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HEART Of STEEL  作者: ブッチ
第一章 業火の一振り
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THE BAD DAY

 アリスとハロルドが無人機との戦戦いを繰り広げてる最中、ケビンは飛んでくる光弾を辺りに立ち並ぶ柱を利用しつつ回避しながら、無線に向かって怒鳴っていた。


「オラァ!どうした!いつまで引き込もってんだ?ブルッてんじゃねぇよ、タマナシ野郎!」


 ケビンは無線の先にいるであろう存在に向けて暴言を吐くが、肝心の返事はまったく返って来ない。


「んだよ…、何か言えよ、畜生め…!」


 ケビンはまったく反応が無い事にふてくされた様子で呟く。


「そういや、ジャミングされてんだった。聞こえてんのかな、コレ?」


 すると、ケビンは無線がジャミングされていた事を思い出し、小さく呟く。

 今、この無線が繋がっている(と思われる)のは現在戦闘中の敵機体の操縦士である。

挑発と、相手がどんな性格か探る為に無線の暗号化を解除して赤と黒の機体に向かって発信しているのであった。だが、結果はなんの反応も無い、といったものだった。


(無視するならともかく、動きに何の変化も無い、ていうのは気にくわないな…。かなり場慣れしてるか、それとも、ハロルドの言ってた無人機、っていう線か…)


 ケビンが敵の正体について考えを巡らせていると、衝撃と共に、モニターに敵の攻撃が命中した事を知らせる警告文が表示される。


Fuck(クソ)!やりやがったな、畜生!えっと、損傷は…、左肩の装甲が抉られたか。右肩だったら殺してたぜ…」


 ケビンは悪態を吐きながらも、損傷が少ない事に安堵する。

 ケビンは反撃として両手の銃を発砲するが、距離が開き過ぎて敵機体の分厚い装甲に傷を付ける程度で終わる。

 敵機体は、重量機らしいゆっくりとした動きでケビンに向かって光弾を放ちながら、柱を利用して姿を眩ます。


「またかよ…!いい加減にしろよ、マジで…!」


 再び姿を眩ませた敵機体に悪態を吐く、ケビン。というのも、先程からこの様な状況の繰り返しだからである。

 決して近づいてくる事は無く、ひたすら遠距離からの攻撃に徹する。多少被弾しても、その分厚い装甲に加え、ケビンの機体が装備している武器が中~近距離用のアサルトライフルに近距離用のマシンガンという事が重なり、まったくと言っていい程ダメージを与えられずにいた。

 その上、接近しようにも実力はかなりあるらしく、光弾を使って牽制しながら柱を利用した機動で距離を離されてしまうのだった。


「オイ!いつまで引きこもって、マスかいてんだ?こっち来て、お兄さんと遊ぼうや!」


 ケビンは攻撃を避けきると、再び敵機体の操縦士に向かって返事の無い挑発を始める。

 この戦法こそが、ケビンが未だに戦っている相手が人間である可能性を捨てきれない理由だった。

 この戦闘が始まってからケビンにとって致命的となる隙は何回かあった。それは、わざと演出したものだったり、本物のミスだったりしたのだが、そのどれにも敵機体は喰い付いて来る事は無かった。

 これは最早、経験不足からくる見極めの失敗、などというレベルでは無く、故意的にやっているとしか思えないレベルだった。


(こいつの攻撃には明らかな殺意がある…。チマチマいたぶってる、っていう訳じゃねぇ…。こいつの戦い方は、そう、生き残る為の戦い方だ…。効率も何もかも度外視して、自分の心臓を“テーブル”の上に置かない様にする為の戦い方…。しかも、あらゆる勝利への誘惑を押し切ってまで貫く、真性のソレだ…。こんなもん、人間以外がやる様な戦い方じゃねぇ…)


 ケビンは小さく溜め息を吐くと、思考を敵の性格についてから、これからどうするかに切り替える。


(とにかく、今判ってるのは奴が極度のチキン野郎、って事と、そのチキン野郎を何とかする策が必要だ、って事だけか…。とりあえず、もうマシンガン(コレ)は要らないな)


