第四話
あの日の夜に初めて逢った
きっとあれが、運命ってやつだったんだろう
次の日、会社を休んだ俺は警察署へ向かった。横にはユウもいる。見知らぬ(記憶が無いからそうなるだろう)外に出たせいか、おびえ半分好奇心半分といったところだろうか。
月華がどうせなら本人もいたほうがいいだろうといって押し付けてきたのだ。正直、何の罪も犯していないのにこんなところへ行くのは嫌だったのだが自分が拾った厄介の種(ユウの事だ)をさっさと手放すためにも俺は受付へ向かう。
「すいません。」
「はい、何でしょう?」
「笹田さんという方はいらっしゃいますか?」
「笹田、ですか?失礼ですがアポイントメントはおありですか?」
「十狩がきたといっていただければ十分だといわれたので。」
受付の女性は胡散臭げに思っているような顔をしながら笹田に連絡を取った。そりゃあ、そうだ。俺だって、アポもないはずの人間がやってきたらそいつをいぶかしむだろう。
さほど待たないうちにやってきたのは、熊のような見るからに体育系な大男。俺もけして背は小さくないのだが彼には横幅があるため俺よりもかなりでかく見える。
「十狩ぃ!!オレはお前のパシリじゃねぇって何度言えば…。」
声も見た目どおりかなりでかくて彼の声がロビー中に響き渡った。俺は突然の大声に驚いてその場から動けなくなる。ユウもあまりの大声に驚いたのか、怖くなったのか、俺の後ろに隠れる。だがこの大声に対して他の人の反応は冷たかった。慣れているのだろうか?
そんな大男は大声で緊張している俺を受付の女性から紹介され、上から下まで二往復ほど悠とその後ろに隠れているユウを見てから急に頭を下げた。
「すまん!!まさか違うやつが来るとはおもっとらんかったんだ。いつもと違って携帯に連絡入れてくるんじゃなかったから、おかしいとは思っていたんだがな。」
謝っている声もでかい。ユウがさらに小さくなるかのように俺の後ろに隠れようとする。
「いえ、いいですよ。こちらこそ突然すいません。」
ロビーの横にあるソファへと案内された。座った悠とユウにびっくりさせた侘びだといってコーヒーとオレンジジュースをおごってくれた。………意外に優しい。あ、失礼だな。
ユウは(はじめて見る)紙パックに興味津々のようだ。彼はなかなか有能な人らしいというのは、笹田、という月華の知り合いだという人物に興味があったので、受付の人から彼を待っている間に聞いていた。
彼のおかげで解決した事件もそれなりに多いらしい。でも、普通なら仕事で忙しくて呼び出したら仕事に差支えが出そうだが彼は根っからの現場肌らしく書類仕事はむしろ任せる方が不安なのだと、彼女は愚痴るようにそう言っていた。改めてみた印象は、ああ、確かに現場肌の人だろうなぁ、だった。よく言えばまっすぐ、悪く言えば直情的な彼は俺の目の前で何度も謝っていた。
「驚かせて悪かったな。はじめから俺が十狩のやつだと思い込んでなければよかったんだよな。」
声も意気消沈している。でもやっぱり声は大きい。心なしか体もそれにあわせて縮んでいるように見える。でも、体はやっぱり大きい。
「で、十狩がお前らを俺のところへやらせた理由は何だ?」
「あ、これなんですけど…。」
月華から渡された封筒を笹田に渡すし、乱暴に封筒を開けて読んでいく。しばらくすると笹田は何も言わずに紙をびりびりと破り捨てた。顔が赤くなっている。怒っているのか?そしてユウの方を見つめる。
ユウははじめの大声があったのか再び悠の後ろに隠れようとする。実際は悠は隣に座っており完全に隠れることは無理だったのだが…。俺も怒鳴られるかと思って身を硬くしてしまった。だが、笹田は大きくため息をつくともう一度ユウを見てあきらめたように言った。
「ちっ、面倒だがやってやろう。そいつの顔は一応覚えたし写真があるものから調べてみる
なんかわかったら連絡してやる。怖がらせて悪かったな、えー…。」
「ユウ」
ユウがポツリと消え入るそうな声で自分の名前を告げる。
「悪かったな、ユウ」
人懐っこそうな笑顔を浮かべて立ち上がろうとした笹田をユウが止める。
「あの、笹田さんは月華おにーちゃんとどんな関係なんですか?」
一瞬空気が凍る。月華『おにーちゃん』!?
なんだ、一体ユウと月華の間に何があった!!
俺は恐る恐るユウに尋ねた。
「えっと、ユウ?月華『おにーちゃん』ってどういうこと?」
「えっと、笹田さんとあって一番初めに月華のことを呼ぶ時はこう呼べって、そう言われていたので、それ以外は名前を呼び捨てで呼ぶように、って言われました。」
ああ、月華がほくそえんでる顔が浮かぶようだ。笹田の方は何かをぶつぶつとつぶやいている。よく聞こえないがおそらく警察の人間としてはふさわしくない物だろうという予測はできる。俺だって、きっと同じことを思ってるよ。
「教えて、くれないんですか?」
ユウがたずねる。どうやら笹田の大声と態度の恐怖よりも好奇心の方が上になったようだ。だが、確かに気になるのは事実だ。あいつはどうやってこの笹田との関係を得たのだろうか?
笹田はまじめな顔をして深く息を吸ってそして大きな声で言った。あまりの声の大きさで風圧が発生するかと思ってしまった。恥ずかしい。
「それは、言えん!!」
ユウは若干、涙目になっていた。俺も泣きそうになっていたかもしれない。
「俺も気になるんですが…。」
「それを言うとオレは警察を首になってしまう可能性があるんでな。まだ若いのに職なしというのは嫌だからな。
詳しくなくていいならオレはあいつには一生かけても返せないような恩、借りがある。それだけだ。」
それ以上は硬く口を閉ざされて何を言っても教えてくれなかった。さすがに、首になると言われてなお、追求するような度胸は俺にはなかったので、聞いていたのはユウだったが、暖簾に腕押し。笹田は優しく笑うと大きな手でユウの頭をぽんぽんとたたいて席を立って行った。むしろそそくさと席を立っていったといったほうが適当な気がするが…。
「今回の製作秘話は作者が投稿しようと思った理由だけどさ」
『確かその時読んでいたガルー・ブレスト先生の『平凡ではない日常。』に神崎涼っていうキャラクターがいたのよね』
「このタイトルの神崎涼とおんなじ字だって、その時は自分のPCの中だけで『失踪』を書いてた作者はものすごく驚いたんだよね」
『ええ。で、向こうの方は神崎涼で、それを見た作者は「よし、投稿しよう」と思ったそうよ』
「また脈絡の無い・・・」
『で、その勢いでユーザー登録をして、即、投稿したというわけね』
「そういえば作者曰く「反省も後悔もしている」だってさ」
『どうするのよ、そんなので』
「でも、投稿するのは楽しいんだって」
『この間も、評価をいただいて、お気に入り登録もしていただいた方がいるって狂喜乱舞してたものね』
「ま、いいんじゃない?作者自身は続ける気満々だし。
というわけで、この作品では皆さんからの感想、評価、及びアドバイスもしくは手厳しい指摘など何でも心から待っています。
キャラクターへの質問などがある方は感想、またはメールでどうぞ。
メールはこちらからhappy_first_tea@yahoo.co.jp
ところで勝手に作品の紹介してるけど、いいの?」
『作者が「誹謗中傷みたいなことは言ってないから大丈夫!!」だって言ってたわ』
「ならいいか」