ep.26『陽だまりの悪夢』
またあの日の記憶だ。
燃え盛る家、赤く照らされた地面。
黒いローブを着た人影がこちらを振り向いて──。
「なんで……」
何故こんな事を?
どうして父さんを?
どうして母さんを?
どうしてこっちを見る?
「……ろしてやる」
急激に憎しみが湧き上がるのを感じた。
殺られる前に。
「よくも!」
俺の腕の中には剣があった。父が最後に俺に預けた剣が。
「ああああああああ!」
俺はその剣を抜いて、人影に飛びかかるように振るった。逃げたあの日とは違う。
手応えがあった。
剣は人影のちょうど頭と体の間を捉え振るわれた。人影の首には大きな傷がつき、次の瞬間、その傷口からおびただしい量の血が流れ出した。
首と一緒に一部が切れたフードが風で後ろにはだけ、今まで隠れていた頭が露わになる。
「え……」
力を失い倒れる人影の体を支えて座り込んだ。
「れ……い……」
首の傷と口からゴボゴボと血が溢れる。
黒ローブの中身はレイだった。
「なんで……レイ……嘘だ……死ぬな……」
「るー……く……」
血を流し続けるレイの顔は笑っていた。
「ありが……とう……」
「やめろ!なんでそんなこと」
違う。これは過去の記憶でも今でもない。
レイの瞳から光が失われていく。
「レイ!」
「はい、なんですか?」
俺はレイの膝枕で目を覚ました。
眩しい日差しを遮るようにレイの影が俺を覗き込んでいる。
「夢……か」
そうだ。あの場にレイがいるはずはないし、俺はあの時敵に立ち向かわず逃げたんだ。
「ここは?」
いつの間にかガタガタと揺れる馬車の荷台にいた。自分達の他は荷でいっぱいの馬車。商人の馬車だろうか。
「あっ、依頼!」
「もうここは北の平原。今から戻っても遅いです」
自分の身に何が起きたのか分からない。
「倒れたんですよ。山道で」
何を考えているか察したようで説明してくれた。
そうだったろうか。
「すみません。勝手に連れてきちゃって」
「あ、いや、こっちこそ。勝手に置いていってすまなかった」
「ホントですよ。何考えてるんですか」
交渉が成功すればステッルブール、失敗すれば両方から立ち入りを禁じられる身になっていただろう。ステール村の人達には申し訳ないがある意味これで良かったのかもしれない。




