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シルフィーアという天使の事情

 「ああ、人界だ。お前は人界の、俺たちの家の付近で倒れていたんだ」

 

 俺はその天使(堕天使かもしれない)にそう告げる。

 とりあえずこいつは警戒すべきだ。少し強気にでよう。

 

 「あ、あなたは……?」

 「俺はトライス。んでこっちの少女はレェラだ」

 

 彼女に問われ、俺は自身とレェラの名を名乗る。と同時にレェラは彼女に「よろしくお願いします」と後ろから頭を下げる。


 「ひとまず、俺としてはアンタの身分となぜあんなところに倒れていたのかが聞きたい。それと、俺たちに害がないのか、とかな」

 「……!」


 俺は堕天による罪だと推測してはいるが、実際のところどうかはわからん。そこら辺は明確にしておかないとな。

 そんな考えで俺は彼女に問うた。すると彼女は少し考える素振りを見せ、口を開く。


 「わ、私はシルフィーアという天使でございます!」

 

 やはり天使なのか。ま、白い翼が生えてる時点でそうだろうけど。それに、堕天使とは自分で名乗らないか。いやもしかしたらこいつが堕天使という俺の仮説が間違っているのか?


 「この度は私をお救いいただき、ありがとうございます」

 「礼はいらない。どうせあのまま放置しておいても外部から危害を加えられない限り再生していただろう」

 

 天使ってのはそういうもんだ。生まれつきよくわからん再生能力を宿している。死にさえしなければ、どんな重傷でも時間をかければ治っていく。


 「そ、それはそうですが……なぜ人間のあなたがそれを……?」

 

 あ、言われてみれば……。俺が天使の人生を経験してるってのは、人間相手なら一応レェラ以外には隠しているが、こいつの場合は……どうしようか。

 いや、隠したままじゃあ天使について知ってる理由を話さないか……。人間と天使なんて関わることないし、なんか一部の書物に天使について書いたりしてはいるが、そういった天使の性質とかについては書いてなかったしな。

 

 そう考えた俺は正直に彼女に打ち明けることにした。


 「俺は……俺の前世は天使なんだ。そんでもってその頃の記憶を保持している」

 「えっ!?」

 「へっ……!?」

 

 俺の言葉を聞いた彼女と、そしてレェラがそんなリアクションをとった。

 

 天使の方はまあそうなるのはわかるが、レェラはなぜ……もしかして今までこれを隠してた俺がさらっと打ち明けたことに対して……か?

 

 俺がレェラを見て考えていると、天使が声を上げる。


 「そ、そんなことがあり得るのですか……!? 前世の記憶を保持して生まれ変わる、という時点であるかないかの現象ですのに、そのうえ前世が天使であるだなんて……」

 「あり得ちまったんだよな」


 まあ実際のところ、記憶どころか力も引き継いでいるわけだが。


 「んで、俺のことは話したから今度はアンタの番だ。なぜ天使であるお前が人界にいる?」

 「―――っ」


 明らかに彼女は動揺を見せた。


 はあ、こりゃ怪しいな。やっぱり警戒しておかなければ。


 「答えてくれるよな? いや、答えろ。でなければ俺はお前を信用することができないし、答えないのなら信用するつもりもない」

 「……わ、わかりました」


 そういった彼女は言葉を紡ごうと、口を開く。

 そんな最中、俺は一つのことを試みていた。


 さて、うまく片翼を出さずに力を使えたらいいが……


 俺は天使にバレるぬよう、こっそりと自身の血液を取り出して、そして悪魔の力を使おうとする。

 俺は悪魔の、『血液に性質を付与する』力を使うとどうしても片翼が、悪魔の身体特徴がでてしまう。悪魔と天使は対立していて、この天使に俺が悪魔の力をつかえることがバレるとなかなかに面倒くさくなるだろう。

 

 だから俺が取る方法は……力んで無理やり押さえ込む! イメージ的にはにはあれだ。下腹部に力入れて凹ませるやつ。あんな感じに翼も引っ込ませるんだ。


 「フンッ……!」

 「へ……? ど、どうかしましたか?」

 「や、なんでもない……それより話してくれ……」

 「は、はい……」


 力んだ瞬間にそんな声を漏らしてしまい、天使に反応される。一応咄嗟に誤魔化しておく。

 そして俺は取り出した血液にその性質を付与するのだった。

 

 『嘘を検知する』性質。

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