ep.13『襲撃』
そんな平和な旅に暗雲が立ち込める。
「襲撃だ!」
いつの間にか敵対的な視線に囲まれている事に気づいた俺は全員に聞こえるように叫んだ。
カッ
ラールを狙った一筋の矢。それが当たる前に俺は剣で叩き落とした。
「敵襲! 警戒しろ!」
続いて叫んだのは護衛を任されているパーティーのリーダー【ムナ】だ。護衛は俺を抜いて四人。遠距離が一人、近接が三人。気配からして敵はそう多くない。
「ラールさん、馬車を停めて中へ!カルロスさんも伏せていてください! レイ、二人を頼んだ!」
「わっかりましたー」
レイはあまり緊張感があるとは言えない返事をしながら懐から短剣を取り出す。
使い方は教えてある。が、大丈夫だろうか。
奴隷商に売られる事に続き盗賊の襲撃とはツイていない。
「驚いた。あんた腕が立つな。敵じゃなくてよかった」
二人を相手に戦闘中のムナに加勢のつもりで近づくと意外と余裕そうで話し掛けてきた。
見たところ敵は遠距離二、近接六……今ムナが一人倒したので残りは全部で七人だ。
「どうも!」
ザクッ
「がっ!」
俺は世辞に対する礼を言いながら仲間の弓使い【アル】を狙った敵の背を斬る。
「ありがとう!」
アルもまた礼を言いながら敵の弓使いを狙って矢を放ち仕留めた。
残り五人。
仲間二人【バグ】【コク】が荷馬車を狙う敵三人を迎え討っている状態に加勢しに向かう。
それに気づいた敵一人が振り向いてこちらへ向かって来た。
隙だらけで全く脅威に感じない。こういう時いつも父の驚異的な強さを思い知る。
ザクッ
「ぎゃあああああああ!」
両手首を斬りつけ剣を握れなくした。
残り四人。
形勢を見て敵の弓使いが逃げ出す。
残り三人と負傷した敵も逃げ出そうとしたがそうはさせなかった。四人パーティーと一人のチームワークでジリジリと真ん中に追い詰めていった。
「待った! 降参だ! 命だけは助けてくれ!」
ムナと戦っていた敵のリーダーらしき男が宣言すると、盗賊達は武器を捨てて両手を挙げた。
「どうします?ムナさん」
聞いてから俺は少しズルい事をしたと思った。人の生き死にの選択を他人にさせようと言うのだ。こんな簡単に振っていいものではなかったかもしれない。
「お縄についてもらおうにももう大分森の中深くまで来ちまってる。コイツラ連れて行くわけにもいかんだろ。かと言って野放しにするわけにもいかねぇ」
つまり、殺すべきという事か。
「木に縛り付けときゃ狼か熊の餌になるだろ」
バグが恐ろしい事を言い出すがそれもよくある一つの手だ。
「ラールさんに決めてもらうのはどうです?」
コクが提案した。ところで──
ヒュッ──ザクッ
「うああっ!」
ムナが肩を押さえて悲鳴を上げる。
「なっ!?」
さっきの弓使いだ。逃げたフリをしていやがった。
「よっしゃ助かった!」
盗賊達が一斉に逃げてゆくではないか。
「待っ」
追いかけようとした所でムナが叫ぶ。
「荷馬車を離れるな!」
こればかりは経験がモノを言う。手薄になった所を何に付け込まれるかわからない以上は下手に動いてはいけない。そういう事だろう。
「くっ……すまない」
「リーダー!!」
アルが支えになりムナはその場に座り込む。
残りのバグとコクと俺とで周囲を警戒している間に。
アル、レイ、カルロス、ラールでムナの手当てをしてもらった。
幸い太い血管は避けているようで出血は少なかったが念の為荷馬車に移ってもらい、ムナの馬には俺が乗ることになった。
盗賊騒動で時間を食ったお陰でその日は森を完全に抜ける事が出来ず、バグ、コク、俺で交代して見張りをしたが不安な夜を過ごす事になったのだった。




