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シルフィーアの実力

 「ありがとうございました!」


 俺は目の前の店員に代金を支払い、商品を受け取る。

 照明、椅子、テーブル、そしてデカめのベッド。

 それらが俺たちの目の前に差し出される。


 「あのう、本当に配送サービスなどは使わなくてもよろしいのですか?」

 「はい、大丈夫です」

 「こちらのベッドとか、とても運べるようには……もしお車があったとしても、そちらまで運ぶことすら難しいと……」

 

 それを差し出した店員は俺たちに向けて、心配した声で問う。

 確かにベッドに関しては、店員は荷台を利用してこちらにもってくるなど工夫をしている。

 店員の方が言う車があれば、確かに運べるかもしれないが、そんな一、二年くらい前にようやく世に出回り出した高価なモノ、金欠のうちが買えているわけがない。

 てか買ったとしても山道走らせることはさすがに難しいだろうし。

 まあそんなもの使わなくても俺ならば担いで運べるのだ。

 俺の身体能力は悪魔由来の力ではあるからあまり天使であるシルフィーアの前で見せるのは良くないとは思うが……まあベッドを運ぶ程度ならそこそこの魔物と戦える人間であればできるし、なんとか言い訳できるだろ。

 

 「それでは、俺たちは大丈夫なのでありがとうございました」

 

 そう言って俺はベッドと、その上にテーブル、椅子、照明を乗せてそれらを担ぎ上げた。

 瞬間に店員が「ええっ!?」と驚愕の声を上げる。


 「よし、シルフィーア。いくぞ」

 「へ、あ、はい! わかりました!」


 俺はその状態でシルフィーアを呼び、店を出る。

 

 ふむ。やっぱ見た目がアレだから周りの視線を集めているな。

 

 「シルフィーア、この姿だと変に目立っちまうからさ、ちょっと駆け足で帰るぞ」

 「は、はい!」

 

 ゆっくり人界を見る暇を与えてやれなくて、シルフィーアには悪いが、さすがにこの姿で、この人通りの多い場にいるのは少々恥ずかしい。

 というわけで家具が壊れず、シルフィーアがついてこれるくらいのスピードでダッシュだ!


――――――


 「山道まで来たし多少はのんびり移動しても大丈夫かな」

 「ふう、そうですね……もう人の目はありませんから……」

 「つってもこう言った場所だと魔物が出てくる。のんびりしてると何体も相手にすることになるぞ」

 

 魔物は人気のない場所に住みつく。こういった山の中はわりと何体も住んでいる。

 我が家はそんな中に立っているせいで、まれに魔物に攻撃されることがあったり……

 そういやドアを開けて外に出た瞬間目の前に魔物が立っていたみたいなこともあったな。

 俺もレェラもそんじゃそこらのモンスターなら楽勝で勝てるから今の所大した問題ではないが、畑を作ったら、作物を荒らされたりしそうだし、モンスターが来れないような何かを作らないとな。

 例えば、あそこが村だった時は村を囲うように塀がたっていたし、そんな感じのものを作りたいな。

 これまでずっと今の状態で暮らしていたのに畑を作ろうとするだけでどんどん環境を変えたくなってきたな。

 これを機に家周りを発展させていってみようか。


 俺がそんなことを考えていると——

 

 「グヒャアッ!!」

 「っと、噂をすればだな」

 

 鳴き声をあげながら茂みの中から現れたのはゴブリン。しかも群れだ。

 6匹のゴブリンが固まって潜んでいたようだ。

 前にレェラと共に山を降りた時に出会ったヘビーオークと比べれば全然他愛のない相手。

 1匹であれば駆け出しの冒険者でさえ倒せてしまうほどに弱い。

 比較対象として、ヘビーオークは中堅の冒険者パーティくらいでないと倒すとは難しかったりする。

 とはいえ6匹となるとさすがに駆け出しの冒険者が一人で相手するのは難しい。

 

 つってもどちらも俺からしたら等しく雑魚だ。

 さっさと片付けてしまおう。

  

 「シルフィーア、下がってな。すぐ片付ける」

 「いや、待ってください。今あなたの手は塞がっていますから、私がやります。私は天使の中では戦闘能力は高くありませんが、それでもこの程度ならば仕留めることは容易です」

 

 ……確かに天使の身体であればゴブリン程度楽勝か。

 なんせ天使の身体は悪魔に匹敵する身体能力かのだから。


 直後、シルフィーアは動いた。

 と、同時に一番手前に立つゴブリンの頭を彼女の長い右足で蹴り、潰す。

 ぶちゃあ、と紫色のゴブリンの血液が噴き出る。

 シルフィーアが一歩前に進み、横並びの二体を続けざまに蹴った。

 

 俺はゴブリンの血が家具にかからないよう、少し後ろに下がる。

 

 シルフィーア、天使の中では戦闘能力は高くないなんて言っていたが、動きのキレがいいな。

 確かに身体能力は低い方みたいだが、動きはいい。

 高い戦闘技術を持っている。

 姉にでも指導してもらっていたのだろうか?


 その光景を眺め、考えているとシルフィーアは動きを止めた。

 

 「終わりました」

 「お疲れ様。さすがは天使だ。A級冒険者にもなれるほどの実力だったな」

 「え、A級?」

 「ランク分けだよ。冒険者っていう魔物を倒して金銭を稼ぐ職業のな。Aは現状上から二番目だ。ま、詳しくは必要になれば教えるさ。今はさっさと帰ろう。こんなとこでのんびりしてたらまた魔物に襲われちまう」

 「そうですね……わかりました」


 そう言って俺たちは足を進めるのだった。

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