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第九話 冒険者登録

 ギルドの建物に入ると、エールというアルコール飲料の臭いが充満していた。昼間から酒盛りをあちこちでしている。


 可愛い受付のお姉さんに冒険者登録したい旨を伝えたら、「三人様ですね。百八十リンギです」と言われるとお母さんが指輪のルビーを台座から外して「これで支払えるかしら」と尋ねた。


「ギルドでは宝石の買取りもしております。今、見積もりを出します。こちらは八千リンギになります」


 露天で売っていたバッタもんのルビーは五百リンギだったから、ぼったくりでもなかったのだろうか? ああ、露天で宝石を買う人っていないかあ。


「もう少し高くならない。これは亡くなった主人の形見なの」


 お父さんは元気に生きてるし、それってイカサマのポーカーで巻き上げたルビーだよね。


「そうですか。では八千五百リンギでお買取いたしますが、いかがでしょう」


「仕方ないわね」


 無事、私たちは冒険者になった。


「エルザとジジイ、六十リンギの貸しね! 利息は十日で一割だから」


 お母さん、実の娘からも取り立てるのかあ。さすがは私のお母さんだ。フランメルさんは聞こえないふりをしている。



 私たちは首から冒険者IDの金属プレートがついたネックレスを首からかけた。


「あのう、もうご存じだとは思うのですが、迷宮の中にはアンデットが跋扈ばっこしていて今入るのはとても危険です。できれば調査隊が戻ってきてから中に入られた方が良いかと思います」


「お嬢さん、その調査隊にエルマという冒険者はいるかね」


「はい、調査隊の隊長はエルマ様です。冒険者になられて十年ほどですが、冒険者ランキング年間連続一位で殿堂入りされた英雄です」


「エルマのあほうここで何をしている。なぜ戻ってこん。素晴らしい情報ありがとう。お嬢さん」


 おばあちゃん、病気にでもなったかと思っていたけど、英雄になっていたとは思わなかったよ。心配して損した。私は冒険ギルドを後にして、兵士さんたちに止められたけれど、迷宮に入った。



「何もいないですね。ただただ、広いだけ」


「生きものはいないようだ。ここにはエルマはおらん!」


「お母さんはもっと下にいると思う。どこかに下の階層への降り口があるはず。エルザ、サーチして」


「はい!」と私は反射的に答えてしまったけれど、広い、広すぎます。私の使い魔のフクロウとコウモリのすべてを飛ばして迷宮内を探った。現在地から左方向約三十キロに降り口を見つけた。


「お母さん、左方向三十キロで降り口を発見しました」


 お母さんは迷宮の壁を破壊しながら降り口に向かった。迷宮の意味ないじゃん。


 下の迷宮に降りたものの生きものはいなかった。ときおり、瘴気しょうきだまりから現れるアンデットと遭遇するだけだった。見つけ次第、フランメルさんがあっさり滅している。


 お母さんはずっとあくびをしながら、迷宮の壁を壊して、最短距離で下への降り口に向かっている。その内迷宮の管理者から修繕費の請求書がくるかもしれないと思う。私は相変わらず使い魔を放って降り口を探すだけ。


 おばあちゃんは、本当にこの迷宮にいるのだろうか? 下層に降りるにつれ瘴気の濃度がどんどん濃くなっている。十五階層にまで降りた。ここは一般の人なら、一時間で動けなくなると思う。動けなくなれば死ぬ。死ねば確実にアンデットになる。


 瘴気には魔粒子が豊富に含まれているので、色々弊害へいがいもあるけれど、理性がなくなるとか。魔女、魔術師は魔粒子を取り込むと常に魔力が満タンになるので、食事をする必要がない。瘴気に満たされた環境って、極めて経済的な環境なのだけど、魔木すら生えない環境ってどうなのよ。マジで殺風景なんだけど……。


 もう嫌だ。元の世界に帰りたい。出来れば魔女学校に戻れないかしら。生涯のお友だちがほしいよ。



 十九階層に到着。


「生きものがいる。人間が五名。エルマだ」


 お母さんは迷宮の壁をいつも通り破壊しながら最短距離でおばあちゃんの元に行く。


「アン、ここは迷宮なんだからちゃんとマッピングしてルートを見つけないといけないのよ。アン、帰りにはちゃんと修理して帰るのよ!」


「お母さん……」そう言うとお母さんがおばあちゃんに抱きついていた。


「フランメル、あなたどうしてここにいるの?」


「迎えにきたよエルマ。元の世界に帰ろう」


「へえ、あなたもそんなキザなセリフが言えるようになったのね。けっこうなことだわ。研究バカを卒業しておめでとう」


「エルマ様を帰すわけには行かない。この世界の命運はエルマ様にかかっているのだから!」と同行している冒険者さんたちが叫んだ。


「エルマ、どう言うことだ」


「この穴を見て」


「げえ、骨だらけ」


「骨の梯子はしごをアンデットが登ってくるので、私が結界を張って防いでいるわけ。普通の結界石だとここの瘴気には耐えられないのよ」


「バカな生涯結界の番人になるつもりか?」


「うん、あなたたちがくるまでは覚悟してたのだけど……、あなたたちがきっとなんとかしてくれると今は思っているの。助けにきてくれて本当にありがとうございます」


 おばあちゃんが人に頭を下げた。すごいものを見た。


「エルマ、お前は休め。結界の維持は私がやる」とフランメルさんが結界の維持を担当する。


 お母さんは穴の中をじっと見つめて「私はこの中には入れない」


「アンは、ダメね。下手するとノーライフキングの他に大魔王が生まれちゃうから」


「アンはノーライフキングとの戦いに備えて魔力を練りなさい」


「ああ、私が、決めるてやる!」お母さんの顔が仕事モードに変わった。

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