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第二十話 カミラ騎士団

 葬儀屋からひつぎが約束通り届いて以来カミラはご機嫌だ。


「エルザのお母様は本当に趣味が良いわ」となどと褒めてくれる。



 鬱陶うっとうしい。とっても鬱陶しい。私の隣にカミラがいる。それは良いのだけど、カミラの後ろに三十人ほどの魔術師見習いがくっついている。彼らは自分たちをカミラ騎士団と呼んでいる。


 カミラの前に水溜りがあった時、騎士団の一人がその水溜りの上におおいかぶさり、「カミラ様、どうぞお渡りください」という。カミラはその魔術師見習いを踏みつけながら、何事もなく歩いている。


 カミラに踏みつけられる男の子は恍惚こうこつの表情を浮かべ、他の男の子は羨ましいそうにしている。この変態集団が、私たちが学校内にいる間ずっとついてくる。


 カミラ騎士団は、私をカミラを汚染するゴミか何かの扱いをするので嫌になる。最初はカミラ騎士団はカミラの周囲を取り巻き何者も寄せ付けないようにしていたが、カミラが一喝して、カミラの後ろをついてくるようになったのだ。


 レイモンドもこの状態では私に近づくことができない。カミラの許可なく近寄る者はカミラ騎士団によって排除されるから


 実技、地面に腹ばいになって進む訓練では、日陰でカミラは見学になる。で、カミラ騎士団の中から代理が出てくる。代理が決まるまで殴り合いが続く。お前ら、自分の授業は良いのかって感じだ。


 実技訓練中やっとレイモンドに話しかけることができた。カミラの歓迎会には当然レイモンドは欠席していたから。


「レイモンド、ちょっとレイモンド、何で逃げるのよ」


「エルザ、一昨日おとといカミラ騎士団の奴にエルザに近寄るなって言われたんだ。アイツら主人に言われる前に行動するから、これはカミラ王女の意志のはず。僕はずっと強烈な殺意にさらされているのを感じるよ」


「大丈夫よ、カミラにはレイモンドに何かあれば絶交するって言ってあるから」


「ありがとう。命だけは大丈夫そうだ」


 私たちは腹ばいになって前に進みながら会話している。私も感じる、カミラの殺意を。彼女は私たちが会話しているのを見ている、たぶん聞いているはず。面倒くさいなあ。



「カミラ、あなたの騎士団がレイモンドを脅したそうね。ちゃんと管理してくれるかな」


「わかった。今日中に始末しておくので、許してね」


「始末しなくて良いから、カミラ気にならないのアイツらのこと」


「私はエルザとエルザのお母様以外、レイモンドは始末したいけど、それ以外は目に入らないから」


「レイモンドの始末は絶対にダメよ。行方不明ゆくえふめいもダメだからね」


「レイモンドを傀儡くぐつにしようかしら」


「傀儡もダメ。手出し無用よ」


「そこまで言われると、さらに始末したくなる……」


「ともかく、半年足らずで魔女学校に編入なの。もうレイモンドには私は会わないから。わかった!」


「そうね、半年足らずで魔女学校だよね。楽しみだわ。引っ越す時、ここの連中全員始末してスッキリして魔女学校に行きたいかも」


「……」


 カミラは人間ではなかった。私、カミラと同室で大丈夫なのだろうか? 気付いたらみんな始末しちゃえって考えてそうで怖くなった。カミラが得意なことは人の精神を操ること。彼女の本領は傀儡師くぐつしだったりするから、心に隙があると、精神を支配されてしまう。



 おばあちゃんから伝書フクロウが手紙を届けてくれた。おばあちゃんはフランメルさんと結婚して、今は帝国で暮らしている。


 未だに帝国と共和国は戦争中なのだが、新婚休暇制度をフランメルさんが制定したようで、一年間の休暇を帝国からもらった? もぎ取ったのだろう。その間にリュウ君を日本という国に返す研究をするらしい。


 手掛かりが乏しいようで、一度私に極秘で帝国にきてほしいと書いてあった。私もリュウ君とは、あのポンコツ神官が邪魔をしたせいで、あまり話せなかったので持っている情報は少ない。


 女神官のソフィアちゃんは恋する乙女になっているので、その話がどこまで正しい話なのか、よくわからないそうだ。


「カミラ、私ね、極秘任務でしばらくいないけど、一人で頑張ってね」と言った瞬間カミラは荷造りを始めた。


「カミラ、あのう私、極秘任務なのよ」


「私はエルザの主ではなく助手としてついて行くわね」カミラ、いつからあなたは、私の主になったのよ?


「カミラ、私はこの学校では厄介者だからいなくても、周囲が喜ぶことはあっても気にかける人はいないから」ただし、レイモンドは除く、これを言うと、たぶんレイモンドはカミラに今日中に始末されるので言わない。


「でも、カミラは、お客様待遇なわけで……」


「心配なくてよ。ここの連中隙だらけだからいくらでも記憶操作ができるので問題ない。私は病気になったことにするから、見舞いにくればベッドで横たわる私が見えようにしておくわ」


「幻影魔法?」


「似ているけれど少し違うかな。その人間がが想像している私の姿が見える、重症だと思っている人には、私は重症に見えるの。軽症だと思っている人には私は軽症に見えるのよ」


「あなた、帝国に行くのでしょう? 私も行く。残されたら絶対、私は大荒れするからね」


「お母さんは、おばあちゃんのとこにはこないよ」


「エルザのお母様が大魔王様にお成りになればそう言う小さな悩みは消えるのだけどね」


「それ、お母さんに言ったっらドラゴンを殺したナイフでカミラ、バラバラにされると思うわ」


「ワクワクするけど、大魔王様の不興は買いたくないなあ」


「エルザ、仕込みをしないといけないので、三日ほど猶予ゆうよをくれるかな。


「わかったわ。四日後に魔術師学校を出発するって、おばあちゃんに手紙を書いて送っておくわ」

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