向きを調整出来る為、半身になる形で運用すれば後ろにも攻撃出来るが、スピードが低下してしまう。今回の場合、アンノウン機はどうやら規格外のブースターを使用しているのか、かなりの速さで追いかけてきている。その為、もしそんなことをすれば簡単に追い付かれてしまうだろう。

 もう一つの理由は、彼が今しがた考えついた一つの策にあった。

 ケビンは機体の速度を僅かに下げると、ハロルドの機体の後ろに着いた。


「オイ、なんのつもりだ、ケビン!?」

「なに、ちょっとアイツを口説いてやろうとな。お前はそのまま、前を見てりゃいい」

「分かったが、無茶すんなよ!?」

「任せなよ。まぁ、楽しみに待ってな」


 そう、ハロルドに返すと、ケビンは熱感知レーダーに意識を集中させる。


「さぁ、踊りに来いよ、セニョリータ。綺麗にあの世までエスコートしてやる」


 そうして、レーダーがアンノウン機の戦闘範囲に自機が近づいて来た事を確認すると、モニターの下に取り付けられた、端末を操作する。


「さぁて、ロックンロールと洒落込もうじゃねぇか…!」


《大型ガトリング砲、『スパルタン』、起動》


 この言葉がモニターに表示されると同時にケビンの機体の右背部に取り付けられていたリリスが煙を上げて変型を始める。

 リリスには大きく分けて二種類ある。

 一つはイージスが標準装備として、大量生産し、全職員共通武器として供給されている、〔名前無し〕の武器。アサルトライフルやマシンガンなど種類は複数あるが、基本的に一種類しか存在せず、オリジナリティーを出すには、同じく供給されているカスタマイズパーツを使用するか、独自の改造を行なう必要がある。その分、使用に規制がかからない為、誰でも自由に使用する事が出来る。

 もう一つは、名前のついた、〔ユニーク・ウェポン〕、通称〔U・W〕と呼ばれる武装である。これは、名前無しと違い、高い性能を有するが所持にはイージスの許可が必要となる。その種類は多種多様に存在し、コロニー別に限定生産されている物も存在する。

 その為、能力はそれこそ多種多様で極端な物が多い。

 今しがた、ケビンの機体が展開した〔スパルタン〕は、U・Wの中でも、最も使用者が多く、コロニー・ムスタフのイージスの基準では、地下四階以上の職員のみに所持が限定されている兵器である。性能は至ってシンプルで、距離減衰を下げ、威力を上昇させた、より制圧能力の高いマシンガンといった所である。比較的、極端な性能の多い、U・Wの中でも凡庸性に優れ、癖も少ない為、低ランクのG・S乗りにも所持が許可されている。

 欠点としては、凡庸性の高さの代償として、尖った面を持たず、他のU・Wと違い、大きな戦果を残しにくい事、癖が無いと言っても、高い火力を実現する為に重量はかなりあり、近距離では取り回しの悪さから遅れをとる場合もあり、また、集弾性の関係で、遠距離向けの武装でも無い為、相手との距離をある程度、維持する技量が必要になってくる、といった面も存在する。

 ケビンはスパルタンが展開されたのを確認すると、スパルタンを背部に待機させたまま、機体を半身にして、右腕の銃を構える。

 アンノウン機もスパルタンが展開されたのを確認すると、一気にスピードを上げて接近しようとしてくる。恐らく、最適な距離を確保される前に機体、ないしは、右腕を破壊して無力化する算段なのだろう。


「来やがったな…。足腰、立たなくなるぐらいブチ込んでやるぜ…!」


 そう呟くと、ケビンはレーダーで、相手が彼の作り上げた殲滅地帯(キルゾーン)に突入したことを確認すると、端末を手短に操作して、背部に待機させたスパルタンを“切り離す”と、短く呟いた。


クソでも喰らいな(Fuck you)アバズレ(Bitch)!」


 切り離されたスパルタンは縦に回転しながら、アンノウン機目掛けて突っ込んでいった。

 流石にこれは読みきれなかったのか、アンノウン機は、攻撃を中止し、やや、危うげに左方向に回避する。この状況でも、ケビンの機体の背後を獲るように行動するのは、流石としか、言い様がなかった。しかし、この決断が今回はアンノウン機の未来を左右する結果になる。なぜなら、ケビンの策はこれで終了では、なかったからだ。


「派手な花火はお好きかな?セニョリータ?」


 ケビンはそう呟くと、機体の右手に持つマシンガンでスパルタンがアンノウン機に近づいた瞬間を狙って撃ち抜く。銃弾はスパルタンのフレームを貫通し、中のに搭載された、大量の弾薬に命中する。 その結果、スパルタンは大爆発を起こし、その爆発は至近距離にいた、アンノウン機をあっさりと飲み込んだ。


