レェラとの朝食
「お兄さま、朝食はできていますよ? ぼーとしてどうしましたか?」
レェラは俺を心配したような声音で問いかける。
「ああ……大丈夫だ。何も問題はないよ」
そう俺が答えると、彼女はほっと一息をつき、机を指さして「では、朝食をとりましょうか。冷めてしまいます」と言うため俺はその言葉に従って椅子に座る。
「いただきます」
俺とレェラは揃って手を合わせて、朝食を食べ始める。
「うん。やっぱりレェラの料理は美味しいな」
朝食を口に含んだ俺はそんな感想を口にする。
「えへへ。ありがとうございます。ですけどお兄さま、昨日も同じことを言っていましたよ」
俺の言葉に彼女は軽く照れながらもそう言う。
「確かに、言われてみれば昨日も言った気がするな」
まあこれは仕方がないことだ。なぜなら彼女の料理はめちゃくちゃに美味しいから。同居し始めてすぐの頃はここまでうまくなかった気がするが……よくここまでできるようになったな、と感じる。
「そういえばお兄さま、そろそろお野菜が尽きてきました。街に買いに行こうと思うんですが、やっぱりついてくるんですよね?」
彼女がそう言うため俺は「当たり前だ」と答える。
「いつも言ってるけど、街は別に遠いわけではないけど、ここががっつり山の中なおかげで魔物と出会いやすい。レェラが一人で行くには危ないんだよ」
俺の言葉にレェラは少し不服そうな表情を浮かべる。
「お兄さまが私のことを心配してくださっているのは分かってるんですけど、私だってもうそこらへんの魔物くらいなら倒せるようになってきたんですよ? 強いお兄さまに鍛えてもらっているおかげで」
彼女は少し自慢げにそう言う。
「俺のおかげじゃない。レェラの努力が実っているんだよ。現に魔術の腕はレェラの方が上だろう?」
『魔術』それは人間が編み出した、人間のみが持つ『魔力』というものをさまざまな形状に変化させることで使える術である。戦闘のみならず、生活にも活かせるところが便利だ。
ただ俺はあまり魔術は得意ではない。理由は多分、俺の思考が魔術の原理と相性が悪いから。魔術は想像。頭の中で思い描いたものを魔力で形にするのが魔術である。しかし俺の思考は、そもそも魔術なんて存在と関わることがほとんどなかった悪魔や天使の頃の二つがベースになっているため、あまりその想像というのが得意じゃないのだ。
「ではお兄さま、朝食を食べたらすぐに出発しますので、ささっと食べ終わってしまいましょう」
俺は彼女のそんな言葉にこたえるように飯を食う手をはやめるのだった