第九話
鳥は熟した果物しか食べないらしい
だから常に木の周りを飛び回り監視している
―ユウ―
「ふぅ。」
トイレに入って一息ついた私は今日の今までを思い返す。買ったばかりの新品の服を着た私を月華はとてもかわいい、と言ってくれた。それに、月華が横にいないときは男の人たちがナンパしてくれました。断ったし、月華がちょうどきてくれて何も起きなかったけど、あの時の私は正直自分がかわいいっていう保証がもらえたみたいでうれしかった。ハンカチで手を拭いて鏡に映った自分の姿をもう一度確かめる。
ノースリーブの白のブラウスに黒のジャケット、アクセントのようにつけた赤のネクタイを金のネクタイピンで留めてある。赤と黒のチェックの入ったミニスカートはかなり気に入っていたりする。ブーツのつま先を眺めながら考えたのは月華に持ってもらっている買い物の数々。
さすがに、ちょっと買ってもらい過ぎたかなぁ・・・。
◆◇◆◇◆◇◆
ユウが物思いにふけっていたりするそのころ、建物の一階で。
(早く戻って来い、ユウ!!)
月華はかなり本気で困惑していた。大学生時代になってから、友人たちからはかっこいいと言われていたし、何度か告白もされていた(全部断ったが)ので自分の容姿には一応、それなりの自覚があるつもりでは、ある。のだが、
「お一人ですか?」
「よかったら一緒に来ませんか?」
「一緒に写真を取らせてもらってもいいですか?」
学校をサボったのか学生と見える少女達が月華の前に群がっていた。町を歩く時からちらちらと視線は感じていたがユウがいなくなったとたんこれか、と思う。正確にはユウがトイレに行って、それを待っている間に通りかかった彼女達に囲まれてしまったのだ。連れがいるから、とあきらめていた連中もいるだろうが、連れであるユウがいない、今の月華は格好の獲物なのだろう。
正直なところ、ユウがいなければ、彼はすぐにでもこの場所から移動していただろう。
ため息をつきそうになったのを目の前にいる彼女たちに失礼だと思い、それを抑えながら足元を見る。月華の足元にはいくつかのというか両手に余るほどの紙袋(店の名前は女物の店が圧倒的に多い)があるのだが彼女達の眼中にそれはないようだ。
「月華!!お待たせしました。」
やっときたか、というような、ほっとした顔をして紙袋を持ち上げる。ユウがいるであろう方向を確認し、月華は紙袋を持って無理やり彼女達の包囲網から抜ける。ユウが完全にこっちにくるのを待たずに、ユウとすれ違うようにして歩く。それを見たユウは慌てて月華を追いかけた。あとに残ったのは呆然とした少女達だけだった。
◆◇◆◇◆◇◆
―ユウ―
月華のジーパンにTシャツ、皮のジャケットというラフな格好がとてもよく似合っていた。先ほどの女の子達が月華に近づこうとした気持ちは、まぁ、分からないでもないんですけど・・・。出てきた言葉は待っていてくれたことへのお礼ではなく、非難の言葉だった。
「ひどいです、月華。」
「なにがだ?」
とてもかわいい、私なんて見劣りしてしまうような、私と同じくらいの年齢の女の子に囲まれていた月華。正直、私は月華に声をかけるのをためらうくらいに彼女達の熱気はすごかった。そんな月華は私の声を聞いたらこっちにきてくれたのにそのまま通り過ぎてしまうなんて・・・。それをぶつけると月華はすまなそうな、気まずそうな顔をして言った。
「すまん、どうしても彼女達から離れたくってな・・・。」
「ものすごくかわいい人たちだったじゃないですか。」
「それは、分かっているんだが、な。ああいうのには慣れてないんだよ・・・。」
私は思わず噴き出した。そのあとすぐに失礼だと思ったので必死に笑いをこらえた。月華は何でもできそうな、完璧な感じがしていたのに、そんな弱点(?)があるなんて思ってもみなかった。
まだ少し早いけれど、今から、他のお店に入るとなると結構時間がかかるので、昼ご飯にすることにした。今日は私の後を月華が追う、というような感じで、よほどのことがない限り、月華は私の行くところや買うものに何の文句も言わない。逆に不安になってきていたりするのは、秘密です。
しばらく歩くと私はお目当ての店を見つける。
「月華、あそこでお昼にしませんか?」
ちょっと前にテレビでやっていたお店、レグザ。イタリアンのレストランで、パスタと言うものがおいしいそうで、私としてはぜひともボンゴレのパスタというのを食べてみたかった。それに、ピザとか。ジェラートというものは、まさに絶品だとか。涎は・・・出てませんね。月華は二つ返事で了承してくれて、私たちはまだあまりこんでいない店へと入っていった。
◆◇◆◇◆◇◆
そんな二人を監視している男が複数、その周辺にはいた。そんななかの一人が持っている通信機に連絡が入る。その一人の男は通信を受け相手に対応する。
『お嬢様は何処にいらはる?』
「いま、男と二人でレグザへ入っていきました。」
『人目についてはあまり手が出せんませんなぁ。ま、今日は確認だけが目当てやから、気にしてはおりませんがな。』
「監視は・・・。」
『続けておいてや。あと、一緒にいるとかいう男の写真も取ってきておいてや。後で調べようや。』
「はっ・・・。」
相手は特徴のある言葉をしゃべり通信を入れてきたときのように唐突に通信を切っていった。男も通信を切り、笑顔で男と話す少女の監視に戻る。自分の上司は一体なにをしようというのだろうか、そしてあの少女は一体なんだと言うのだろうか。どう見てもただの、非力な少女にしか見えないというのに。そう思った彼は、そのすぐ後に自分が気にしても仕方がないことだ、何より知らないほうが身のためだと思い、今考えたことを忘れることにした。
自分の上司と、その直属だと言う気味の悪い集団のこととその集団に逆らった者たちの末路を頭の隅にとどめながら・・・。
彼らはけして手を出さない。出してはいけないと上司に厳命されているのだから。自らの命を繋ぎとめるため、彼らは与えられた任務を遂行した。
「前書きのネタがなくなってきたようです」
『もともと第三話だったかしら?で、急にやりたくなったことだし、作者自身も足りなくなるとは思ってたみたいだけど・・・』
「早すぎ」
『でも、前回の前書きはそれなりにお気に入りみたいよ?』
「作者は似たような言葉をというか似たような韻のふみかたしてる文章が大好きだからねー」
『でも、自分でそういうのを書けているか自信がないとも言っていたわね』
「自信がなきゃ書かなきゃいいのに」
『ある意味この小説そのものを否定するような発言ね・・・』
「禁句、かな?」
『作者も自覚してるし言わない方がいいんじゃないかしら?』
「うーん難しいね。
というわけで今回はここまで!!」
『この作品では皆さんの評価、感想、メッセージ、指摘、質問、お気に入り登録など幅広く構えてお待ちしております』
「作者のやる気のためにもぜひぜひお願いします」
『やる気といえば、前回の投稿後の1時間くらいでPVが100超えててびっくりしてたわね』
「あれはかなりのやる気になったって言ってたよ」
『でも、投稿は日付の変わるぎりぎりなのね・・・』
「それこそ禁句じゃないの?」
『視点が変わったときは○○視点って書くべきかしら?
ぜひともアドバイスお願いします』