EP03 スマホ
プロローグ―――――――――――――――――――
…ラーレットが怒られたのは、役所に行った後のことだった。
「…ちょ~っといいかな?」
「ギクリッ!!な、何ですか?」
「今動揺したってことは、自分でもわかっているみたいだね~?」
「大変申し訳ありませんでした…って、え!?何するんですか!?放してください!!」
ラーレットはメルカにがっつりと掴まれた。
「何で黙っていたのかな~?あと、たまには顔を見せろっつってんだろうがよ!!」
メルカの豹変ぶりに皆が震え上がる。おぉ、これがメルカ第二形態。点際よりも恐ろしい。
「黙っていた」というのは、メルカたちにハニステルが違う世界から来たということを伝えてなかったのだ。
しかし、違う世界に飛んで行ったということは不具合故ということなので、お咎めなしとなった。
「…改良の余地がありそうだな。」
「…一応生命体だからね?感情って物があるからね?」
第一節―――――――――――――――――――――
…現在、緑の街にて
ハニステルは現在,カーラ邸で暮らしている。
「うん何て?」
「だから、スマホってなんだよ!?」
「本当に知らないの!?便利なやつだよ!!これ!!」
そこにはハニステルが日本にいた時の黒いスマホがあった。
…ただ、
「どうやって操作するんだ?」
「このボタンを押して…ってあれ?ヤバい!!電池切れ!?」
「電池?それならここにあるぞ?」
「そうじゃない!!これは充電式!!専用のコードが要るの!!逆に何故電池だけあるんだよ!?」
「成程…」
「私のレベル、全般がEsなんだよね~…」
「あの後、ラーレットの結果を見たが、全般がSdだったぞ。」
「…マジか。」
「あぁ…マジだ。」
「全般」とは、前話にあった全員がもらったカードに記載されていたレベル以外の全てのレベル、すなわち、戦術や家事以外のレベルである。
第二節―――――――――――――――――――――
…現在
「タオルはここにある。歯ブラシはこれ,コップはそこにあるやつを使ってくれ。」
サルベはクリスを家に受け入れていた。
また,何泊でもいいように沢山の日用品や服を買っていた。
「…わかった。」
「風呂に入れるときはそこに緑の札が立っているから。まだ入れんぞ。」
クリスは頷いて一直線に居間へ向かった。
(にしても,これからどうしたものか…あっさりと受け入れてしまった。)
そしてサルベは風呂を沸かし始めた。
「…せめて一番風呂は譲ってやろう。」
ただでさえ狭い家である。それ以上のおもてなしをせねば,と思ったのであろう。
「後は,夕飯をどうするかだな…そうだ!!一昨日シーラから届いた野菜があるからそれを使おう!!そもそも何であいつが野菜なんて送ってきたんだ?不思議でたまらん。」
第三節―――――――――――――――――――――
ラーレットに発電機とコード作りを頼んでから二時間ほど経って
「出来ましたよ~!!」
同じような物を五つ持ってきたラーレット。
「おお!!遂に!!」
「言語まで直してある!!さすが全般Seのラーレット!!」
「ありがとうございます!!あとこれは、充電のプラグです。電源となるものはマジックエナジーで、収集機と電気変換機と差込口は元々メルカ様が作っております。」
「マジックエナジーとな?」
「マジックを発動する際の力の起源となるものです。略して『マジエナ』です。」
「成程…電気を使わなくなったと言われているこの世界では代わりにそのマジックエナジーを使うのか…」
よく考えたものだ、とハニステルは思った。
機械というものはこの世界にもある。ただ,「電気」という概念がないらしい。
「ただ…この機械、欠点が多くありまして…改良を重ねている途中なのです…」
「例えば?」
「変換の効率が酷いです…」
まさかの根本的欠陥。
「…他にある?」
「たまに止まります。」
第二の根本的欠陥。
「……もうないよな?」
「流石にもうありませんね。私の知っている範囲では,ですが。」
「…ってことは,まだある…?」
「あると思うぞ?あいつのことだから。」
「…すぐ使えないじゃん。」
五日後,改良を重ねてついに完成した。
また,ラーレットに専用プラグを作ってもらった。
そして、スマホについての説明をし終わった後、ラーレットは何かを気にしている様子だった。
「ラーレット、どうしたの?」
「実はですね…スマホ、でしたっけ?を皆様分に作らせていただきたくて、それで…その実物を基に、複製は出来ないのかと思いまして…」
「うおっ!?マジか!?」
「いいよ~」
そう言って、ハニステルはスマホを渡した。
その電源を付けた瞬間…!!
