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なーろっぱ世界の短編 婚約破棄とか聖女とかドアマットとか転生とか

こんな不運な死に方をなさるなんておかわいそうに ~大きなネズミの駆除方法~

作者: マンムート
掲載日:2026/07/06

 真昼間。


 我が屋敷にて、


「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 という絶叫が響きました。



「な、なんの悲鳴!?」


 義母が顔を真っ青にして言いました。


 ですから、わたくし答えましたのよ。


「多分、わたくしの部屋の罠が発動したのですわ」


 父が、へ? という顔で


「わ、わな?」


「最近、部屋のものがちょくちょくなくなるので、ドアを開けられた瞬間に罠が作動するようにしていたのですわ」



 無くなったものが、義妹と称する卑しい平民の部屋に出現するのは、把握済みですわ。


 いわゆるなんでも欲しがる義妹というヤツですわね。



 義母が顔色を変えて、駆け出して行きました。


 父は追いかけるように続き。


 わたくしは、口笛でも吹きたい心を、ぐっと押さえてゆっくりと続きました。



 義母の絶叫が聞こえましたわ。


「マリィィィィィィィィィィィィィィ!」




 義母は、わたくしの部屋のドアの前でへたりこんで宙を見ていました。


 視線を追うと、


「あら、わたくしの部屋のものを持ち出していたのは、マリーさんだったようですわね」



 義妹マリー……ほんとのところどうだか判ったものではありませんが。 


 首筋に針金を絡められ締め上げられ吊るされ、吐瀉物と排泄物をまき散らして、ぶらぶらと揺れておりました。


 ふふ。


 この娘は、我が世の春とばかりに厚顔無恥なふるまいで我が屋敷を思うがままに闊歩しておりましたが。


 こうなってしまえば、ネズミ捕りにかかったネズミの死骸の大きなもの、というだけですわね。



 ドアを開けた瞬間、罠が作動して、丁度マリーさん……いえ人間の首のあたりに、針金が巻き付くようにしておいたのです。


 そして、つっかえ棒で頭の方だけを持ち上げておいたベッドが倒れ、その力で針金がきゅっと吊り上がったというわけですわ。



「ですが、おかしいですわね。鍵はわたくししか持っていないはずですのに……ああ。スペアがありましたわね。スペアは誰が管理していらしたのかしら?」



 父が、きまり悪そうな顔をしていらっしゃいます。



 存じておりますよ。


 あなたがあの娘に、わたくしの部屋の鍵を渡していたのを。


 屋敷の奉公人は全てわたくしの味方ですもの。



 わたくしは、悲しい顔を作ると、義母に向けて、


「マリーさまは泥棒用の罠にかかってお亡くなりになってしまったようですわ……若い身空でお気の毒に」


 にっこりと笑ってつけくわえてさしあげました。


「お悔やみ申し上げますわ。ですけど、泥棒で亡くなっては天国の門は開きそうもありませんわね」


 その言葉に、義母はくわっと目を見開き、


「あんたが殺したくせに!」


「? 罠が作動しただけですわ」


 憎しみがこもった目がわたくしを睨みつけ。


「この人殺し! こんなことしてどうなるか判ってるのよね! 司直を呼んで来ればあんたもおしまいよ!」



 あらあら、死体をぶらさげたままま、行ってしまわれましたわ。


 愚かですわね。



 司直にはわたくしの方からお報せするつもりでしたのに。


 手間が省けましたわ。




 すぐ司直が駆け付けて来てくださって、あっというまに全てが終わりました。



 父も義母も気づいていなかったようですが、わたくしこそ、この家の当主ですもの。


『自分が亡くなったら夫は愛人を連れ込むでしょう。貴族ならどうすべきか判っておりますわね?』と母が書き残しておいてくれたので。


 おじいさまに頼んで、わたくしを当主する手続きをしてもらっておいたのです。



 それが役所で認められたのは昨日。


 これで貴族家の当主としての権限が、わたくしに備わったのです。



 なんでも欲しがる義妹が、わたくしの部屋で泥棒をするのは判っておりましたから。

 


 ここで罠にかかったということは、当主の部屋に許可なく忍び込んだということ。


 まだ義妹は我が家の籍に入っていないので、単なる平民。


 当主の部屋に、氏素性が定かでない平民が侵入し、そして死んだ。



 それだけのこと。



 当然、わたくしは無罪。


 というか、無罪も何も、犯罪ですらありませんもの。



 義妹に合鍵を渡した父は、単なる入り婿。


 こちらは籍から抜いておいたので、平民。


 平民が当主の部屋の鍵を勝手に泥棒に渡したので、当然、父も死罪。


 義母も共犯で死罪。



 すっきりしましたわ。


 ただ、いくら泥棒といえども、死人が出た部屋で寝起きするのは嫌ですから、部屋を替えましょうね。



 え、どこで罠の作り方を習ったかですか?


 淑女のたしなみですわ。


 淑女なら罠のひとつやふたつ作れて当然ですもの。




たくさんの作品の中から、本作をお読みいただきありがとうございました。


最後までお付き合いいただけたこと、とても嬉しく思います。


少しでも心に残るものがあったり、何かを感じていただけたなら、


評価や感想をいただけるととても励みになります。


別の物語も書いておりますので、もしよろしければ、そちらも覗いてみてください。


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― 新着の感想 ―
余分な描写が無く、勢いが良くって★★★★★です。 ピタゴラス◯ッチって音声と流れる様な罠の動作がうかびました おもしろかったですありがとうございました。
物理の罠を作って仕掛けて仕留めるとは、貴族流石でございます。大抵の貴族は騎士というか武人、武人の基本は舐められたらコロスなので、そりゃ当然かもね…。殺せばすぐ終わると考えるのも貴族よねぇ…
まぁ害獣は駆除一択だよね(°▽°)母子揃って人の物に手を出すって…手癖悪いのねぇ(°▽°)そして父親もアホねぇ( ̄▽ ̄;)婿の分際で主人公母の両親が生きてる状態で、よく好き勝手したな?( ̄▽ ̄;)この…
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