VS カマイタチ
ドローンの屋外での使用は航空法、小型無人機等飛行禁止法、道路交通法、民法、自治体条例などにより規制されており、違反すると厳しく処罰されます。
魔物が出て商売にならなくて困っている、という連絡が明奈のスマホに入ったのは、こんがりと焼き上がったお好み焼きを食べ始めようというタイミングだった。
飛鳥と瑞鶴はすぐに箸を置いて準備を始めたが、明奈はしばらく未練がましく椅子に座っていた。
「関西人を敵に回す絶好のタイミングですのう……」
「明奈、早くいくぞ」
渋る明奈を椅子から引き剥がして、3人が急行したのはシャッター街の中で営業している数少ないお洒落な雰囲気のお店のひとつだった。
「明奈ちゃん、こっちこっち」
お店の女性が手を振って迎えると、明奈の気分もようやく切り替わった。
「イタチみたいな魔物やって聞いたんやけど?」
「ほら、あそこ!」
女性が指差すほうをみると、開け放たれた店の入口近くのレジで、3匹のイタチのような魔物が互いにじゃれ合っている様子が目に入った。早速、瑞鶴が魔物辞典で検索した。
「あれはカマイタチ。手が刃物になっていて、離れた距離から斬撃を飛ばしてくる厄介な魔物」
瑞鶴がドローンを持ち上げて見せた。
「今回は私にやらせてほしい」
*****
裏口から店内に入った瑞鶴は2機のドローンを起動した。財団に申請し確保しておいた予備のドローンに赤毛の猫にもらったナイフを取り付けて、ドローン2機を同時に運用できるようになったのだ。
店の奥で甲高いモーター音とともに2機のドローンが浮上した。プロポを手にした瑞鶴が舌なめずりをした。2機のドローン編隊が店の奥からゆっくりと姿を現し、入口へと飛行してゆく。
3匹のカマイタチが同時に気がついたが、ナイフのブレード部が格納されているため、危険な存在であるとは認識できないようだった。
カマイタチの前でホバリングする2機のドローンから
シュ!
シュ!
と軽い音がして、1匹のカマイタチに2本のブレードが突き刺さった。
「ギャア」
残った2匹のカマイタチが、ばっと飛び上がり、脱兎の速さで入口から逃げ出した。
外は今治銀座のアーケードである。カマイタチの逃げる先には飛鳥が待ち構えていた。カマイタチは飛鳥に向けて斬撃を飛ばしたが、斬撃の軌道を読んだ飛鳥が白銀剣を一閃、二閃し無効化してしまった。
2匹のカマイタチは小さな体を翻しアーケードの反対側に向かって駆け出したが、そこには大きな鍋のフタを持った明奈が待ち構えていた。カマイタチが飛ばす斬撃を
カン!
カン!
と明奈のもった鍋のフタが受けた。
カマイタチに逃げ道は無かった。ドローンの編隊が店の入口から姿を現し、2匹のカマイタチに向かって数珠つなぎに飛行していった。
カマイタチが遠見から斬撃を飛ばしてきたが、小さく小回りが利くドローンに斬撃を命中させることはできなかった。2機のドローンはアーケード内を縦横無尽に飛び回り、カマイタチを翻弄した。
ドローン編隊は全く同じ動きで飛行したが、時折、異なる動きを見せることがあった。今も、数珠つなぎの飛行から、後方のドローンだけが上方にわずかに浮上した。ドローン編隊から2つのブレードが射出され、1匹のカマイタチに突き刺さった。
残り1匹となったカマイタチが斬撃を飛ばすが、その時にはもうドローンはそこにはいない。
ドローン編隊は機体を翻すと、今度は地面のギリギリ上を飛行しカマイタチに迫った。地面の上を高速で移動するドローンに対し、カマイタチの放った斬撃は大きく外れた。
好機だった。
ブレード部が大きく伸長し、特攻する形だ。ドローン編隊は一気にカマイタチに肉薄し体当たりを敢行したが、カマイタチは大きく飛び上がってこれを躱した。
ドローン編隊はいったん遠ざかると、編隊を崩して左右に分かれ、カマイタチに襲いかかった。カマイタチは2方向から迫るドローンに対応できず、左から特攻してきたドローンに胸部を刺され、消えていった。
「すごいな。想像以上だよ!」
「あれ、どうやってやっとるん?」
2機のドローンが瑞鶴の頭上にやってきた。
「1機をプロポで動かして、もう1機は脳波で動かす。基本、脳波コントロールのドローンは、プロポの動きのコピー。だけど、集中すれば、プロポと脳波で別の動きもできる」
瑞鶴がプロポを操作して1機のドローンを着地させたが、もう1機はホバリングしたままだ。
「いま、脳波で動かしてる。慣れるまでかなり練習したの」
瑞鶴がプロポを地面の上に置いた。その状態でもう1機のドローンはアーケード内を飛び回ると、3人の目の前でホバリングし、お辞儀をし、ゆっくりと着地した。飛鳥、明奈に加え、見物していた店の女性と、アーケードを歩いていた近所のご老人達が拍手した。
*****
「今日は本当にご苦労さま。たくさん食べて行ってね」
店内のテーブルに着いた明奈、飛鳥、瑞鶴の前には、今治産の食材をふんだんに使った、今にもチーズが蕩け出しそうな出来立てのハンバーガーが置かれていた。チーズとお肉の焼けた匂いが3人の鼻孔を心地よくくすぐった。
夕食がまだだった3人は生唾を飲み込んだ。瑞鶴が代表して尋ねた。
「本当にいいんですか?」
「ええ、ほんのお礼よ」
明奈が早速ハンバーガーにかぶりついた。目をつむって夢中で咀嚼する。ややあって、
「今治のハンバーガーはホンマ最高やな!」
といったものである。
*****
【今治銀座かわら版 妖怪注意報】
9月17日 エレガント・プラントにカマイタチが出没しました!
今治銀座アーケードのお惣菜屋さんにカマイタチ3匹が出没しました。カマイタチは数時間、店内に居座って営業を妨害しましたが、明奈ちゃん、飛鳥ちゃん、瑞鶴ちゃんら3人に退治されました。
魔物を見かけられたら、決して近づかず、すぐに青年会にご連絡ください。
このお話これからどうなるんだろうと、少しでもワクワクしてもらえてたら嬉しいです。
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次も頑張ります!




