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神崎涼の失踪  作者: 紅月
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第二十一話

真っ白な世界を、針のない羅針盤を片手にただ進む


その世界の果てで見つけた標は、果たして、希望か


はたまた、絶望なのか


それでも、歩みを止めることはできない

―???―


「時間切れ、かな?まぁ、いいや。とりあえずどうにかなったし」


彼女が思い出せないようではあたしは思うように動けない。

せいぜい、今のようにピンチになった時に無理やり干渉するくらいしかできない。

あの時に押し込められた〝あたし〟という〝人格(能力)〟は彼女が思い出さないともとには戻れない。

時間切れというのは無理やり反転させた境界がもとに戻るということ。

ここからはまた彼女に頑張ってもらうしかない。


「早く、思い出しなさいよ。」


そうこぼして、あたしは彼女にバトンを渡すようにして意識を沈めた。


◆◇◆◇◆◇◆


―悠―


「時間切れってどういうことなんだ?ユウ」


たった今見せられたあまりにもファンタジー過ぎる光景に俺は理解が追いついていない。

唯一理解できたのはたった今、ユウが言った言葉である「時間切れ」。

よく聞こえなかったが他にも何かをつぶやいていた。

たずねた言葉に返事はない。

見ると、寝ているようだった。

そのまま、月華の家までまっすぐに帰りつき、家に戻る。

それでも、ユウは起きることはなかったのでとりあえずおんぶをして運び部屋のベッドに寝かせた。


「無事に帰れてよかったな。」


リビングにて、お茶を飲みながら月華が言う。

無事にって、まぁ、確かに危険な空気がビシバシ流れてたけどね?

せっかくなので月華にも聞いてみる。

ユウの豹変振りや、「時間切れ」について。

特に豹変振りのほうには俺の考えも混ぜておいた。


「というわけなんだが・・・。」

「ふむ、俺としてはあまり推測でものを言いたくはないが、なぜピンを抜いていない手榴弾が爆発したり、突然屋根の上の人間が落ちてきたのかには一応考えがある。」

「どんなだ?」

「自分で考えようとは思わないのか?」


思うわけがないじゃないか。

そういうわけの分からない事に巻き込まれたことのない身としては「おかしなこと」でしか片付けられない。

考えがあるというのならぜひともその考えとやらを聞きたい。

月華は俺の心を読んだのか、大仰にため息をつくと話しはじめた。


「”言霊コトダマ”って知っているか?」

「名前くらいならな。あれだろ?こう陰陽師が使うような。」

「それじゃないかと、俺は思う。以上。」


・・・


「わんもあぷりーず。」


しまった!!要求がへたくそな英語になってしまった!!

てか、よくこの状況で英語なんて出てきたな!!


「”言霊コトダマ”って知っているか?」

「名前くらいならな。あれだろ?こう陰陽師が使うような」

「それじゃないかと、俺は思う。以上。」


・・・

確かに”わんもあ”だけどさぁ!!


「もっと詳しく!!」

「俺は、あまり推測でものを言いたくないと言った気がするんだが」

「俺は納得できない!!もっときちんと説明しろ!!

 だいたいなんなんだよ、手榴弾とかって、何でお前(一般市民)が持ってみてるわけ?

 せ、つ、め、い!!」


そのあと、いくら月華に詰め寄っても月華は頑として口を割らなかった。

あいつのあの顔は絶対に何か分かっている顔だった。

それが分かっているからこそ、俺はあのメールを見たときからずっと胸にわだかまっていた思いを月華にぶつけた。


「どうせ、自演じゃないのか?」

「なに?」


不機嫌そうに月華が聞き返してくる。

一度、吐き出した言葉は止まらなかった。


「あの、メールの相手、アリスって言ったか?

 どうせそいつと連絡取り合って、今日のことを起こしたんだろ?

 演技にしちゃあ、ずいぶんと熱演だったけど、お前、一体何がしたいんだよ?」


箍が外れたようにまくし立てる俺に対して、月華は冷めた目で俺を見たあと、何も言わずにリビングを出て行った。

そして、そのまま俺は不貞寝。


◆◇◆◇◆◇◆


―月華―


「あれが、自演だと?」


あほらしくて笑いがこみ上げる。

あれが自演なら、もっとうまくやる。

重要なことはあいつは、俺があの女と手を組んでいると思い込んでいることではなく、メールとやらのこと。

どうやら、俺が知らないうちに勝手に見た上に、勝手に処分までしてしまったらしい。

それも、アリスからのメールらしい。

悠の話を聞いてだいぶユウのことが分かってきた、というか予想がついてきたのだが、アリスからのメールがあったとなると間違いない。

これは、あのパターンだ。

俺は巻き込まれたパターンだ。

間違いなく。

己の仕事部屋で思考する月華はカメラを取り出した。

先ほどの連中のリーダー格であろう女の写真が入っているカメラだ。

女の声も録音しておいた。


「まったく、あまあまな悪役だったな。」


だがしかし、俺と、あいつが関わっているのだから狙われているユウは間違いなくあいつの関係者。


「あー、本当に、もう・・・。」


こぼれた悪態は笑みに変わる。

たまたまとはいえ俺を巻き込んだのはやつらの災難だ。

せいぜい、けんかを売ったことを後悔してもらおう。

あの女の話を聞くに、俺があいつとかかわりがあるとは、やつらは知らないようだ。


「それなら十分、だな。」


そういうと月華はパソコンに手をつけた。

「どこまでも、どこまでも、ね。」

『どうしたのよ、唐突に。』

「うん、つい最近読んだ本にこんなせりふがあってさ、前書きがこんな感じに近いなぁ、と思ったから、つい。」

『へぇ。それにしても、視点???ってだれ?』

「とぼけちゃだめだよ?ボクらは知ってるじゃん。」

『まぁ、そうなんだけど、そこはほら、読者の皆様に話を振ってるのよ。』

「読者の皆様はリアルタイムで答えてはくれないよ?」

『分かってるわよ。』

「それでは、また次回で、会いましょう。」

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