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第二十七話 元勇者の帰還その一

「ただ今、戻りました。召喚に関する文書、文献は回収し、扉の間にて保管しました。召喚の間の魔方陣は粉々に破壊しました。問題は色々ありまして、こういう姿になってしまいました」と言いながらローブを脱いだ。


「あらやだ、あなた、聖女になってるじゃないの。その姿で帝都を歩いたら、教会に連行されるわよ」


「ですよね……」


「エルザ、眩しいし、気持ちが悪くなるからもう少し私から離れるか、ローブを着てくれるかなあ」


 私はカミラのお願いに答えて、またローブを着た。女神官のソフィアは私にひざまずいて祈りを捧げてくれている。まあ、こうなるよね。


「おばあちゃん、元の姿になるのにはどうしたら良いの?」


「私にもわからないわ。歴史上初めてのことだもの」


「フランメルは今、リュウ君を元の世界に戻すためのリュウ君と日本との繋がりを探している最中で、自分の研究室にこもっていて出てこないし、相談はしばらくは無理だわ」


「エルザ、悪いのだけど、今のあなたと一緒にいるのは正直言って、私には厳しいので、転移陣で私の部屋に戻るわね。元の姿に戻れなかったら、どこかにお部屋を借りてちょうだい」


 そう言うと、カミラはひつぎを背負って転移してしまった。私を魔王にするのは諦めてお母さんを魔王にするつもりだろう。



「リュウ君とリュウ君が元いた世界が繋がった。リュウ君は帰れる」とフランメルさんが威厳の中にも喜びいっぱいでリビングに入ってきた。


「エルザ、戻っていたのか? はて、なぜフードをかぶり、ローブを着ているのか?」


「エルザ、カミラさんはもういないからローブを脱いで」


「フランメルさん、私、今こういう姿になりました」


「ほう、魔女から聖女になったのか。まあそれも良い」


「良くないです。私は魔女です。この姿で魔女学校には通えません」


「確かに魔女学校ではなく、神学校だな」


「フランメル、エルザを元の姿に戻すことはできないのかしら?」


「人間には不可能!」


 即答ですか。


「迷宮初代管理者のラファエロさんは、この姿でないと吸血鬼の王の前に立てないと言っていました」


「吸血鬼の王を倒したらどうにかしてくれるか、あるいは見なかったことにするかだな」


「吸血鬼の王って、もう寿命が短いって言ってなかった?」


「カミラは十年は大丈夫って言ってたよ。それでおばあちゃんとフランメルさんについて新事実です」


「ラファエロさんは、吸血鬼の王が知り合いにお願いして、サバトでおばあちゃんの精神に干渉させて、お母さんを産ませたって言っていたわ」


「エルザ、吸血鬼の王を今から倒しに行こう。絶対許さん!」


 フランメルさんが激高している。


「フランメルさん、その前にリュウ君を元の世界に帰してから、吸血鬼の王を倒しましょうね」


「そうだな。優先順位はそっちの方が高いな、仕方ない」


「エルマはどうする。私とエルザがいれば魔力量に問題はないが」


「私たちはまだ新婚旅行がまだなのよね」


「そうだった。第一回の新婚旅行の行き先はリュウ君の世界にしよう」


 何その言い方、第二回の新婚旅行もあるって言うことなの?


 女神官のソフィアちゃんが羨ましいそうにフランメルさんとおばあちゃんを見つめている。リュウ君はまだ半信半疑に見える。へえ、意外に慎重な性格なんだ。



 扉の間に、フランメルさん、おばあちゃん、リュウ君、女神官のソフィアちゃん、そして私が立っている。フランメルさんは、カミラが描いた絵を抱えて、その絵と実際の山、塔、乗り物と繋げたので、自然と、その扉の前に、私たちは立つはずだ。ただし、それが日本のどこかだかはわからない。もしかすると海の上かもしれないので、心してほしいとフランメルさんから言われた。


 先頭はフランメルさん、リュウ君、その後ろにおばあちゃん、その後ろはソフィアちゃん、最後が私の順番で扉の中に入った。


「ここは東京駅だ」とリュウ君が小さな声でつぶやいた。後は涙声で何を言っているのかはわからなかった。20××年×月×日と書いた新聞が売っていた。


「俺があっちの世界に行っている間に三年が経っている。はあーー」とリュウ君が泣き止むとポツリとこぼしていた。


「ええ、皆さんありがとうございます。ここは日本の東京という所です。俺は自分の家のある冬津市に行こうと思います。問題は、俺たち文無しってことです」


「リュウ君、金が売れるって言ってなかった?」とソフィアちゃんが言う。


「私、金貨を一枚持っているけど」


「あっ俺も金貨を持っている。買取り店を探したいので皆さん歩いてもらって良いですか。」


「私の使い魔のコウモリを放ちましょうか?」


「絶対ダメです。日本では魔法禁止です」


「そうなんだ。まあ郷に入っては郷に従えだから。そうするわ」


 金貨が売れて私たちは一万四千円の現金を得た。だけど、これって材質は紙なんだけれど、良いのかしら?


 私たちは、切符を買って、ちょっとしたトラブルもあったけれど、電車に乗って冬津市に到着した。


「この街には魔術師がいる気配がする」


「確かに、途中の街よりも魔力を得やすいわね。フランメル。注意した方が良いわね」


 私もこの街は私たちの世界に近いと感じた。


「さて、ソフィアちゃんの家探しだ」


「えっ、フランメルさん、私はリュウ君の家に……」


「俺の家、狭いからソフィアの部屋が用意できないし、ソフィアは十四歳だから、学校に行かないとだしさ」


「俺とフランメルさんで、ソフィアをどうするのかって話し合った結果。もっとも俺の家族がまだここに住んでいるかが問題だけどさ。三十五年ローンだから、その家に今も住んでいるとは思うけど」


「でしたら、リュウ君の家があるかどうかを確認してから、私の家探しだと思います」


「教会がこの近くにあるので、私は、そこをソフィアちゃんの家にしようと思っている」


「フランメルさん、使い魔で探していたでしょう」


「ズルは良くないなあ」


 フランメルさんが苦笑にがわらいしていた。

間もなく、最終話です。もし面白ければ評価、ブックマークを。励みになります。

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