ep.22『木漏れ日の悪夢』
ああ、苦しい。
僕は今どこにいるんだっけ。そうだ。地下牢。特殊な石材に囲まれた小さな部屋。
ここにいるといつもの“力”が使えない。
眠くて怠くて、寒くてつらい。頭も痛い。
ここから出られるのは仕事と、実験の時だけ。
その時に逃げる事も出来るけれど、逃げたら家族や仲間に危害が及ぶ。
僕が言う事を聞いていれば少なくとも大切な人達は傷付かない。
「零号、出ろ。あの方がお待ちだ」
今回はどんな仕事だろうか。
国を一つ滅ぼした事もあったっけな。
石の手枷をつけられて別室へ向うとそこには“彼”がいた。
「久しいな、零号」
腰まである黒い髪に黒い瞳。
冷たい声からは再会を喜んでいる様子は見られない。
「はい」
「キミは今回もよい仕事をしてくれた」
「え」
僕が何を?
「!!」
身体が血まみれだった。そして左手にナイフ、右手には──
「あっ」
人の頭部だ。思わず手放そうとしたが髪の毛を掴んだ手がガッチリと硬直して手放す事が出来なかった。
「だ……れ……?」
頭部を目線の高さまで持ち上げると血まみれだが見覚えのある顔が見えた。
「る……く……るー……く?」
嘘だ。
「ルーク……あ……なんで……」
「おかしな声を出してどうした?」
こんな所にルークがいるはずがない。なのに──
「僕が……殺し……た……?」
「そうだ。キミが殺したんだ」
そんなはずはない。
「!?」
ルークの目がゆっくり開き、虚ろな目でこちらを見る。
「……れ……ごぼっ……」
ルークの口から血と言葉が同時に溢れた。
「れ……い……」
目からも涙のように血が流れ出す。
「やめてください……違う……僕じゃ……」
「れ……い……だいじょ……ぶ」
「もうやめて!!」
「おい、レイ。 大丈夫か?」
急に草と土の匂いが体の中に入ってきた。
「ルーク……?」
夢。そうだ。僕は“魔封石”を多く含んだ地で眠りについたのだ。
「お前、うなされてたぞ。それに、何で泣いてんだ」
「えっ、あれ、おかしいですね」
顔を触ると濡れている。
いつの間に涙など流したのか。
「まぁ風邪引いてる時は悪い夢も見るよな。しょうがない。行けるところまでは背負ってやるから、もう少し頑張れ」
「はい」
夢でよかった。もう少し、この旅は続けたい。
ルークが“真実”を知ってしまうまでは。




