第七話
疑うということ
気になるということ
探りたくなるということ
そのどれもが何処までも続く、下にむかう負の螺旋―――――
三日後の夜は駅の近くにあるファミレスで食べた。警察でのことがあった後なので、外に出ることに俺は猛反対したのだが月華がいちおう、大丈夫(だと思う)と言い、何かあったら戻ることを明言したことと、その頑固な態度に俺が折れたのだった。
ユウはどこか楽しそうで外食に行くと聞いたときから笑顔が絶えない。外食に行くという記憶がないせいか、外食というものに期待しているようだ。
「何が食べたい?」
「ハンバーグってやつですかねー、あ、でもでもドリアってのもおいしそうですね。
月華や神崎さんは何にするんですか?」
熱心にメニューを見るユウ。さすがに服は制服ではなくて私服を着ていて、その私服は男物で、月華の昔の物を着ている。毎日、あの制服じゃあ可哀想と言うか目立つので月華が昔の服を引っ張り出してきたのだった。
昔の月華は(かなり)小柄だったためユウにぴったりだった。どのくらい小柄かというとだな、たしか当時のクラスメイトが女装させたらマジで女子に見えたと言っていたからそのくらいだと思ってほしい。下着は………笹田と会ったその日に俺が買いに行かされたが。もちろんユウと一緒にな?
「そうだな、じゃあ俺はドリアにしよう。」
「神崎さんはどうします?」
「じゃあ、俺は・・・カルボナーラにするか。」
「それなら私はハンバーグにします!!月華、それと私はこの抹茶パフェというのも食べたいです!!あと・・・ドリンクバーもいいですか?」
「わかった。」
注文すると時間が夕食時なだけに出てくるまでにそれなりの時間がかかった。すぐ近くをウエイトレスが通るたびにうれしそうにむずむずしながらウエイトレスを目で追うユウはかわいかった。俺は別に変な人間じゃないぞ?
おいしく食べ終えて(今回は月華のおごりだったので俺も気持ちよく食べることができた)会計を済ませて店を出た。不思議なことにというか、むしろ当たり前だと思うが、怪しい黒スーツとは会わなかった。
「おいしかったか?」
「はい、とっても!!またきたいです。」
家に帰ってから俺がたずねるとユウは元気よくそう言った。ユウはおやすみなさい、と言って月華に与えられた部屋へと行った。月華がそれを見送り、俺は家に帰ろうと玄関から出て行こうとした。そんな時。
「お前、今日からここに泊れ。」
「は?」
月華の発言に俺は耳を疑った。こいつは突然何を言い出すのだろうか。いや、何か言い出すのはいつものことのような気もするが、さすがにこの発言は突拍子がない。
「いや、俺は今から家に帰ろうと思うんだが・・・。」
「やめておいた方がいい。・・・荷物を取りに一度おまえの家に行く必要があるが、それ以外ではしばらく帰らないほうがいい。」
「どうしてだ?」
「お前の言っていた黒スーツの連中に顔を覚えられた可能性がある。この家の場所はわかっているいないだろうから、ここに泊った方が安全だと思う。
だから、そうしろと言っている。」
幸いすぐに使える部屋がもうひとつある、多少ほこりっぽいがそこは気にするな。それだけ言うと月華は出かける準備を始めた。どうやら、俺がここに泊り込むことは月華の中では確定事項のようだ。しぶしぶ従って家に帰り、仕事で必要になるであろう書類や、多少の衣服を詰め込んで再び月華の家へ行った。ちなみに月華はついてきたものの車の中で待機していた。あいつの提案でここに来ているのだから少しは手伝ってほしいものだと思う。
ちなみに、車の運転をしてきたのも俺だ。あいつは免許は2輪バイクのものしかもっていないし、あいつ自身4輪を買うつもりはないらしい。家の車庫にはきちんと整備されたバイクがあるのでそれは間違いなさそうだ。
俺は月華に案内された部屋に荷物を運びいれ、部屋の様子を確認する。シングルベッドがひとつに使い勝手がよさそうなデスクが一台にクローゼット。おかしい、あいつは一人暮らしだし、部屋が余っているのも頷ける。だがしかし、ここはあいつの寝室でもなければ、仕事部屋でもない。ただの空き部屋にこんなベッドやデスクは要らないんじゃないだろうか?
そもそも、なぜあいつはあんなことを言い出したのだろうか。あんなメールを送ってくるようなのと知り合いだということは俺を追い出しておいたほうがいいんじゃないか?どうして俺をわざわざ守ろうとする?
そもそも本当に守ろうとしているのか?
ユウはここにいても大丈夫なのか?
疑問と月華への不審感がぐるぐると生まれ、頭の中をまわり続ける。荷物を広げようとした俺に月華が声をかけた。
「荷物はまだ広げるなよ、明日ユウに掃除させるから」
・・・お前がするんじゃないのかよ!!
この日の俺はあふれる疑問のせいで満足に眠れなかった。
◆◇◆◇◆◇◆
「襲われた、か。」
そう月華は口にして彼は彼の仕事場である部屋にいた。起動はしているもののそのパソコンが仕事に使われていないのは見ればわかる。月華が考えていたのはユウのことでも、襲ってきたという連中のことでもなく悠の事だった。
襲われた、といっていた日の昼ごろからなんとなくだが様子がおかしい。なかなか気付けないだろうが時折ふっと悩むような表情をしていた。
「おそらく襲われたことからくる不安だと思ったから、予定していたとりあえずの安全策は講じたが、相手の正体がわからない以上一時的なものでしかないがな。」
本当は襲われたというその日のうちにこの家に住まわせるつもりだったのだが、言い忘れていたようだ。
(・・・まぁ、悠に被害は出ていないのだし大丈夫だろう。)
そして月華は振り向いた。人の気配を感じたから、ではない。
わずかに音がしたから。
振り向いた先にいたのは、一人の少女。どうやって入ってきたのか、どうやって閉まっているはずの扉を音もたてずに開けたのか、という疑問はこの少女のに対しては無意味だということはよくわかっている。少女は無表情な表情を変えずに話題を切り出した。
「仕事を、頼みたい。」
それがどんな仕事でも、月華に拒否権は無い。
月華は仕事を頼まれた。
「評価とお気に入り登録ありがとうございます!!
作者からお金をもらってきたので盛大にクラッカーでも鳴らそうか?」
『ご近所に迷惑よ』
「ぶー」
『今回の最後の方、月華だけのシーンは本当は書かれないはずだったのよね』
「話が唐突に変わるね。まぁ、いいけど。
実際はもっとあとに書くつもりだったんだよね」
『ええ、でも、作者としては書きたいシーンだったんだけど頭の中で考えてみるとどのタイミングで入れるべきかわからなくなったそうよ』
「で、急遽書いた、ということだね」
『ろくにプロットも組んでないのに時間軸とかの問題は大丈夫なのかしら?』
「その辺は作者特有の楽観視のもと大丈夫ってことになってるみたい」
『では、今回はこの辺で。
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『あと、お気に入り登録していただいた方のページへ行く方法もよ。
これに関してはなかったら無い、と作者に教えてやってください。』