 ケビンは、敵に近づけなければ大した威力を持たないマシンガンから、U・Wである、スパルタンに装備を変更しようと考え、スパルタンを展開させようとする。


(奴は…、よし。動いてねぇな)


 ケビンはレーダーで敵の動きが無い事を確認すると、柱の影に隠れながらスパルタンを展開させる。

 煙を上げながら変形を開始し、三秒程で展開が完了すると補助アームがスパルタンを装備出来る様に、機体の肩の上に運ぶ。

 後は右手のマシンガンを捨てて装備するのみとなった、その時だった。

 動きを止めていた筈の敵機体が、いつの間にかケビンを狙える位置に居り、左手のスナイパーライフルを発砲していた。


「へ?って、ヤベッ!」


 スパルタンを使ってどう切り崩すかを考えていたケビンは一瞬遅れて反応し、機体を右に移動させる。

 しかし何処かに被弾したらしく、モニターに警告文が表示される。


「クソが!またやりやがったな、ってオイ。ここは…」


 ケビンが言い切る前に機体の右腕に衝撃が走り、転倒しそうになるのをマシンガンを杖の様に使ってなんとか防ぐ。


「オイ、冗談だろ、クソッタレが…!」


 ケビンは小さく悪態を吐くと共に、飛んできた光弾を避けようと、再び右側に移動するが、避けきれずに左腕を破壊される。


Fuck(クソ)!冗談じゃねぇぞ!また腕か!」


 ケビンは悪態を吐きながら、無駄だと知りつつも、ギリギリの所で手放さずき済んだマシンガンを敵機体に向かって発射しながらその場を離れる。

 案の定、敵機体に大した損傷は無く、光弾を放ちながら攻撃するのに最適な場所に移動する。


「舐めやがって…!今にぶっ殺して…、って、オイ、マジかよ!」


 ケビンが光弾を避けながら移動していると、突如左側に立っていた柱がケビン目掛けて倒れてきたのだ。


「どうしてこうな…、shit(クソ)!奴か!」


 ケビンはこの事態が敵機体が発射している光弾によるものだと気付くと、喚き散らしながら機体のスピードを上げる。


「あぁ、クソッ!これはマジで死ぬって、オイオイオイオイ!」


 なんとか柱が倒れる前に柱の下を潜り抜け様と試みる、ケビン。その間にも、敵機体は光弾を撃ち続け、さらに二本程の柱がケビンの後方で倒壊を始める。


「よぉし、抜けろ抜けろ抜けろ抜けろ抜けろ!」


 柱が倒れきるよりも一瞬早く、ケビンの機体がその真下を潜り抜ける。


「フゥゥゥハァァァ!!」


 ケビンが歓喜の雄叫びを上げたのとほぼ同時に真後ろの柱が完全に倒壊し、機体にも衝撃が走る。

 敵機体からの攻撃は止んでおり、それを確認したケビンは機体を再び柱の影に隠して動きを止める。


「フハッ…、ハーッハッハッハッ!どうだクソ野郎!殺せたかと思ったか?アァ!?誰が殺されてやるか、バカが!いいか!テメェの小汚ない面を吹っ飛ばしてやるからな!覚悟しとけよ、クソッタレ!ついでに、ケツの穴も増やしてやるし、その後で溶接してやるからな!ああっ、クソッ!Fuck(畜生)!舐めやがって!隠れてねぇで出てきやがれ、タマナシ野郎が!その、ブッサイクな面を俺に拝ませろよ、アァ!?」


 ケビンはひとしきり喚き散らすと、胸に手を置いて深呼吸をする。


「落ち着け…、落ち着け…、冷静に、冷静に…、ああっ、クソッ!」


 ケビンは最後に大声で叫ぶと、盛大に溜め息を吐いてから十字を切り、小さく呟いた。


「絶対、殺す…」




 その男はG・S特有の狭いコックピットの中で思考に耽っていた。

 モニター上には自分の攻撃によって破壊された景色が広がっており、倒壊した柱の残骸が散らばる散々な有様だった。


(今のを生き残る、か…)


