S級
オレンジが暗い青に染まりそうな空をしているこの時間にわざわざ外に出てきた俺は、自らの血液を二滴取り出す。
そしてそれらに性質を与えると、片方は濃い赤と黒のカラーリングをしたコートのような服となり俺にまとわりつく。
そしてもう一つは仮面となり、俺の手のひらの上にあった。
「あんまり好きじゃないんだが、直近の出費はかなり手痛いからな。一稼ぎしてくるか」
そう言って俺は手元の仮面を己の顔に被せ、大地を蹴って宙へ飛び出した。
「ん? そういや、あんまり衝撃音を鳴らしちゃダメなんだったか。着地の時に」
俺はレェラに言われた言葉を思い出した。
「とすると、まあ翼で支えるか」
俺の背には悪魔の力を使っているため、悪魔の片翼が生えている。
それをはためかせ、俺はシルフィーアがしたように着地し、衝撃をなくした。
そしてそのまま冒険者ギルドに向かって駆けていく。
俺は冒険者として金を稼いでいる。
多くの仕事はなかなか15という若い歳で就くのは難しい。
だが冒険者は年齢や身分問わずなることができる。
そして実力があれば金を稼ぐこともできる。
俺にうってつけだ。
そうして俺は冒険者ギルドの中に入った。
瞬間だ。
「血鬼が来たぞッ!!」
そんな声が一人の冒険者から上がる。
血鬼とかいう俺の二つ名的なやつがご丁寧に叫ばれたのだ。
すると一気にギルド中の冒険者が俺の方を向き、騒ぎ立て始めた。
なぜこんなことになっているのか。
それは俺が、冒険者として最強の“S級”であるからだ。
E級から順にD、C、B、A級ときて、なぜか最強はS級。
この世界ではABCDE……と続いて最後がZで終わるアルファベットという言語? 文字? が扱われている。そしてABCDE。これはアルファベットの最初の五つで、それを上から冒険者のランクわけに用いるのはわかるのだが、なぜ一番上はアルファベットを順に唱えた時に最初でも最後でもなく中途半端な位置にあるS!? と、初めて知ったときは疑問に思ったが、それが常識のようなので疑問に思っていても仕方がない。
気にしないことにした。
で、S級というのは言ってしまえば冒険者の外れ値だ。A級すら比べ物にならない、あまりにも強い存在。それがS級。
俺は冒険者として、そのランクに位置するのだ。
ちなみにこの立場は悪いものではない。
なぜならS級の冒険者はみんな人間のくせに、あまりにもバケモノじみたやつばかりだ。何人かと会ったことがあるが、俺が悪魔の力を全部出し切るどころかそこに天使の力さえ加えても絶対勝てるとは言い切れない奴が何人もいる。
そんなやつらの集まりなおかげで、俺が悪魔の力を使ってもなんか大して辺に思われない。
たとえ悪魔の翼を出しても、なんか普通に流してもらえる。このおかげで好き勝手悪魔の力を使えるから楽に金を稼げてありがたいのだ。
そして俺はその歓声の中をまっすぐ進み、クエストを受ける。
いや、俺から受けたわけでなく、選んでいたらそこで受付をしているものから直接それをしてくれと頼まれたのだ。
何やらそれが達成困難になっているとのこと。
そのクエストで討伐対象となっているのはグラウヴェルという魔物だった。
グラウヴェル……か。初めて聞く魔物の名前だ。
南西の方の大陸にいくつも穴を開け、暴れ回っている巨大な四足歩行の魔物……すでに何人もの冒険者が敗走してるみたいだ。
おかげで報酬金が釣り上がっている。
さっさと倒して、パッと稼いで帰ろう。
レェラの飯に遅れたらまずいしな。
そうして俺はバッと翼を背に生やし、冒険者ギルドを出て飛び立つ。
グングンと空を突き進み、南西の方へ飛んでいくのだった。




