ep.4『神隠し』
レイは子豚一匹丸ごと食べる勢いでステーキを平らげた。その後、食べすぎたので夜風に当たりに行くと言ってフラフラと店を出ていった。もちろん酒は飲ませていないので意味の分からない行動なのだが、まぁ奴にはよくある事なので放っておく。十五分もすれば戻って来る。
戻って来る。はずだった。戻ってこない。
「あの、連れが戻ってこないので、探しに行きたいのですが。お代は払ってから行きますので、残りを包んでおいてもらってもいいですか?」
まずは店員の女性に声を掛ける。
レイは食事を滅多に残さないので、戻ってこないつもりで出ていったとは考えにくい。
「いいですよ。ね、お父さん」
「ああ」
女性は店主の娘だったらしい。代金を少し多めに渡して釣りお断りした。
「おい兄ちゃん」
店を出る前に店主に話し掛けられた。
「兄妹か歳の離れた恋人か知らんがあんなかわいい女の子夜に一人にしちゃまずいと思うぜ?さっさと探してやんな。見つかんなかったらすぐ戻ってこい。出来る限りの協力はすっから」
「や、どっちでも──」
いや今はそんな事を説明してる場合ではない。なんだか心配になってきた。
いくら男とは言え、今の世の中かわいけりゃどっちでもいいという貴族はいくらでもいるから、奴隷として売られる可能性もある。奴は元々南の帝国で奴隷をしていたらしいから、逆戻りか。
「そんな事させてたまるかっ!」
俺だって父の剣術がなければ奴隷になっていたかも知れない。何千何万といる奴隷全てを救う事は出来なくても、目の前の一人くらいは救いたい。
「レイ!」
宿の戸を開けて呼びかけてみる。
いない。
「くそっ」
どこ行っちまったんだ。
宿の外に出て左右どちらに行くか一瞬迷う。飯屋に戻るなら右。警備隊に助けを求めるなら確か詰所が左にあった。
迷った末左を向いたところで背後から声が聞こえた。
「あっち」
気配を、感じなかった。




