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HEART Of STEEL  作者: ブッチ
第一章 業火の一振り
19/44

禁忌

いつもより早く書き終えた一方、やっぱり、文章量が多くなって、予定とは違う終わり方に…。

 “それ”は、この世界に生れ落ちてからの長い年月の中で、最も、恐れ、狼狽していた。

 自らの最強の駒は打ち倒され、簡単にかたが付くと考えていた地上の敵は、想像を超える連携と実力によって大地を蹂躙していた。

 そして、なにより問題なのがこの施設の制御が何者かに奪われ、“それ”は一切手出しをする事が出来なくなってしまった事であった。

 それによって新たな兵士を差し向ける事はおろか、隔壁の開閉すら行なえなかった。それに加え、制御を奪われた際に全ての隔壁が解除されており、現時点で“それ”を守るものは何も無かった。

 “それ”は必死に制御を取り戻そうとするものの、今の状況では制御を奪った存在を探し当てる事すらできず、ただ刻々と時間だけが過ぎていった。

 そして“それ”にとって最悪なのは、自らを破壊しようと試みる者が存在しているという事だった。

 “それ”は、何とかこの場を切り抜けようと必死に策を探す。そして、一つの結論にたどり着いた。しかしその行為は“それ”にとっても危険な策であり、少なくともこの施設を捨て、単独での生存を可能とする事が必要条件であった。

 それは少しの間思案するものの、近い内に訪れる脅威の前にその懸念を思考から追い出すと、その策を実行すべく、緊急用として制御システムを隠蔽していた最後の設備を稼動させる。

 その設備が稼動し、その役目を果たそうと動き出したのと同時に、“それ”の意識は、次第に失われていく。長い年月の中で初めての経験に、“それ”は強い恐怖と不安を感じるものの、何とかそれらの感情を押さえ込む。だが次第に薄れ行く意識の前に、“それ”はそういった行為ですら放棄する。そして数秒後、“それ”の意識は完全に消滅した。




「クソッ…、こんな事ならもうちょっと考えてやればよかったぜ…」


 赤と黒の機体によって瓦礫が散乱した空間を、ケビンはマシンガンを構えながら必死になって移動していた。

 ケビンは赤と黒の機体との戦闘の後、ハロルド達の下に戻ろうと考えていた。しかし、その考えは直後に機体から送られたデータによって放棄する羽目となった。

 戦闘後、全ての隔壁、扉が開かれていたのだが、その内一つから、生態反応が検出されたのだ。反応は弱いものの、機体からの報告によると人間である可能性が高く、四時の方向にある扉の先から検出されたとの事らしかった。

 ケビンは一人で行くべきか迷ったものの、結局盛大な溜め息を吐きながら、サバイサルキットとサブマシンガンを手に取り、その生態反応の正体を確認すべく行動を開始したのであった。


「つーか、別に歩いて行かなくても扉の近くまで、G・Sで来ればよかったじゃねぇか…。うん、これはあれだ、要救助者を刺激しない為の意味のある行動…って事にしとこう。じゃなきゃ、やってらんねぇよ、まったく…」


 ケビンは自分の短絡的な行動に愚痴を零しながら、扉に向かってひたすらに歩き続ける。そして途中、大きな瓦礫を避ける為に迂回するなどして予定より長い距離を歩き回った挙句、三十分程かけて、ようやく扉の前に到着した。