 男はレーダーが捉えている熱源反応を見て、舌打ちをする。そこに移っているのは、熱量からして間違いなく現在交戦中の機体だった。


(あの男、今の攻撃を捌き切るとなると厄介だな…)


 男は一連の攻撃で仕留められなかった敵機体の実力を認識し直すと、他の場所で待機している味方に連絡を取るべく無線を繋ぐ。

 男をこの行動へと駆り立てたのは今の攻撃を凌ぎ切る実力と、先程からこちらの無線にう喚き散らしている男とが、どうしても釣り合わなかったからだ。

 そもそも、柱を倒壊させる前のあの一撃、あれで勝負は付くものだと男は考えていた。

 敵機体が大型の兵器を装備する隙を突いて補助アームを破壊し、その武器を敵機体の上で落下させる事で機体の動きを止め、そこに一撃必殺の一撃を叩き込む。自分の仲間の中でも高い実力を持つ人物が得意とする技術で、その効果は充分理解しており、それ以前の動きと照らし合わせてもこの攻撃で倒せるという見立てに狂いは無い筈だった。その上、わざわざ動いている事を悟られない為にブースターを切って徒歩で位置を変えたというのにである。

 だというのに、現実には左腕を破壊するだけに止まり、その上追撃を仕掛けたにも拘らず、倒すには至らなかった。

 この事実は男の性格も左右して、男を援軍という発想に至らせるには充分だった。


『ハーイ。こちら、カーリーだよー。お仕事中に呼び出すなんて、どったのー?』


 無線が繋がると同時に、幼さを感じさせる口調の女性の声が男の耳に飛び込んでくる。


「此方、№8。№6、敵の実力が予想より高い。応援を頼めるか?」

『えー、無理だよー。ここのシステム、まだ完全に掌握できてないしー。それに、№6じゃなくて、カーリーって呼んでよー!』


 男は応援が望めない事に小さく舌打ちすると、少し苛立った口調で問いかける。


「じゃあ、後どのくらいで掌握できるんだ?」

『んー?わっかんなーい!それよりさ、今戦ってる奴、そんなに強いの?ねぇ?ねぇ?いいなー、ワタシも遊びたいなー』

「…なら、早く作業を終わらせろ」

『わかったー!ワタシが行くまで、とっといてよー!絶対だかんね-!』

「了解した。通信終了」


 男は無線を切ると小さく溜め息を吐く。


(あの様子なら、ここのコントロールを奪うまでそうは掛からないだろう。だが…)


 男は機体の左腕に装備しているスナイパーライフルを地面に捨てると、機体の端末を操作する。すると機体の左腕の装甲が変形を始め、小型の盾へと変わる。


(恐らく、応援が到着するまでに、もう一度奴は攻撃を仕掛けるだろう。応援が到着するまで逃げ切ってもいいが…)


 そして、機体の右腕の異形の銃が再び光を纏い始める。


(下手に戦い方を変えても、隙を突かれるかもしれん。可能ならば、次の接触で仕留めるとするか…)


 男は機体をレーダーが指し示す方向に向けると、そこに潜む敵機体に銃口の狙いを合わせる。


「どちらにしろ、ここで死んでもらうぞ、ドブネズミめ…!」


 男の呟きと共に、異形の銃から青白く光る光弾が撃ちだされた




「クソッ…!これが終わったら、休暇を取ってやる…!んでもって、レンを今度こそ口説いて、映画でも見て、飯食って、あわよくば、一線を越えた関係までたどり着いてやる…!」


 ケビンはレーダーで敵に動きが無い事を確認しながらG・Sの端末を操作する。


「あと、カウンセリングにも行く…!噂じゃ、かなりグッと来る美人が居るらしいし、もしかしたら、もしかするかもしれないし…!あぁ、そうだ、新しいブーツも買うぞ…!今季の新作、ってやつだ。値段なんて知ったことか、絶対買ってやる…!それに、ええっと…、あぁ、そうだ、あのガキに奢ってやるんだった…。うん、これは忘れよう…」


