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第十一話 ドラゴンの軍師

「隊長、人間の少女の形をした何かがこちらにやってきています」


「隊長、ドラゴンの里より緊急連絡です。突如とつじょアンデットの大軍がドラゴン支配領域に出現。各地の駐屯部隊は速やかに里に戻るようにとのことです」


「わかった。撤退準備」


「隊長、近づいてくるのはアンデットと人間らしき者。人間らしき者は白旗を持っています」


「近づいてくる者を敵とみなす。ブレス三連射」



「ほら、あなた目掛けてブレスがきたわよ」


「カミラさん、衝撃に耐えてください」


「……」


 結界に角度をつけた。上手くいけばブレスを弾くはず。


「隊長、ブレスが弾かれました。迷宮を破壊しました」


「ブレスを撃つな! 迷宮を破壊する行為は契約違反になる……。私と副官以外は全員撤収せよ」


「了解」



「わちゃああ、迷宮を壊しちゃったよ。管理者から損害賠償請求がきちゃう。いくらかな十万リンギくらいかなあ。ドラゴンと半々。できれば全額ドラゴンに押し付けられないかなあ。ドケチのドラゴンは一リンギも出さないかも……」


 ええーーーー。迷宮の天井が少し壊れただけで十万リンギ、迷宮の壁を壊しまくったお母さんに天文学的な額の請求書がくるかもしれない。早くここから逃げないとダメだ。


「あら、ブレスを撃ってこないね。やはり迷宮を壊すのはドラゴンもマズいと思ったわけね」


「後は、こちらは何もしていないのにブレスを撃ってきた。ドラゴンがすべて悪いことにしないとね。私たちは戦う意志はないって言う意思表示をしながらきたのだから。そういう線で話しをつけようね。エルザ」


「お母さん、どうしよう」


「お母さんがどうしたの?」


「こっちの話し。私としては平和的にここを通してもらえれば良いのです。どのみち十万リンギの賠償では済まないし……」


「ごめん、意味不明なんですけど、エルザ」



「軍師殿、里を離れてよろしいのですか?」


「問題ない。今くる二人をこちら側につければ、勝てる」


「軍師殿、一人はアンデットでもう一人は正体不明ですが」


「問題ない。隊長友好的に交渉してほしい。迷宮が壊れた責任はすべて我々にあると即座に認めてもらいたい。責任はすべて私が取るので、よろしく頼む」


「軍師殿がそうおっしゃるなら、そうしますが……」


 カミラが土塁に穴をあけて中に入ると、三人の人? がいた。二人は軍服姿で一人は黒のフードを頭からすっぽりかぶっていた。


「初めまして、私はエルザと申します。魔女見習いをしています」


「私は吸血鬼をやっているカミラです」


「私はここで隊長をしているドラコだ。こっちは副官のアブラミだ」


「隊長、私はアブミラです」


「失礼した。副官のアブミラだ。で、こちらは……」


「私は軍師と呼ばれている。すまなかった。私がここにくるのが遅れたために迷惑をかけた。許してほしい」


「いえ、私たちは無事ですし、ただ、迷宮が壊れたのが……」


「管理者には我々が壊したと報告するので、二人が心配することはない」


「えっ、ドラコ隊長本当ですか?」


「本当です。カミラ王女」


 カミラさんが軍師を睨みつけた。で、ため息をついた。


「あなた、ドラゴンのところにいるの。よく入れたわね」


「管理者の依頼ですから、ドラゴンのおさも断れないです」


「ゴールのバカがドラゴンの支配領域に侵攻しました」


「あら、もう吸血鬼の王国は滅んだの」


「いえ、ゴールは転移で軍団を送り込んだようです」


「そうなの。うちは最後に回してもらったのかしら。それともすでに支配されているのかしら?」


「さあ、私は今はドラゴンたちの軍師なので、詳しいことは分かりません」


「カミラ王女、我々はゴールの軍団を消滅させるために一時戻ります。それが終わればまた各階層にドラゴンの守備隊を置く予定です」


「有益な情報ありがとうね。軍師様」


 軍師たちは転移陣に乗ると転移陣ごと消えた。




「カミラ王女様?」


「今は旅の同行者なの。カミラって呼んで」


「カミラ、あなたが養子なのね」


「まあね、周囲は認めていないけれど。私は国王陛下がどこからか連れて来た子だから、身分制の厳しい吸血鬼社会では、国王が世継ぎにするって宣言しても認めないの。実力で従えないとだけど、ゴールという化け物のことを考えると、どうでも良いかって思うのよ」


「カミラ、どうしてあの軍師はあなたのこと知っていたの?」


「あれは私の元教育係で国王陛下の政策顧問だった。そう言えば奴の名前は知らないなあ。ずっと教育係って呼んでいたわ」


「あれが、最初にゴールの脅威に気づいて吸血鬼の全軍をもって討伐すべしって言っていたのよ。まあ誰も信じなかったけどね。エルダーリッチごときに全軍で討伐なんて吸血鬼の名折れだもの」


「ゴール討伐がまったく進まないから、あれはいつの間にか姿を消した。それがどうだろう、今では、あれは、ゴールが吸血鬼社会に送り込んだスパイだと言われているのよ」


「変ね。自分の主人を討伐すべしってスパイが言うはずないじゃない」


「悪いことは全部アイツのせいにしただけ。今ではかなりの貴族がゴールに寝返っているのよ。吸血鬼の誇りはどこにいったのかだわ。本当に情け無いこと」


「エルザ、契約通り三十階層までは案内する。ただ、吸血鬼はルールとしてアンデットに初撃を加えることができないの。ちょっとした例外はあるけど。これは古来からのお約束なのね。まあ別に破ってもお咎めはないけど。一応私は約束は守りたいわけで。初撃はエルザに任せるわ」


「私がカミラのボディーガードになるの?」


「あ、それそれ、これでも吸血鬼王国の次期女王なのだから」


「名ばかり女王様」


「黙れ、真実は心に刺さる。私に心があればだけど……」


「承知しました。契約完了です」


「そうか、だったら私たちを囲んでいるアンデットの部隊を殲滅<せんめつ>せよ」


「了解です」

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