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神崎涼の失踪  作者: 紅月
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第八話

暁の帳のもと無知の者は意識の闇に沈み


宵闇の中、愚者はただ夢の中を踊る

―悠―


 眠れなかった、とは言っても多少は寝ていたらしい。最後に時計を見たときは確か四時ごろだったと記憶しているが、今は七時になっていた。多少、というかこれは結構寝ていたことになるのか?


「神崎さん、起きてますか?」


 ユウが部屋をノックして俺に声をかけることでぼんやりとした俺の意識は起こされた。一気に鮮明になる意識とそれまでぼんやりとしていた思考が再び回転を始める。そうだ、月華に、聞かないといけないと思ったんだ。本当にユウを守る気があるのかと。


「起きた・・・。」


 朝食ができている、ということを言って下に降りていくユウを見送ってから悠は着替えて下へむかった。もちろん今日は仕事があるのでスーツを着る。仕事に行くのが憂鬱で、こういうときばかりは引きこもり、というか在宅業の月華のやつがうらやましくなる。

 昔、就職してすぐのころにそんなことを月華の前でぼやいたらなぜかすぐ近くに置かれていた本の角が飛んできた。何でも、在宅には在宅での悩みがあるそうだ。ある日突然、仕事がメールで送られてきたりとかするらしい、それもそれで非常に嫌だと思う。確かあの時だったな、月華の性格が変な方向に曲がったと確信したのは。

 そんなことより、朝ごはんは目玉焼き、パン、牛乳に、野菜といった洋風なものだ。月華が朝にあまりたくさん食べないので、お手軽かつ少ない量のを好んでいるので、朝ごはんは洋風なものが多くなるらしい。俺としては朝は米が食べたいのだが無理やりとはいえ、世話になっている身なのでわがままは言わないことにする。朝らしくさわやかな空気と和やかな雰囲気に包まれている。


「ユウ、今日はお前の服を買いに行くぞ。」

「え、月華は仕事しなくていいんですか?」

「別に期限が差し迫っているわけじゃないし、一日二日休んだところで問題はない。それに、お前に俺のお古をずっと着せている訳にはいかないしな」


 それを聞いたユウはさすが女の子というかうれしそうに笑っていた。

 女のユウとお買い物か・・・。別にうらやましくはないが、一緒に行きたい。会社さえなければな・・・。


「神崎さんは今日はお仕事ですよね!!」

「ああ、うん。」

「じゃあ、神崎さんが帰ってきたら買ってもらったお洋服を見せてあげます。」


 まるで太陽のような、という形容詞がぴったりとあてはまるような明るい笑顔を見ながら俺はとても癒されていた。ああ、なんかこの笑顔に癒されてるよ、俺。疲れてるのかなぁ?月華は俺に対して冷たいし、最近は残業も多いし・・・。

 ふと、妹がいればこんな感じだっただろうかと、ある日突然いなくなってしまった妹のことを思う。妹と母親が消えたあの日、お金を稼いでくれる母親よりも妹がいなくなったことの方にショックをうけていたことを思い出し苦笑する。あのころ、自分にとっては妹は守るべき存在だったから、守ることができなかったことに対して大きなショックを受けていた覚えがある。若かったなぁ、俺。その苦笑を、楽しみにしている、という意思だと取ったのか、ユウはまた笑う。


「神崎さんのお荷物はまだ二階ですか?なんだったらとってきますよ?」

「じゃあ、お願いしようかな。黒いバックだしすぐにわかると思うよ」

「わかりました!!」


 ユウが二階へと行くためにリビングの扉を開けて、出て、閉めた。それを見送った月華が言ってきた。


「お前、ユウがいる時といない時じゃあキャラというかしゃべり方がが違ってないか?」

「そうか?どっちも一緒だと思うが。」

「妹のことでも思い出していたのか?」


 態度が違うってのは納得できる。だって、月華に対してよりもユウに対してのほうがやわらかいってのは分かる。てか月華にやさしくする光景が思い浮かばないぞ?

 それよりも、ついさっき考えていたことを出されて動揺したのを気付かれたのかニヤニヤと笑う月華が追い討ちをかけようとしているのが分かる。だから俺は、心の準備を整えた。よし、どんな言葉が来ても俺は耐え切ってみせるぜ!!

 そう、心の防壁を作り上げたのだが―――。


「たとえあいつがお前の妹だったとしてもだ、あいつ自身は何も覚えてないんだから悲しいよなぁ。」

「ぐっ。」


 意外なところをついてこられてしまった。あまりにも意外だったため、口に入れた牛乳を粗相してしまいそうになった。正直、「お前の妹じゃないだろ」、やら「血のつながりがあればよかったな」とかそういういやみを言われると思っていた。まさか、こんな切り口があったとは・・・。

 俺の心についた傷には気付かずに(あるいは、無視しやがって)俺に何かを投げてきた。思わず避けてしまったが、月華の視線が痛いぜ。てか、月華が物を投げてきたらまず、避ける、これ常識。


「ああ、そうだ、これを渡しておく。」


 床に落ちてしまったそれを拾ってみると、長い紐の付いた小さな袋だった。神社などで売っているお守りのようなものだ。というかそれとしか思えないが”安全祈願”やら”交通安全”といった文字が書かれていない。つついてみる。

 返事がない、ただの布袋のようだ・・・。


「これを、どうしろと?」

「何かあっても、絶対に肌身離さず持ち歩け。」


 訳がわからん。しげしげと眺め、ためしに袋を開けてみようとするがどうやってもあきそうになく、下手すると布の方を破ってしまいそうだ。もらったものについて何かきこうとしたところで、ユウが帰ってきた。手には悠のバック。


「ほら、ユウがきたぞ、時間は大丈夫か?」

「ん、今から出ればちょうどかな?」

「そうですか、それじゃあ、気をつけて行ってきてください!!」


 ユウに手を振られて家を出た。珍しく、家に帰るのが楽しみだと思った日だった。


「あ、しまった。」


 ユウの笑顔に癒されていて、月華に聞くのを忘れてしまった。まぁ、ユウの前でするような話ではないし、今日の夜でもいいだろう。


◆◇◆◇◆◇◆


「さてと、ユウ。」

「何でしょう、月華。」

「行きたいところがあるなら自分で調べておけ、パソコンの使い方くらいは・・・。」

「わかりますよ?月華に一通り教えてもらいましたし。」

「なら、ノートをひとつ貸してやるからさっさと調べておけ。九時三十分頃には出るからそれまでにな、お金のことは心配しなくていい。」

「わかりました!!」


 悠を見送ったあと、二人はこんな会話をしながら家の中に戻って行った。



『さてと、今回は作者が挫折した話よ』

「まさか、小説はこれで終了っていう話?」

『それは違うわ。でもね、お気に入り登録していただいた方のページに行きたいって作者が言ってたじゃない』

「うんうん」

『そして最近”この小説を読んでる人はこんなのをお気に入りに登録しています”っていう機能ができたじゃない。それを見た作者は”○○user”のところをクリックしたらお気に入り登録者のページにいけると思ってたのよ』

「実際は、小説の目次ページに飛ぶんだけどね。で、さすがにあきらめたと?」

『ええ、作者の中ではもう方法がない、ということになってしまったわ。読者様からはメッセージで否定のものはきてないのだけれどねぇ』

「意外と早かったね」

『私は遅かったと思うわ』

「ということで、今回はここまで

この作品では皆さんからの感想、指摘、評価、メッセージなど何でもお待ちしております。キャラへの質問も、読者様が抱いたのであれば送ってくださって構いません。それでは次回もお楽しみに」


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