 ケビンはモニターにいくつかの文字が表示されたのを確認すると、端末を操作していた手の動きを止める。

 それと同時に、ケビンの機体を覆っていた装甲が“右腕”を除いて全て地面に剥がれ落ちる。その中にはハロルドが使用していた格納用の拳銃も混ざっていた。

 今ケビンが行なった行為はパージと呼ばれる行為である。

 この行為はその名の通り、身に着けている装備を切り離す、といった行為である。ただし他の機械類と違うのは、パージ可能な箇所の多さにある。

 G・Sにおいてのパージとは、装甲はおろか機体の四肢、さらには機体の関節を切り離すなど、非常に細かい次元での切り離しが可能となっている。それにより戦闘中でも機体の性能を大きく変化させる事で、より多くの戦況に対応できる様になっている。

 もちろん、欠点も存在する。パージした部分は自己負担しなければいけないのはもちろん、考えも無しにパージする事によって機体の性能の変化に追いつけず、自滅、あるいは状況を把握しきれなかったが為に、パージによって逆に不利な状況に陥ってしまう、などといったものがある。また、格納武器に関しても装甲を改造をする事で搭載している為、パージによって一緒に切り離される。


「これでよし、っと…。おっと、奴さんも動き出したか…」


 ケビンは、レーダーで敵が攻撃態勢に入っている事を確認すると、機体のブースターを機動させその場から離れる。

 それと同時に、敵の発射した光弾がケビンの機体を隠していた柱を破壊する。

 ケビンはその様子を見て小さく口笛を吹くと、機体の右腕に装備しているマシンガンを構えて敵機体に向かって突進する。


「さてと、まったく大した出費だよ。左腕に、全武装、おまけに装甲まで全部換装する羽目になるとは…」


 ケビンは緊張で乾いた唇を舌で舐めて湿らせると、一言呟く。


「だから、精々派手に死んで鬱憤を晴らさせてくれよ?タマナシのドブネズミちゃん…!」




 高速で飛んで来る青白い光弾を細身の黒いG・Sが掻い潜りながら、高速で赤と黒のG・S目掛けて突き進む。

 先程まで全身を覆っていた装甲は今や右腕のみとなり、左腕は肩から先が消失していた。銃はマシンガンのみとなり哀れな姿を晒しながらもその機体は動き続けていた。ただ、主の意思にのみに従って。


「チッ!ちょこまかと…!」


 赤と黒の機体を操る男は忌々しげに舌打ちをする。

 もはや身を守る鎧を失った目の前のG・S、だというのに自分の放つ光弾は一発も命中する事無くケビンの操る機体はどんどん距離を詰めていく。

 時に高速で動いて光弾を避け、時に柱を盾にする事で光弾を回避しながら確実に距離を詰めていく。

 今はまだマシンガンの威力が発揮されていないが、このまま近づかれればその力は余すところ無く発揮され、左腕の簡易盾を破壊し男の身体を蹂躙するだろう。

 男は光弾を撃ち続けながら、焦りを隠そうともせず叫ぶ。


「さっさと死ね!ドブネズミが!」


 男が叫ぶ一方でケビンも又、焦っていた。

 いつの間にか出現していた左腕の盾。それと腕によって頭部と胸部は守られており、まったくダメージが通っていなかった。

 いつ光弾が当たってもおかしくない極限状態。それでいて臆してこの攻撃を中断すれば、再び男の機体は距離を離すだろう。そうなれば次は近づくどころか、嬲り殺しにされるのがオチである。

 機体の操縦に全ての意識を集中させながらケビンは叫ぶ。


「早く死ねよ!クソ野郎が!」


 互いに言葉は聞こえてはいないものの、まるで生身での殺し合いの如く、剥き出しの殺意をぶつけながら二人は呪詛の雄叫びを上げる。そしてその二人の殺意に導かれ、二機のG・Sは引き金を引き続ける。そして男の必死の抵抗も虚しく、その心の臓はこの戦場(テーブル)へと引き吊り出された。

