99プレゼント選びも難しい
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「風が気持ちいいね〜」
ディオはそう言ってゆっくりと海沿いを歩いていく。
起きてすぐに街を見たいと言い出したディオに付き合う形での散策だが、シドはすでにそう言うだろうと予測があったようですぐにシドの許可は降りた。
初めて海を見るアルドは見慣れない見渡す限りの海に驚いている。こんなに大きな水溜まりがあるのだと。
海を眺めてディオたちと距離が離れたアルドは慌てて追いつくとディオの隣に立って歩き始める。怪我は完全に治っていると分かっていても、なんとなくアルドはディオの隣に位置取っている。
ただいつもよりアルドは無口だが。
「ディオ様、お店の方見てみたい」
「そろそろ行ってみよっか」
貿易が盛んな港町だけ舶来品が多く、それらを見るのが待ちきれないフランがディオを急かす。ディオも見に行くつもりだったので向かうことにする。
店に並ぶのはこの国では見慣れないものも多く、見慣れた町の風景でありながらどこか異国にいるように感じてしまう。フランだけでなくシドやトリスも珍しいものを前に興味深げだった。
「アルド。父様とアル兄のプレゼント何がいいと思う?もうすぐ誕生日なんだよね」
「……それはシドの方が分かるんじゃない」
「いや、そうもいかなくてな」
ディオが聞いてくるが祝ってもらった経験がなさすぎていまいち何を贈るべきかなどアルドには分からない。まして、相手が王族ともなればアルドには想像つかない。
それでもディオたちなら付き合いがある分、喜びそうなものもわかるのだが。例えばトリスなら実用品とか。
「シドは外さないから助かるけど、仕事的になっちゃうから。かと言って奇を衒えばいいってものでもないし、相談相手がいないんだよね」
「あー」
トリスもシドと同じような結論を出すだろうし、かと言ってフランだとおかしなものを候補に出しそうだ。ディオからすると自分の求める相談ができる相手がいないらしい。妖精も自分の興味で物言うために力になるかは疑わしいとか。
それでも今年はシドも考えていたようでディオに提案をする。一家団欒ができるようなものがいいのではないかと。
去年はプレゼントだけ贈って家に帰らなかったこともあるがディオのことの事情を知る人たちからすれば、ディオの元気な姿が見られるだけで十分すぎるほどのプレゼントになる。
だからこそ、ディオが家族と過ごす時間を増やせるようなものをシドは考えた。もちろんディオにはそこまで言わないが。
シドからの提案の意味はディオも理解はできる。家に帰って散々言われたことであって分かってはいるのだ。
「それは、そうなんだけど……」
「だけど?」
「しばらく離れてみると妙に照れくさくなっちゃってさ」
そう言ってディオは笑った。
ずっと当たり前だった距離感は変わらず意心地はいいのだが、自分から誘うことがなんとなく照れくさいらしい。きっといつも出迎える立場でしかなかったからだ。
「そんなことしなくても大体ディオ様のとこに集まるけどね」
「言えてるな」
「うー、水ささないでよ」
恥ずかしいのか小さく唸ったディオは息を吐いてからプレゼント探しを再開する。
散々悩んでディオは父親であるブルーノにはティーカップを、城を出る数日前イアンとレベッカの争いに巻き込まれてティーカップが割れたとグレアムから聞いていたので。
アルフレッドにはガラスペンにした。なんとなくアルフレッドが気に入りそうだと思ったらしい。
それから翌日、取り引き先の店からいくつかの茶葉を買っていた。ディオ曰く母様が好きそうだからとのことだ。
シドとトリスの圧力に負けたわけじゃない、たぶん。
放っておいてもディオ様のところにみんな集まるんだけどね。特にジーク様とか。




