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エルフの嫁さん(新・訂正版)  作者: 神月 昴
その女性、エルフにつき。
3/9

そして出会う


地震についての描写があります。

これは架空の日本の物語です、実在する人物や建物などには一切関係ありません。

気分を害される方がいらっしゃるかもしれませんのでまえがきにて失礼。



 カタカタカタッ。


 最初はトラックでも通ったのかと思った。何度も言うようだがこの古い家、前に通っている道路に大型車が通っただけで家鳴りがするのだ。大型地震なんて来た日にはすぐさま倒壊するのでは、と時広は思っている。


 しかしトラックが通っただけにしてはやけに長く家鳴りがしている。地震か? と思ったが蛍光灯の紐が揺れてない為にやはり思い過ごしか、と割り箸を割る。古い家に住んでいるとこんなことに気を留めていたらにっちもさっちも行かなくなるからだ。


 いただきます。とラーメンに手を付けようとした時、ブルッと震えた。


「なんかいやに寒いな?」


 元々冬は寒いのがこの家の標準装備であるが、ある程度ダンボールなどで隙間風を通さないような工夫はしている。それでも風は通ってしまうのだが。


 しかし今は体感的にいつもより寒い。なぜだろうと一瞬悩むが、ご飯を食べれば体も温まるだろうと麺をすすりはじめた。


 やけに続く家鳴りに寒い部屋。嫌な予感を覚えながらも空腹を満たす為にラーメンをすする。二口ほど食べればそんなことすぐに忘れていた。


 しかしここでさらなる奇異が時広を襲う。


 ドンッ! とまるで軒下から大きな槌で殴られたかのような衝撃を覚え、テーブルに積まれていたゴミが落ちる。さすがにこれだけ大きな衝撃を受けた時広も異常事態だと辺りを見回す。


 すると突然蛍光灯が明滅を始めた。


 なんだなんだと、まるでポルターガイスト現象のような異常事態に訳もなくあたふたしていると家鳴りが激しさを増す。そして音が聞こえるほどの強風が部屋を駆け抜ける。雑誌は飛び、ポスターははがれ。目もあけられないほどの強風が時広の自室に渦巻きだす。


 パニック状態になった時広はせめてラーメンだけでも、と必死にラーメンを掴んでいるが強風のせいで汁が飛びまくっている。


「局地的な竜巻かこれえええええええええ!!!!」


 メガネも飛び、唇もジェットコースターに乗ったかのように広がっている。中々におもしろい顔だ。


 そして強風に煽られた分厚い週刊誌が時広の顔面に直撃するが自分が飛ばないようにするだけで一生懸命の時広は、既に中身などとうの昔に飛んで行ったラーメンの器を必死に抑えており痛みにもがき苦しむ暇もない。


 薄目を開けて超強風の中にある自室を見回す時広は、だんだんとその強風に煽られているのか部屋のゴミが空中に円を描くように回っているのを見た。


 まるでゴミが意志を持っているかのようにグルグルグルグルと回っていて、強風もその中心部分に向かって渦巻きながら吹いているようだった。


 右から左に流れていく超強風に煽られ髪の毛はすごい事になり、顔の皮膚という皮膚はすべで左側に寄っていた。


 そしてその中心部分が光を帯びてくる。ものの数秒で目を開けることも困難なほどの光の量になるが、目をあけているかどうかすらわかってない時広にとってはどうでも良い事だった。


 家鳴りがピークを迎え、超強風もわが物顔で時広の自室を狂喜乱舞している。そして明滅する蛍光灯に飛び交うゴミ。時広の我慢も既に尽きかけていた時、まるで核爆発のように光が一気に中心部分に集まったかと思うとそのタメを使ったかのように爆発しゴミが四散した。


 さきほど食していたラーメンの麺をあたまからかぶり放心状態の時広は、やっと竜巻が去ってくれた事に安堵しており、しばらく頭が付いてこなかった。


 1分ほど時広は放心していたが、部屋の惨状を思い出し弾かれるように動き出した。とにかくポスターはかなり大事だ。もう手に入らないカタログの表紙の切り抜きもあったし……などと思いつつ部屋の片づけをしようとすると、とんでもない事に時広は気付く。


「……なんで女の人が寝てんだ?」


 時広の万年床の上にそっと横にされたようにぐっすり眠る女性がいた。


 所々汚れているが、淡いグリーンと白のグラデーションが綺麗なワンピースを着ている。腰より長い綺麗な銀髪、光の角度によっては少し青みがかって見えた。そして完璧なる黄金比で置かれた顔のパーツに、シミシワ荒れなんかカケラも見られない真珠と大理石を掛け合わせたような、白く透明感のある美しい肌。手足は長くスラッとしており、軽く10頭身はあるのではと思わせるほど顔も小さい。


 そしてなにより目を惹くのはその長く尖った耳。まるでおとぎ話から出てきたエルフのような存在に、神々しいオーラを放つ女性を前にただ茫然とするしかない時広。


 さきほどから異常な事態が立て続けに起こっていたからか、またも時広は放心状態となり頭を抱えていた。


「どうなってんだよ……」


 そんな彼の嘆きを聞く人は、ここには居なかった。


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