「やっと着いたか…。さて、中はどうなってんのかな…なんだよ、こりゃあ…!」


 部屋の中に辿り着いたケビンは、中の光景を見て言葉を失った。

 部屋の中にあったもの、それは大量の巨大なカプセル状の物体、そしてその中で培養液に浸かる、物体と同数の女性達であった。




 無人機を撃破したアリスとハロルドは、何一つ動く者の居ない施設の中を、サブマシンガンとサバイバルパックのみを手に、ただひたすらに突き進んでいた。


「ちょっと!これ、元の道に戻ってきてない!?」

「あー…、そうだな、戻ってきてるな」


 ただし、複雑な地形によって迷っている最中だったが。


「このルートが駄目だとすると…、次はこっちのルートか…」

「かれこれ、数十分はこんな事続けてるけど、この道はどこまで続いてるのかしら…?」

「そう言うなよ。とりあえずケビンに連絡を取ってみてくれ。もしかしたら繋がるかもしれん。」

「分かったわ、と…」


 ハロルドに促されたアリスは愚痴るのを止めると、ヘルメットに搭載されている無線を使ってケビンに連絡を取ろうとする。


「此方、アリス。ケビン、聞こえたら応答して」

『ん、なんだよ、無線回復してんのかよ。ハイハイ、聞こえてますよー』


 無線から流れるケビンのいつも通りの言葉に、アリスは思わず安堵の溜め息を吐く。


「ハロルド、繋がったわ」

「よし、分かった」


 ハロルドはアリスの言葉に頷くと、自分の無線もケビンに繋ぐ。


「よぉ、無事だったか」

『まぁな、そっちも無事なようだな。やっぱり、俺の相棒はそうでなきゃいけねぇ』

「褒めてもなにもでねぇよ。それより、そっちは今どうなってんだ?」

『あぁ、それなんだが…』


 ハロルドの問いに、無線の先のケビンは一回言葉を切ってから話し始める。


『こっちは今、裸のお姉さん方に囲まれちまってる』

「…なに言ってんの、アンタ…?」

「……お前…、クスリやるのは自由だが、任務中は止めとけよ…」


 ケビンから返ってきた意味不明の返事に、二人は呆れた様子で言葉を返す。ケビンはそれに対し怒る様な素振りも見せずに話を続ける。


『ついでに言うと、どのカワイイ子ちゃんも目も合わせてくれない上に、培養液みたいなのから出て来てくれないし、どいつもこいつも双子みたいにクリソツときてる』

「…何人くらい居るんだ?その“カワイイ子ちゃん”っていうのは?」


 ケビンの言葉を受けてハロルドとアリスの表情が引き締まる。ケビンも口調こそは変わらないが、幾分か言葉に真剣味が表れる。


『判んねぇな。とにかくたくさんだ。』

「そうか。助けは必要か?」

『いや、俺一人で充分だろ。何か分かったら連絡する。』

「了解した。気を付けろよ」

『お前こそな』


 ケビンの一言と共に無線が切れるとアリスが口を開く。


「どう思う?今のアイツの報告」

「さぁな。とにかく、あっちに厄ネタが転がってるっていうのは確かだ」

「防衛施設とか書いてあったけど、本当に此処ってそうなのかしら?」

「それは此処を造った奴等か家主に聞かなきゃ、解らねぇだろうな」

「…それもそうね。次はこっちのルートだったわよね?」

「そうだ」

「じゃあ、早く行きましょう。私達は私達でやれる事をやらないと」


 アリスはそう言うと、まだ探索していないルートに向かって歩き始める。ハロルドはアリスの後姿を追いかけながら、アリスの変化に驚いていた。


(必要以上にあいつ(ケビン)の心配をしなくなったな…。大した成長ぶりだ…。いや、それとも…)


 つい先程までは、ケビンの単独行動に対して必要以上の心配をしていたアリスが、今回においては特に反論する事も無くケビンの単独行動を受け入れていた。この事は、アリスは恐らくケビンを自分等と合流する様に説得するだろうと考えていたハロルドにとって、予想外の出来事だった。

 そして、この時ハロルドの脳裏に、二つの理由が浮かぶ。一つはアリスの成長、もう一つは…。


(信頼、か…?)


 この考えがハロルドの脳裏に浮かんだ時、ハロルドはその考えを必死で頭から追い出そうとする。


(いや、いくらなんでもこんな短期間にそんな事は…。それに、こいつ(アリス)と行動した時間も俺の方が長い…。そんな事は…)


 そこまで考えてハロルドは一旦思考を止めて、もしアリスがケビンに対して信頼と呼べる感情を抱いていた場合の事を考える。


(もし、そうだとしたら…、マズい事になる…。あの野郎(ケビン)の行動の中核を成す部分、そこをアリスが知ったら…。いや、それ以前に下手したらアリスが気付く前にケビンがアリスを…)