 ケビンの機体が光弾を撃った隙を突いて一気に接近する。それによって真価を発揮した右腕のマシンガンが男の機体の左腕を盾ごと破壊する。

 しかし男も黙って死ぬ筈が無く、逆にケビンの機体に接近すると右腕の異形の銃で殴りつけて、マシンガンを叩き落とす。そしてケビンの機体の胸部に向かって至近距離で光弾を撃ち込もうとする。


「死ねぇ!ドブネズミがぁ!」


 男の咆哮と共に光弾は撃ち出され、ケビンの肉体をこの世から消滅させる筈だった。


「うおぉぉぉぉぉ!!!」


ケビンの雄叫びと共に、ケビンの機体の右腕に残った装甲から銀色の物体が現れる。まるで爪の様な形状のその物体は、赤と黒の機体が引き金を引くよりも一瞬早く、異形の銃を握る右腕を切り落とした。

 この武装は近接戦闘用のケビンの機体の両腕に取り付けられた格納武器で、ケビンによって『リストブレイド』と名づけられた武器である。ライフルより一回り程短く、リリスの技術を使って無理矢理腕部に格納しており、G・Sの装甲を切り裂く事を可能にするべく高い技術を駆使して作り出された武器で、これも又、シルヴィアの計らいによって搭載された。

 だがこの武器は、格納用拳銃以上に欠点が多い。生産に掛かる費用と時間、G・Sの装甲を五回程度斬りつければ使い物にならなくなる耐久性、当然だが接近しなければ意味が無いなど、より尖った性能の武装となっている。

 その為、使用方法はこの様な近距離戦闘時の切り札として扱うのがベストとされている。


「馬鹿な…」


 いきなり出現した新たな武装に男は驚きを隠せず、意味を持たない言葉が口から零れ出る。


Die(死ね)!!」


 その隙をケビンは逃さず、リストブレイドを赤と黒の機体の胸部目掛けて振り抜く。しかし、ありったけの殺意を籠めて振り抜かれた刃は男の機体に届く事は無かった。


「なっ…、パージだと…!」


 リストブレイドが切り裂いたのは男の機体から剥がれ落ちた装甲、ただそれだけだった。ケビンの第二撃が来る前に男は機体の装甲を全てパージすると、それによって得たスピードでリストブレイドの攻撃範囲から離脱していたのだ。

 しかし、コアパーツのみとなった男の機体の胸部には、ギリギリ避けられなかったリストブレイドの切っ先によって傷が付けられていた。さらには両腕に装甲を失い、このまま戦闘を続ける事は男にとって死と同義だった。

 そしてその事実は、男をある行動へと駆り立てた。


「…№6…、システムは掌握できたか…?」

『うん!もーバッチシ!今から、そっちに行くね!それと、カーリーって呼んで、って…』

「退却する。退路を示してくれ」

『えー!なにそれ!ワタシもそいつと…』

「なら、好きにしろ。俺は帰る。だからさっさと、隔壁を解除しろ!」

『わ、分かったよ…、そんなに怒んないでよ…。今開けるよからさぁ…』


 男の怒鳴り声に怯えた様子の返事が返ってくると、男の背後の隔壁が開く。

 男は機体を方向転換させると、脱出しようと動き出す。


「オイオイ、逃げんのかよ?もうちょっと遊ぼうぜ?」


 ケビンは離脱を図る男の機体に向かって挑発してみるも、矢張り何のリアクションも無く、男の機体は隔壁の向こうへと消えてしまった。

 ケビンは追いかけようとも考えたが、今の愛機の状況を思い出しその考えを否定する。


「考えてみたら、他にもいるかもしれねぇしな、うん」


 ケビンは一人で納得するとシートに寝そべるかの様に深く腰掛け、小さく呟いた。


「まったく、最悪の一日だよ、ホント…」

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