「ヒィィィィィハァァァァァ!!ざまぁみろ!」

「オイ!ケビン、テメェ何しやがった!?」

「なぁに、特大の一発をお見舞いしてやったのさ!」


 突如、発生した莫大な熱量に思わず声を上げたハロルドに、さも、してやったりといった表情で無線を返す、ケビン。


「なんだか、よく分からんが、俺は、無茶するなと、事前に……、オイ、マジかよ…」

「アァ?どうした?」

「あの野郎…、まだ、生きてやがる…!」

「……ハァ!?」


 ハロルドから口から発せられた、言葉に思わず思考が一瞬、停止する、ケビン。

 慌てて、熱探知レーダーを確認すると、そこには確かにアンノウン機のものと思われる、熱源が存在した。


「…ッ!行くぞハロルド!広場まで退いて、体勢を立て直す!」

「了解した!それと、援軍だが、約五分で到着するらしい!」

「そいつは、いいね!救世主(メシア)の、御登場か!」

「そういうこった!生き延びるとしようや!」


 二人は言葉をかわすと、機体のスピードを上げ、広場に向けて突き進む。

 アンノウン機は、数秒ほど爆心地で停止していたが、やがて動き出すと、再び二機を追い始めた。


 数秒のアドバンテージのおかげか、アンノウン機が広場に突入した時にはすでに二人の機体は、アンノウン機に向き直って、戦闘体勢に入っていた。


「クソッ…!あの野郎、ブレードを楯にして、爆発から生き延びた訳か。それにしても、コイツ…。」

「あぁ、なんでまだ動けるんだ…?」


 あの爆発の時、アンノウン機が左に回避行動を取った時、ケビンは内心、歓喜していた。なぜなら、自分の策が完璧に決まっていたからだ。

 ケビンはスパルタンを使うと決めた際、一つの不安があった。それは「これを奴の至近距離で爆発させたとして、はたして倒せるかどうか?」だった。

 ケビン自身この様な使い方をするのは、初めてなので、どれほどの威力があるか分からなかったのだ。 その為、ここから先はただの運任せでしかないのだが、できれば、アンノウン機の右側で爆発させ、仮に倒すことができなくても、ブレードの破壊だけでも成功させたい、という考えがあった。

 結果として、アンノウン機は左側に回避し、ケビン自体もスパルタンの予想以上の威力を見て、倒したと思い込み、なぜ左に回避したかは、深く考えず、せいぜい自分の背後を取る為ぐらいにしか、考えなかった。その為、アンノウン機が左に回避行動をとったのは、右腕のブレードを楯にする為だと気づけず、アンノウン機が今の爆発を受けて生き残ったのは、今までの実力から考えて、なんらかの方法を使って回避したのではないか?と、いった考えを二人は抱いてしまい、二人は仕止められる絶好の機会があるにもかかわらず、撤退という選択を選んでしまったのだった。

 しかし、彼等が本当に驚いたのはブレードを楯にして生き残った、という事実ではなく、爆発によって楯にしたブレードが右腕ごと吹き飛び、その破片がコックピットの存在する胸部に多数、突き刺さり、頭部が半分吹き飛んでいるにもかかわらず、まだ可動しているという事実の方であった。


「もう、どうやったら、あの野郎くたばるんだ?誰か、教えてくれよ…」

「バカ言ってる暇ねぇぞ、ケビン!突っ込んでくる!」


 アンノウン機は残った左腕に持つショットガンを構えると、ハロルドの機体目掛けて突っ込んでくる。


「悪いが、ブレードの無いテメェなんぞ…何ィ!」


 アンノウン機はハロルドの機体の銃撃を今まで以上のスピードで回避すると、そのまま、ハロルドの機体の右側面に回りこむと、至近距離から脚と、腕に撃ち込み、破壊してしまった。


「ハロルドォ!!」

「俺なら、大丈夫だ!それよりあの野郎、ブレードを外した影響か今まで以上に速ぇぞ!」


 アンノウン機は、ケビンに応答する隙さえ与えずに、ケビンの機体目掛けて、攻撃を開始する。ケビンがこれを、迎撃しようとするが、そのスピードの速さから、捕捉することすら、できなかった。


「クソッ!調子に乗りやがって…!」


 ケビンは、悪態を吐きつつも、攻撃するが、それをあざ笑うかのように、アンノウン機はケビンの機体の真横をすり抜ける。すると、次の瞬間、アンノウン機の右側が左側が爆発したかのように光ると、その場で百八十度回転する。


「なっ、ブーストスピン!?こいつ、こんな芸当まで!?」


 ブーストスピンとは、三つのブースターの推進力を調節することで、その場での急激な方向転換を可能にする技術である。しかしながら、これにはかなりの熟練が必要であり、実戦で使いこなせる者はほんの、一握りといわれている。

 アンノウン機はそのまま、ケビンの機体の背部に存在するブースターに向かって、ショットガンを撃ち込んで破壊してしまった。


「オイオイオイオイ、マズいんじゃないか、これ!?」

「…言うなよ、漏らしそうだ…」


 さきほどとは、一転して絶体絶命の状況に陥る二人。しかしここで二人の予想は大きく裏切られる。アンノウン機は二人に止めを刺さずにそのまま、広場から撤退してしまったのだ。


「アァ?どういうつもりだ?」

「どうやら、最後の最後にツキが回ってきたらしい」

 

 そう言って、ハロルドはケビンに熱探知レーダーを見るように促がす。そこには、複数の〔G・S〕と思われる物体が接近していた。


「援軍か…!」

「そう見てぇだな。首の皮一枚で繋がった、って感じだなまったく」

「あぁ、今ならキリストのケツにキス出来る気分だ。主よ、お導きに感謝します、ってな」


 こうして、ケビン・カーティス及び、ハロルド・ジョーンズの、彼等でさえ予測の出来なかったもう一つの『日常』はひとまず幕を閉じた。

戦闘シーンは二回目でしたがどうだったでしょうか?

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