「ハロルド!このルート、もしかしたら当たりかもしれないわ!」


 しかし、そこまで考えた所でアリスの声によって、ハロルドの思考は中断されてしまう。


「本当か!?」


 ハロルドはアリスに向かって返事を返すと、今までの思考に結論をつける。


(そうだ、冷静に考えろ。今の時点では俺も奴もできる事は限られている。ケビンがどう動くかも、大体予想がつく。アリスにはいずれ、タイミングを計って言えばいいさ。俺等と行動する以上、“その時”は必ず来るだろうしな…。とにかく、今は目の前の状況に集中するとしよう)


 そしてケビンとアリスについての思考を止めると、アリスの許に駆け寄る、ハロルド。アリスの下に駆け寄った彼は、そこでアリスの言葉の意味を理解した。


「確かに、こいつは“当たり”かもしんねぇな…!」


 ハロルドは目の前に広がる光景を見て、思わずそう呟いた。

 今、二人が踏み込んだ場所は、複数のモニターや機械類が設置された巨大な部屋であった。だが、二人の意識を引き付けたのはそれらでは無く、部屋の中央に存在する巨大な柱の様な機械であった。

 二人はサブマシンガンを構え、いつ襲撃があっても対応できる様に警戒しながら部屋の中心に向かって進む。しかし、二人の警戒とは裏腹に、物音一つたたないまま二人は機械の前に辿り着く。

 機械の前に辿り着いた二人は設置されているモニターを覗き込み、アリスがそこに映し出されている文字を読み上げる。


「データ圧縮進行率、75%…?プロジェクト・レプリカント完了まで、残り、三十五分…?」

「オイ、アリス!」


 映し出されている文字の意味が解らずアリスが首を捻っているとハロルドに呼びかけられ、モニターの前から離れ辺りを物色していたハロルドの許に向かう。


「どう?何か判った?」

「あぁ。どうやら、こいつが此処の中枢で間違いないらしい」


 ハロルドはアリスの問いに答えながら、手に持った書類を渡す。


「これは?」

「どうやら、この施設の概要を纏めたものらしい。そこで寝てるやつが、大事そうに抱えてたよ」


 ハロルドはそう言って、他の機械の陰になっている部分に横たわる白骨化した腕を指差す。アリスは地面に転がった腕を一瞥し顔を顰めると、ハロルドから手渡された書類に目を通す。


「なになに…、“試験型無人緊急時避難用防衛施設、『エリア51』、概要説明書”…。この施設って、実用化されてなかっんだ…」

「そのようだな。だがそれなら、この施設の遺物が大した力の無い奴ばかりなのかも納得できる」


 ハロルドの言葉通り、この施設から出撃したと思われる遺物は、どれもこれも既に確認済みの種類であり、確認されていなかった飛行型の遺物も明確な欠点が存在しており、完成形といえる状態ではなかった。極めつけには、主力がイージスから拿捕したG・Sときており、大戦以前のテクノロジーが使われているにしてはお粗末な物であった。

 その事について腑に落ちなかったアリスだが、この書類を見てその理由に納得すると、改めて続きを読み始める。


「“テストケースとして収容する住民は懲役二十年以下の受刑者とし、実験終了後の恩赦を条件に十年間の収容とする。住民の収容方法は初期の計画通り、冷凍睡眠(コールドスリープ)による大量収容を予定している。戦力は四足歩行型の対人無人機に二足歩行型の対中型兵器無人機、試験段階の航空無人機『ガーゴイル』を予定している。又、試験機以外の兵器は施設内部での修復及び量産も検討されている。”…。流石大戦以前の施設ね。やる事が派手だわ」


 アリスは軽口を叩きながらページをめくっていく。五分程読んだところで、ようやくこの施設の中枢について記されたページに辿り着く。


「やっとか…。さて、一体、アナタは何者なのかしら…?」


 アリスは目の前に鎮座する巨大な機会を一瞥してから、そこに記された内容に目を通し始める。そしてその直後、そこに記された内容にアリスは驚愕する。


「ハロルド…、これって…!」

「あぁ。確かだとしたら、正しく神への挑戦あるいは冒涜だ」


 アリスの掠れた声にハロルドが静かに答える。

 そこに記されていた内容は、この施設の中枢を為す存在、『フィアー』についてだった。

 今現在、ハロルド達が居る施設、エリア51の管理用として抜擢された存在であり、当時世界初となる、“感情を持った”人工知能。それがフィアーと呼ばれるこの施設の支配者であった。

