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吾輩は理事長じゃい1

吾輩は理事長じゃい。理事ってなんなんだかよくわからんが、理事長なんじゃい。偉いんじゃい。

理事長が何をするのかもわからないし、なんで理事長になったのかも忘れたから、まず出かけるのじゃい。


あそこにいるのは犬!やい、吾輩は理事長じゃい!

「わん!」

…行ってしまった。理事長はそんな偉くないのか?いや、吾輩の威厳の前に緊張していたに違いない。


あそこにいるのは子供!やい、吾輩は理事長じゃい!

「僕は班長だよ」

何!こんな子供でもそんなに偉くなれるのか!まあ、きっと理事長の方が偉いに違いない。


あそこにいるのは大人!やい、吾輩は理事長じゃい!

「ほう、ご立派な肩書ですね。」

話が通じそうなのじゃい。やい、理事長は何をすればいいのか教えるのじゃい!

「そんな偉い人は何もしなくてもいいのでは?部下の人が全てやってくれるでしょう」

むん…。理事長は何もしなくても良いのか。それはつまらない気がするが…。まあ、きっと面白さは見つかるに違いない。


あそこにいるのはホームレス!やい、吾輩は理事長じゃい!

「理事長さん、何かお恵みくださいませんか?三日間何も食べてないんです。」

そうか!きっと困っている人を助けるのが理事長の役目なのじゃい!ついてくるのじゃい!


あそこにあるのは牛丼屋!おい、牛丼屋!吾輩は理事長じゃい!牛丼並二つじゃい!

「いらっしゃいませ理事長さん、失礼ながらお金は持っていますか?」

何を!吾輩は理事長じゃい!お金ぐらい持っているのじゃい!…ん?財布が空っぽなのじゃい!これではホームレスを救えないのじゃい…。

「困りますよお客さん、見てくださいほら、僕はこんなに忙しいんです。」

牛丼屋は忙しいのか!そうじゃい、吾輩が牛丼屋を手伝うのじゃい。やい、牛丼屋!吾輩を雇うのじゃい。その給料で牛丼を作るのじゃい!ホームレス、お前も手伝うのじゃい!

「わかりました!では閉店後に最高の牛丼をご馳走しましょう。さ、早く着替えてください。ホームレスさんはシャワーを浴びてくださいね。」

ふふふ、理事長がなんなのか結局わからなかったが、今は牛丼を食べる為頑張るのじゃい。考えるのはそれからじゃい!

やい、客!吾輩は理事長じゃい!

「『いらっしゃいませ』ですよ!」


僕は牛丼屋だ


僕は牛丼屋だ。今日はいつもとちょっと違う一日だった。

急に雇うことになった理事長を名乗る変なおじさんとホームレス。

でも、久しぶりに人と協力して楽しかった。そして何より…。


「うまーい!!うまいのじゃい!!」

「うまい…うっ…うっ…」


理事長もホームレスも僕の牛丼を喜んでくれている。ホームレスはよほどお腹が空いていたのか涙をボロボロ流しながら食べている。

うん、うまい。そう言えば自分で牛丼を食べるのは久しぶりだ。

僕は牛丼屋だ。でも、いつから自分で作った牛丼を食べなくなったんだっけ…。


気づいたら疲れすぎて眠ってしまっていた。

「やい牛丼屋!起きるのじゃい!さっきから呼んでるのに何を寝ているのじゃい!」

すみません、疲れ切っていて。こんなおいしく牛丼を食べたのは久しぶりでした。

「うっ…こんな美味しい牛丼は初めてだ…ぐすっ。」

ホームレスはまだボロボロ泣いている。


「牛丼屋!明日も牛丼を作るのじゃい!吾輩はアイスの乗った牛丼はもっとうまいと思うのじゃい!明日からアイス牛丼の誕生じゃい!」

理事長の話を聞いていると明日の開店が憂鬱になってきた。


いや…違う。この憂鬱感は、もっと本質的な…。僕は牛丼屋だけど…

理事長、ホームレス、僕は今日限りで牛丼屋をやめる。

「なんでじゃい!お前は牛丼屋!牛丼をつくるのをやめたら牛丼屋じゃなくなるのじゃい!」

何故かはわからない。でも、このまま牛丼を作り続けていても、何も見えてこない気がするんだ。

牛丼の美味しさに感動しているのか、僕の決断に涙しているのか、ホームレスはまだ号泣している。

「………。わかったのじゃい。お前は牛丼を作らない牛丼屋。それも良い…。お前だけにしかなれない牛丼屋を探すのじゃい!吾輩の旅についてくるのじゃい!ホームレス、お前もくるのじゃい!」


こうして、なんの理事長なのかわからない理事長と、牛丼を作らない牛丼屋と、謎のホームレスの不思議な旅が始まった。


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