「何ですかこの言語?」
「まぁそうなるよね~…」
話し言葉は通じるみたいだが,書き言葉は通じないみたいだ。
その後、ハニステルは三〇分でこの世界の言語を取得した。
第四節―――――――――――――――――――――
…現在、緑の街 ある家にて
「う~ん…」
ある机で悩んでいる人がいた。
「そうじゃ!!あやつらに頼めば!!…しかし,我の事は覚えておるのかのう?会ってみるしかないのじゃ!!」
第五節―――――――――――――――――――――
「美味かった!!」
シーラ,点際,メルカ,ハニステル,ラーレットの五人は昼ご飯を食べた後,街を歩いていた。
…ラーレットは歩いていないが。
「この後どうする~?」
「う~ん…あ痛っ!?」
「こら!!ちゃんと前を見んか!!…って!!お主はシーラか!?」
下を見ると,一〇歳くらいか?の低身長の橙髪赤目の女子が立っている。
「あ!!ヒメちゃん!!」
「おぉ~!!よく覚えてたのう!!…あれ?そこにいるのは何奴じゃ?」
「この人はハニステル・タンバージン!!」
「我はラヒメ・イバン・シェノルじゃ,よろしくな。」
「よろしくお願いします。」
「ヒメちゃんはね~,僕たちより年上なんだよ!!」
「う,うるさいぞメルカ!!またそうやって背が低いとか馬鹿にするのじゃろう!?」
「そんなことしないよ~!!」
「時にシーラ達よ,あの計画,妾も賛成するぞよ。」
「急にどうしたの?」
「この前,古い書物を調べていたところ,『国王が世界を壊した』と書かれておったんじゃ。」
「やっぱり,文明は壊されたって事?」
「大まかに言うとそうなるのう。」
「大まかに?」
「環境保全のし過ぎとかも問題視してもいいと思うのじゃ。それで動物が狂暴化したまま野生に返し,そこからさらに緑を広げていったため,とも言える。要するに,動物が壊したという事じゃな。」
「動物って放置しておくとそんなことになるんだな…」
「まぁ~そんなに固〜く考えなくてもいいんじゃない~?」
「…お主はもっと危機感を持ったらどうなんじゃ?」
「でも,そうなると『書物に書いてあることはウソだった』という事にならない?」
「書物に書いてあることが必ずしも正しいとは限らん。正確でない場合もある。古いとなったら尚更じゃ。」
「成程ね…」
「当然の事を言うたのじゃが…」
―――ラヒメはパーティーメンバーになった。
『名前 ラヒメ・イバン・シェノル
所属パーティー 猫の尾
レベル 戦闘 Ca
マジック Ab
家事 As
潜伏 As
視・狙 Da
全般 Ag 』
第六節―――――――――――――――――――――
…現在、トルン邸にて
「お帰りなさいませ、メルカラット様」
と建物のあちこちからに聞こえてくる。
「…デカ」
ハニステルはその言葉しか出てこなかった。
だって、「大」がつくほどの豪邸―トルン邸がそこにあるのだから。
普通の民家の五倍ほどある。庭もデカい。その庭の真ん中には豪邸の象徴ともいえる大きな噴水がある。
「財力の差…」
ハニステルは比べるような目でシーラに視線を向ける。
「そんな目でこっち見ないでよ!!メルカが特別なだけだから!!」
「それは知ってるよ!!すごいな~って思ってただけ!!」
「さ~さ~、入った入った~。」
「「「「お邪魔しまーす。」」」」
「「お帰りなさいませ,メルカラット様。」」
そこに立っていたのは2人のメイド…?
ではなかった。よく見るとロボットのようだ。
「…おや?その方は…?」
「ハニステルだよ~」
「初めまして,私はミドリング・テールです。そしてこちらが,」
「ファットル・テールですっ!!」
「私たちはメルカラット様のアシスタント・ヒューマン型ロボットです。このような格好をしておりますが,メイドロボではありません。因みに,あと二体おりますので。」
「ん~,難しい…」
「私たちのことは気軽に『ミドリング』,『ファットル』とお呼びください。」
「わかりました,これからよろしくお願いします!!」
「では,私らは仕事に戻りますので。」
そう言って二人は去っていった。
マジック,機械学,考古学,転移者…
この四人がいれば,波乱万丈の世の中でもこんなことが言える。
「この世界は,楽しい。」
…あれ? 点際がいない。