 書類によれば開発者はバーロット・エルトハイムという人物であり、この人物が立ち上げた『プロジェクト・ボーダーブレイク』なる物の一環とされている。

 その内容までは記されていなかった為、アリス達は知る事が出来ないものの、その基本理念だけは彼女等も知る事が出来た。

 それは“人類と機械の境界線の破壊”といった物だった。そしてその計画の皮切りとなったのがフィアーだった。

 機械に対し“自らの防衛”という命令を課し、その命令を失敗した時に起こるであろうデメリットをインプットする。その後、そのデメリットを擬似的に体感させ続け、それにより“自らの防衛”を命令されて行なうのではなく、デメリットから逃れる為に必要な事だから行なうのだと錯覚させ、自ら選択して防衛行動を行なわせる。それによって機械に“デメリツトから逃れたい”という自我が生まれる。その過程で機械はデメリットという存在を苦痛という感覚として認識する。そして苦痛という感覚を理解し、それから逃れようとする自我によって“恐怖”という感情が生まれる。そうして、このフィアーという存在が誕生した。

 書類を読んだ二人は、この技術に強い嫌悪感を抱いていた。

 機械が感情を持つという事に対する違和感もあるが、それより二人の脳裏に思い浮かんだのは、この様な方法で生み出された存在が、人間に対し友好的な筈が無いといった考えだった。

 元々、感情を持っている人間でさえ、軽い不快感から殺人におよぶ事だってあるのだ。この様な拷問じみた方法で生み出された存在が、苦痛を与えた存在を放って置く可能性は限り無く低いだろう。

 アリスはそこまで考えると、書類を左手に持ち、右手でサブマシンガンを構え、機械に照準を向けて引き金を引こうとする。

 しかし、それは横から伸びてきたハロルドの腕によって阻止されてしまう。


「ハロルド、これは危険すぎる。私達にとって害悪以外の何者でもない。早く破壊した方が…!」

「その意見には賛成だがね、アリス。そいつには続きがある」


 アリスはハロルドの言葉を受けて、渋々銃口を下ろすと、再び書類に目を通す。


「“プロジェクト・レプリンカント”…これって!」

「…!知ってるのか!?」


アリスはそこに書かれていた単語を見て、驚きの声を上げる。ハロルドが驚いてアリスに声をかけるが、それを無視して記されている内容に意識を集中させる。そして記されている内容を全て読み終わった瞬間、アリスはその端整な顔に焦りの表情を貼り付けながら、ハロルドに向き直る。


「そいつのヤバさが解ったか?とりあえず、こいつには破壊する前にこの設備がどこにあるのかを…」

「ハロルド…、こいつもう実行しちゃってる…」


 アリスのその一言を聞くと共に、ハロルドは自分のサブマシンガンを機械に向けてマガジンが空になるまで発砲し続ける。


「どうだ!?止まったか!?」

「ちょっと待って!」


 アリスは急いで最初に見つけたモニターの前に行き、機能が停止しているかどうかを確かめる。停止している事を願いながらモニターを確認するも、その願いはあっさりと裏切られる。


「駄目!止まってない!」

「クソッ!」


 アリスの言葉を聞いてハロルドは舌打ちしながら機械を蹴りつける。

 アリスは何とかして止めようとモニターにサブマシンガンを撃ち込むも、モニターを破壊しただけで、肝心の本体には全く影響はなかった。


(クソッ!何かある筈だ!何か…!)


