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第十七話 魔王城での茶番劇

 勇者一行はようやく三十階層に到着した。ミカエルさんより魔王城に入ったらローブを脱ぐようにと言ってきた。ミカエルさんが単に助平なだけではないかと私は疑っている。


 魔王城にはカミラ王女しかいないし、吸血鬼の皆さんには見学のみって言ってあるはずなのだが……。


「何で?」


「ワタクシハ、吸血鬼伯爵。お前たちのような下等生物に名乗る名はない」


 吸血鬼伯爵と名乗る男が勇者一行の前に立った。殺気に満ちている。まだ魔王城に入っていないのに。神官が「ホーリーライト!」と叫んだ。


 吸血鬼伯爵は不思議そうな顔をしている。神官から表情が抜けていた。


「魔女、私を守れ!」


 無視。


 吸血鬼伯爵の眷属けんぞくに囲まれた。地獄の犬、多数のコウモリに襲われるも、私の結界ですべて弾く。勇者君は腰を抜かして地面にへたりこんでしまった。もう……。


「剣士、弓使い、勇者を抱えて魔王城の中に」と私は指示を出した。たぶん、カミラ王女のいる魔王城が一番安全だと私は判断した。


 女神官と神官は勇者たちの後に続いた。


「魔女さんよ、戦士は必要かい?」


「大丈夫だ。この程度の雑魚すぐにほふって後から行く」


 戦士が魔王城に入ったのを見て、私は結界を解いた。


「ほう、やっと死ぬ気になったかあ」


「あなたね、カミラ王女の部下ですよね。何で勇者を襲撃してるんですか? 王女から見学のみって命令が出てるはずなんですけど!」


「カミラだと、あんな下賎の部下になった覚えはないわい」


「ということはゴールの軍団と一緒にいた反乱軍の方ですか?」


「問答無用、眷属たちよあの女を喰い殺せ!」


 伯爵の眷属は一頭残らず固まっている。


「伯爵、この邪気を覚えていますか?」


 お母さんが放っていた邪気を私の周囲に漂わせた。


「お前は、あの化け物の眷属か?」


 吸血鬼から化け物呼ばわりされるのは我慢ならない。伯爵はすでに逃げの態勢に入っていた。


「移動」


 私は伯爵の胸にお母さんの短剣を突き立てた。ドラゴンさえもほふる短剣を。伯爵は瞬時に灰になって崩れさった。


「ご見学中の吸血鬼の皆様、私の邪魔をするとこうなります。くれぐれもカミラ王女の命令を守るようにお願いしますね」


 何とはなく、そうしますという空気が流れてきた。伯爵の眷属はなぜか私の使い魔になってしまい、どうしても離れてくれない。まあ、良いけど。食費はかからないから。



 魔王城に入ったので、フードを脱いでビキニアーマ姿になった。何が伝統だよって言いたい。これって羞恥しゅうちプレイ以外の何ものでもないよ。


「もう少し胸があると良かったんだけど」って声がかすかに聞こえた。滅してやる。絶対にこの世から消してやる!


 魔王の間から剣の音が聞こえる。何でえーー?


 魔王の間に入ると、剣を持ったオーガ《人喰い鬼》が優雅に演武を舞っている。勇者たちはすでに体力の限界のように見えた。


「カミラ王女、どこですか?」と念を送ると。


「私はあなたの目の前で演武を舞っていますけど」


「なぜ、オーガの姿なんですか?」


「古文書によると前回魔王はオーガに転生したらしいの、それで伝統を重んじてオーガの姿になってみました」


「エルザはビキニアーマ姿になってもエロさゼロね」


「うるさい。黙れ!」


「おお怖いこと」


「勇者、仮死化作戦は、もう勇者たちはヘロヘロなんですけど」


「演武まだ終わってないのだけれど」


「勇者たち、もう動けないから、勇者を仮死状態にして」


「はーーい」


「デース」とオーガが唱えると、勇者がばたりと倒れた。


 女神官が必死でヒールをかけている。神官はカミラ王女にボコられて意識を失っていた。剣士、戦士、弓使いが勇者の周りに集まった。


 私はオーガの相手をしている。


「魔女、勇者が死んだ、どうなっている?」


「説明は後だ。ともかく早く聖剣、武具を勇者から遠ざけろ、脱がせろ!」


 勇者から、聖剣や防具が外れれば作戦成功なのだけど、なんか困っているみたい。


「魔女、兜が脱げないぞ!」


「カミラ、兜が脱げないって言ってるよ」


「エルザって電撃が撃てるよね」


「うん、撃てるよ」


「兜が脱げたら即、勇者の胸に電撃ね。タイミングを外すと、勇者死ぬからね」


「ええーー」


「魔女、兜が脱げた。聖剣が、武具が、盾が飛んでいく」


「みんな、勇者から離れてでないと勇者が死ぬ」


 みんなが離れたが、まだ、女神官がぐずぐずしている。


「女神官離れろ!」


 私は電撃を勇者の胸に撃ち込んだ。


「女神官、すぐにヒールだ。繰り返しヒール」


「おお、心臓が動き出した。勇者が生き返った」と戦士が叫んだ。


 茶番劇終了。


「エルザ、ほんじゃ私、消えるね」


「ありがとう。カミラ王女」


「エルザ、これからはカミラで良いよ。あなたの家でお世話になる身だからね。よろしくね」


「魔王がいなくなると、城が崩れる。すぐに勇者を連れて城から出ろ」と言いつつ城が崩れる幻術をみんなにかけた。


 すみません。ボコられて意識のない神官が残ってますけど。これは私が担当なの! キモイよう。

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