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二つの難題 どうしようか

 俺は家の外に出たすぐ直後、考えていた。時間をかけずにこの山を降りる方法を。

 レェラを連れてこなかったせいで飛び降り、その時の衝撃を魔法で抑えるという方法が使えないのだ。

 

 さあてどうしたものか。

 俺がその問題について考え始めたその時、シルフィーアが声を出した。


 「足を止めて、どうかしましたか? 先は進まないのですか?」

 「ああ、大丈夫、だ……いや、そうだ。そうだな。シルフィーア、お前の力を借りてもいいか?」


 俺が彼女の方へ振り向くと、目に映るのは大きな白い翼。頭に浮かぶのはそれを利用した山を飛び降りる方法だ。

 

 「??? どういうことでしょうか? 私にできることであればご協力いたしますが……」

 「ありがとう。それじゃあ、俺は今からお前を抱えてこの山を飛び降りる」

 「???」

 「んで、お前には着地前にその翼ではばたき、着地時の衝撃をなくして欲しいんだ」  

 

 翼で空を飛ぶ鳥が上空から地面に降り立つ時、その衝撃で爆音がなるだろうか? いや、そんなことはない。

 俺は彼女の翼を利用して衝撃を消そうと考えた。

    

 シルフィーアは少し考える素振りを見せたのち、「わかりました」と、後退したので俺は彼女を抱えた。

 

 「ひゃっ……!?」

 「よし、飛ぶぞ」

 「え、えと……はい! わかりました! お任せくだひゃい!!」

 

 突然俺が持ち上げたからか、彼女の顔はやや赤くなる。

 が、俺はそのようなことは気にせずに、飛んだ。


 ギュンギュンと風が俺たちの全身を撃つ。

 落ちるスピードが上がっていくにつれ、地面に墜落するのが近づいているとわかる。


 「さて、そろそろだ。シルフィーア、任せたぞ」

 「は、ひゃい! 翼動かします!」

 

 俺がシルフィーアに合図を送ると、彼女はその純白の翼を勢いよく羽ばたかせ始めた。

 

 「おお、さすが天使。どんどん落下速度が落ちていく」

 「お、お褒めに預かり光栄です。そ、それではゆっくり着地いたしますので、少しの間お待ちください……」


 彼女はそう言うと、翼が動く速度を徐々に落としていく。と、同時に俺と抱えられた彼女の高度も落ちていく。


 「離すぞ」

 「はい」

 

 ようやく足がつくほどの高さになったため、俺は彼女を離し、着地する。衝撃音どころか、大した衝撃もない完璧な着地だ。

 

 「よし、狙い通りの着地だ。ありがとう、シルフィーア。それじゃあ街へ行こうか」

 「は、はいっ! それは大丈夫なのですが、えと、あ、あの……」

 

 シルフィーアは突然何かもじもじと、気まずそうな、なんとも言えない表情をし始めた。

 そのワケがわからない俺は疑問をそのまま彼女にぶつけた。

 

 「急に、どうかしたか?」

 「え、えぇっと……こ、これです……」

 

 そう言った彼女の指がさすのは先ほど大活躍した、彼女の背につく純白な二つの翼である。

 

 翼……? ああ、そうか。

 俺は彼女の意図を瞬時に理解して言う。


 「そうか。俺たち人間からしたら翼なんて生えてちゃおかしいもんな。これをどうにかしないとか」

 「そう言うことです……人間の方々に翼を見られたら、何か大変なことになると思いまして……」

 「そうだな……とはいえ隠す方法なんてないし、それほど大きなサイズだと服にもしまうことはできないか」


 彼女の背の翼は天使の中でも大きい方だ。天使の翼は大きければ大きいほど高い実力がある。なんでか知らないが、天使の実力と羽の大きさは比例するのだ。実力が高ければ高いほど大きくなり、あまりにも高い実力の天使には翼が二つ以上生えていることもある。彼女の実力は彼女の姉と比べたらそこまでなものの、天使の中では高い方で、翼も大きいものになってしまっているのだ。


 俺の悪魔の能力を使ってしまえばこれを隠すくらいはできるんだけどな。天使である彼女の前で悪魔の力を使うなんてしてしまうと、きっと俺は彼女に殺意とか、そういったものを向けられてしまうだろう。

 だからそれはできない。

 うーむ、どうしようか。


 「もういっそ、これはアクセサリーだ。といった感じで堂々と街中を歩いてみるか?」

 「そ、それはさすがに……見た目、質感とかそういったのでバレてしまいそうですし……」

 「ま、そうだよな。じゃあ仕方ない。無理やり押さえ込んでくれ」

 「へっ!?」


 俺が彼女にそう告げると、彼女はこんな言葉を想定もしていなかったようで、呆気にとられたような声を上げる。


 「ど、どういうことですか……!? あなたも天使であったときの記憶があるのなら、それができないということもわかると思うのですが……」

 「いや、できる。理由は天使の頃の俺が一回だけ、成功しているからだ」


 嘘である。天使の頃にそんなこと、俺はやっていない。じゃあなぜそれを俺は彼女にやらせようとするのか。

 それは少し前。彼女にバレないように悪魔の力を使った時、出てくる片翼を力んで引っ込めることに成功したからだ。これを天使の翼でもできないかと、そういう考えだ。


 「やり方を教えよう」

 「え、は、はい……」

 「やり方は力んで無理やり抑えこめ。イメージは下腹部を凹ませる感じのあれだ」

 「……分かりました。やってみます!」

 

 覚悟を決めたシルフィーアは、少し屈んだような姿勢になり、グッと全身に力を入れる。

 

 「フ、フン゛ン゛ンゥゥ……!!」

 「いいぞ。もっとだ。もっと踏ん張り、力を入れろ!」

 「フウウ、フン゛ン゛ン゛ゥッ……!!」

 

 ついに彼女の顔が赤く染められてくると、ついにその翼はドンドン小さく、どこかに押し込められて行った。

 

 そうしてその翼は数分間のシルフィーアの努力の末、完全に押し込まれるのだった。

 

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