 何とかして止める方法が無いか必死に考える、ハロルド。そこにアリスの大声が飛び込んでくる。


「そうよ!施設の方を叩けばいいのよ!」

「その施設がどこにあるか、俺達には判らないのにか!?」

「でも、当てはあるわ!ケビンが居る場所よ!」


 そのアリスの一言でハロルドは考えるの止め、ケビンの報告を思い浮かべる。


「確かに、可能性は…!でも、ルートが分からないぞ!?」

「ケビンと分かれた所まで引き返して、そこから、ケビンの足取りを辿る!」


 アリスはそう言い放つと出口に向かって走りだす。ハロルドも慌ててその後を追う。


「まったく、末恐ろしい女だぜ…!」


 ハロルドの口から零れた呟きは、二人分の足音によって掻き消されていった。

 そしてこの空間は再び静寂によって支配された。空白の玉座を晒したまま…。




「えっと…、これも“死亡”か…。さっきから死体ばかりだな」


 ケビンはそう呟くと、カプセルの下部に取り付けられているモニターから目を離す。

 ハロルド達との連絡を終えたケビンは、問題の生態反応を探して行動していた。とりあえず、カプセルの中の女性達の中にその生態反応の持ち主がいるのではないかと考え、先程からカプセルに取り付けられたモニターを見て回っているのだが、未だに持ち主を見つけられずにいた。


「けっこう探してるけど、ホントに居んのか、これ?実は他の場所に移動しました、みたいなのは無いよなぁ?」


 愚痴を零しながらも、淡々とカプセルの中身の生死を確認していく、ケビン。それから暫く探し回っていると、そこで変わった物を目にする。


「…?なんだ、こりゃ?」


 そのカプセルは並ぶ様にして設置されているカプセルの中で、唯一単体で設置されていた。他のカプセルと違い、そのカプセルの周りには様々な機械が取り付けられていたが、ケビンが妙に感じたのはそこだけではなかった。


「銀髪の…ガキ…?」


 中で培養液に浸かっているのは、これまでの黒髪の成熟した女性では無く、銀髪に雪の様な白い肌の十四か十五歳ぐらいの少女であった。

 ケビンはカプセルに向かって銃口を向けながら近づくと、他のカプセルと同じ様に取り付けられているモニターを覗き込む。


「“状態:生存”…。ビンゴだな…」


 ケビンはそう呟くと、カプセルの中を漂う少女に視線を向ける。


「さて、どうしたもんかね…」


 そのまま少しの間少女を観察していたが、まったく動く気配が無いのを確認すると、溜め息を吐く。

 肝心の目標を発見する事には成功したものの、この状態ではケビンにはどうしようも無かった。

 まず、どうやればこの少女を解放できるのか解らないというのが一つ。この少女ははたして本当に解放するべきかという理由が一つ。この二つの問題に直面したケビンはヘルメットを外して頭を掻きながらカプセルの前に座り込む。それから、今後の行動について考えようとヘルメットを被り直そうとしたその時であった。

 唐突に警報音が鳴り響くと共に、カプセルから培養液が排出されていく。


「な、なんだぁ!?」


 突如始まった変化に、ケビンは急いで立ち上がると、カプセルに銃口を向けながらカプセルから距離を取る。

 その間にもカプセルの排水作業は進み、排水作業が終了すると共に、こんどは電子的な声が辺りに響き渡る。


『対象を排出します。担当者は対象が地面に落下しない様に準備を行なってください。三十秒後に排出』

「は、はぁ!?」


 声を聞いたケビンは慌ててカプセルに近寄ると、少女をキャッチできる様に腰に力を入れて待ち構える。


『排出』

「うおっと!」


短い言葉と共にカプセルが開き、中から銀髪の少女が倒れ掛かる様にして落ちてくる。ケビンはそれをキャッチすると、肩で抱えて片手を空け、空いた方の手でサバイバルキットから毛布を出し、地面に敷いてその上に少女を横たえる。意識が無いらしく、目を閉じたまま規則的な呼吸を繰り返す少女を毛布で包んで身体を冷やさない様にすると、ケビンは改めて地面に座り込んで盛大な溜め息を吐く。


「さてと、いつから俺はベビーシッターに転向したのやら…」


ケビンは憂鬱そうに呟くと、無線で連絡を取るべく、少女を抱える際に落としたヘルメットを拾おうと、大儀そうに腰を上げたのであった。

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