家族
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「ふう、ただいま」
そう言って俺は我が家の扉を開く。
すると奥からレェラがひょっこりと顔を覗かせる。
「お帰りなさい! お兄さま! シルフィーアさまも!」
「はい……! ただいまです……!」
レェラにそう言われたシルフィーアは、俺の真似をするように言った。
「早速だが、少し手伝ってくれ。背中の荷物のおかげで玄関をくぐれそうにない」
「分かりました! お任せください!」
「あの、私も手伝います……!」
俺の背中にはまず巨大なベッドが、そこに積み重なるように下からテーブル、椅子、そして照明がある。
それらは縦に積み重なっているためかなりの高さとなってしまっていた。
よくここまでの道で落とさなかったな、と自分を褒めてしまうくらいだ。
そんな家具たちを、まずシルフィーアがいつの間にやら元に戻していた翼で飛行し、上から取っていく。
照明や椅子などの軽めのものはレェラに渡し、彼女はテーブルを両手で持った。
「ありがとう。ベッドだけなら玄関を通れそうだ。できればその家具たちはシルフィーアの部屋になる予定の、あの部屋に運んでくれ」
そんな俺の頼みに二人は揃って「分かりました」と返事をした。
そうして俺たちは家具を運び終え、部屋にセットする。
「これでシルフィーアさまのお部屋が完成ですね!」
「あ、ありがとうございます……見ず知らずの私にここまでしていただいて」
「いいさ。ちょうどこのあたりの住民は俺とレェラだけで、少々寂しかったところだったからな」
昔は賑わっていたんだがな。この辺りも。
「さて、ちょうど日が暮れてきているようだし夕食の準備でもするとしようか」
「……準備するのはお兄さまではないでしょう?」
「ははっ、そうだな。何にも言い返せないぜ」
普段から料理はレェラにしてもらっている。
どころか、家事全般ほとんどレェラに任せっきりになってしまっている。
いくら俺が家事ができないうえ、レェラが進んでやってくれているとはいえ、さすがに何か手伝えることを増やしていかないとダメだな。
「あの! 私、お料理なら多少できるのでお手伝いします!」
「いえいえ、大丈夫です! 今日の夕食はシルフィーアさまの歓迎会を兼ねたものにしようと思っていたので、ひとまず今日のところはゆっくりしていてください! ですが、これからは手伝っていただくこともあると思っていてくださいね! 一緒に過ごす間は家族ですから!」
「家族……はい! お任せください!」
そんなやりとりをしてレェラは機嫌の良さそうな、ニコニコした笑顔のままキッチンへ向かって行った。
シルフィーアはまだ幼めの天使みたいで、容姿もレェラに近いくらいだ。
多分、嬉しいんだろうな。レェラは。
村が滅んでからずっと、こんな人気のない場で俺との二人暮らし。そんな生活が続いていた中に、パッと見同年代の女の子が新しく家族に加わった。
そりゃ、ああもはしゃぐか。
良かったな、レェラ。
俺は心の中でそう思った。
「にしてもシルフィーア」
「は、はい! なんでしょうか!」
「まず、そんなに気負わなくていいぞ」
「そ、そうですか……?」
「ああ」
シルフィーアは俺との会話の時、常に緊張しているように見える。
俺としてはそう緊張せず話してほしい。
「んで次に、飯が来るまでずぅっとそこで立っているつもりか?」
「え?」
「お前はもう家族なんだから好きにくつろいでいていい。そこら辺のイスや自分の部屋でのんびりするなりな」
「そ、そうですか?」
「ああ。それじゃあ俺は少し外に出てくるから、言った通りくつろいで、疲れを癒しておくんだぞ」
「……はい!」
俺が背を向けて、玄関に向かい始めて少ししてから聞こえた彼女の返事はなんだかはっきりとしたものだった。




