第十一話
右左上下
ここはどこかでそこもどこか
蛇は何処へでも何処へでも
某所。というか、学校。
学校の建物の中のとある一室。そこにいたのはその学校の制服を着た男子と女子の二人組みだった。部屋の中の雰囲気は重苦しいとはいかないまでも、けして軽いものではないと断言できる。沈黙の中、切り出したのは男子の方だった。
「噂は聞いているよ。」
「ろくな噂じゃないだろうけどね。で、何かわかったの?〝蛇〟。」
「一部じゃあ有名だよ?お前が一本とられたっていうのは。」
「うるさい。てか、そんなに有名なの?」
「それはもう、その話で持ちきりだというくらいにな。」
女子、いつぞやの少女は男子に向かってそうたずねた。蛇と呼ばれた男子はくつくつとわらうと資料を差し出した。データの入ったチップ。それを自身のマシンに入れながら少女は尋ねた。
「で、彼らは何者?」
「単純に言うと”カンパニーによって被害を受けた人たちの会”だ。正式な名前は存在しているだろうがそういう組織がいくつもあるからどれかは特定できない。」
「そう。」
少女はロードされたデータを見ながら返事をする。
「復讐は珍しいことじゃないよ。」
「そう、それ自体は珍しくないが、だが〝紅〟よ。お前にその矛先が向くのはとても珍しいことだと、私は思うがな」
「確かに。」
「そして、他の社員に目もくれずあの娘に攻撃を仕掛けたのはやつらが初めてじゃないか?」
「そうだね。」
少女が画面から目を離して少年を見る。目が言外に「何が言いたい」といっているが、少年はそれに笑いで答えた。
「なに、不思議だと思ったのだよ。お前は世間にはその存在も、顔もあまり知られていない。
カンパニーに恨みがあるならお前よりもはるかに有名なベールやヴィオレットがいるし。わざわざ”色持ち”に手を出さなくとも下っ端だっている。なぜ、お前とあの娘だったのか、とね。」
「スズに関しては、まぁ、何度かあったけど。ボクに関しては、知らないよ。・・・ところで、蛇。」
「なんだい?クリムゾン。」
少女は画面を指差して少年の意識をそちらへと向けさせる。そこにあるのはどこかの組織の資料だ。
「情報があいまいな上に少なすぎるんだけど・・・。ボクが依頼してからもう一週間もたってるんだよ?」
少女の呆れたような指摘に少年は偉そう、また、少し起こりながら少女に答える。
「それは仕方がない。やつらの本拠地はおそらく私の管轄外だ。だいたい、その資料自体は依頼から二日後には完成していた。」
「取りに来なかったボクが悪いってことですね、すいません。それより、管轄外ということは・・・外か。」
「あの娘は人為的に作られた穴に落ちたのだろう?ならばその穴の先にやつらの本拠地があるとみて間違いないだろう。」
ベール、ヴィオレット、色持ち、外に穴。彼らの会話には不可解なところがいくつもあるがそれをいぶかしむ輩はこの空間にはいない。彼らはさらに会話を続ける。
「やつらは他の同じような組織に比べて徹底的に背景が見えない。むしろ、表に、というかこっちに来たのすら今回が初めてだろうな。私の情報にまったくなかったくらいだ。」
少年は苦々しげにいう。まるで、自分が知らなかったことがこの世にあったことを嫌悪しているかのような口ぶりだ。それを受けた少女も知らなかった、というところに同意しつつも資料を何度も確認している。
「おっけ、資料はもらっていくよ。」
「ああ。」
「現場の解析の方も終わってるし、穴の先は月華のいるところだった。すでに月華に情報を集めるように言ってあるから、あとは情報を教えてもらうだけ。あとはやり残しというか手付かずになっている仕事を片付けたらすぐに行くよ。」
「だがツキカとやらに渡したのは私に渡したものと同じものだろう?あの、面をかぶった人間の写真一枚だけで特定するのは不可能に近いと思うが?」
「嫌なところをついてくるね。」
実際、それしかなかったのだからしょうがないが、顔の分からない写真に名前の分からない敵。その写真だって、この辺の監視システムの管理元に頼んで譲ってもらっているのだ。それに、相手の声も聞いていないのだから、そんな写真一枚で情報が集まっているとは思えないのだが・・・。
「まぁ、敵がうまい具合に月華に接触してると思うよ?なんたって月華だし。」
「それはお前がいつも言っている『そういうことに巻き込まれやすい体質』のことか?」
「そうだよ。スズ自身が月華のそばにいるとは思ってないけど、おそらく月華は巻き込まれてるよ。」
それだけいうと少女は立ち上がって部屋を出て行こうとするがそれを少年が呼び止めた。
「ではクリムゾン、支払いをしてもらおうか。」
少女が脱力する。
「こんな時でもお金ですか・・・。こういうときはもっとこう、これからの仕事を応援するとかさー。」
「お金は大事だぞ。なんと言っても生きていくために必要なものだからな。」
ほれ、と手のひらを少女に向けて催促してくる少年に、少女は札束を投げ渡した。金を投げるな、と言いながら、それを確認した少年は少女に向かって一言、こう言った。
「せめて生きて帰って来い、お前は大切な金づるだからな。」
それに対して少女は不敵に笑い、
「誰に向かっていってるの?ボクは、〝クリムゾン〟だよ?」
といって部屋から出て行った。
学校は授業中のようで教室には黒板を写しているのか、生徒が必死にノートを取っている姿がある。制服を着た少女は足を速めてその場から去っていった。
『もうすぐユニークアクセスが500になるので作者が何かをしたいそうです』
「何かって何?」
『さぁ?』
「・・・まぁ、それは横においとこうか。で、作者の話だけど、今回書いてて楽しいなぁと思ったのがこの”蛇”なんだって」
『別の話では登場予定なだけで、まだ書いてないからこのキャラを書けてよかったと言っていたわね』
「今回って言うのは今回の更新でっていう意味」
『さすがに全話通して蛇がお気に入りっていうのはメインキャラが泣いてしまいそうね・・・』
「作者曰く「どいつもこいつも神経図太い性格だから大丈夫」だって」
『確かに作者は涙もろいキャラというか精神が弱いキャラ作るのは嫌いだけどそこまで言ってもいいのかしら?』
「ちなみに作者は神経もろいキャラが嫌いなわけではありませんのであしからず」
『今回はこの辺にしておきましょうか。
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あと、話の展開に希望がありましたら言ってください。作者がその内容を確認して、可能ならその展開というかそのシーンを入れた話を書くと思いますので』
「あと、ユニーク500突破記念で何かしてほしいことがあったらその希望もどうぞ」
『もし、誰もしてほしいことがなかったらどうなるのかしら?』
「小説の方は作者が考えたネタで突き進むし、500突破記念の方は何もしないかも」