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86 リサの帰還と使用人たちについて

お読みくださりありがとうございます!

 ディオは大きく伸びをしながら、窓の外を眺めていた。


 視線の先にはリサの帰りを待ち、張り切る庭師のトムとその息子のディランの姿があった。


 その光景にリサやカトリーヌがどれほど使用人たちに慕われていたのかが分かり、ディオは笑みを浮かべる。


 フラヴィオによって疎遠になっていた領民たちとも、彼女たちなら再び良好な関係を紡げるだろうと思うとディオにとっても嬉しいことだ。

 それにこういった事態を早期発見もしやすくなる。


 ただ、ディオにとっては後悔もある。

 自分が常に妖精から話を聞いていたならもっと早く気がつくことも出来たのではないかと思ってしまうからだ。

 未然にだって防げたかもかもしれないと思えば、後悔にだってなってしまう。


 しかしディオは今悩むべきことではないと首を横に振って切り替えると、アルドとともに部屋の飾り付けの監督をする。


 使用人たちからはアルド(ガキ)に監督されることへの不満はあったようだが、楽な仕事で給金が貰えるならとそれ以上の不満が上がることはなかった。


 威厳の問題もあって最重要だと位置付けられている飾り付け(この場)の指示出しをするディオは、忙しく屋敷の中を走り回るシドを目で追ってみる。


 あまり動けないディオの代わりに動くのはシドなので忙しいのは当たり前といえばそうなのだが、今日はリサの帰還と同時にグレイ伯爵だったフラヴィオ、ベアトリーチェ、シーダの引き渡しなどもあるために仕事量は想像以上に多い。


 トリスはやっと帰ってくる母リサを出迎えるためにおめかしするカトリーヌについていて、トリスだけでは不安が残るためにフランもそこにいる。


 昼食を食べ終わるとカトリーヌはずっと玄関先でリサの帰りを待っていて、それを微笑ましく見ながらディオもすぐ近くで壁に寄りかかりながら一緒に待っていた。

 アルドは使用人たちの見張りに残してきたので今はトリスがついている。


 やがて、来客を告げるベルが鳴りリサが帰ってくる。


「お帰りなさい、お母様‼︎」

「ただいま、カトリー」


 リサの姿見えた瞬間にカトリーは駆け出してリサに抱きつき、リサもしっかりと抱き返す。


 親子の感動の再会にトリスは柔らかな笑みを浮かべていたが、ディオは待つ間に眠ってしまっていたようで、トリスはディオを背負うとゆっくりと話が出来るようにカトリーヌたちと一緒にリビングまで移動を開始する。


 ディオについては少々苦しい言い訳になってしまうが、リサやカトリーヌのことを思いなかなか寝付けずに夜更かししていたために言うことにしておく。


 トリスとすれ違うように玄関にやってきたのはシドで、彼はリサの護衛としてやってきた騎士たちに声をかける。


 彼らはフラヴィオたちは引き取りも兼ねてやってきている。


「護衛、お疲れ様です。フラヴィオ・グレイ、ベアトリーチェ・レスター、シーダ・グレイの3名の他、使用人5名は横領、窃盗がありましたので全員軟禁しています」

「助かるよ、シド。あとはこちらの出番だな」


 軟禁場所へと案内していると騎士のリーダーがシドに声をかける。


「シーダ・グレイというのは確かか?」

「クラウディオ様の見立てでは、ですが確認をとるようにとのことです」


 シドの返答にリーダーは短く返事をすると、何をいう訳でもなくその話題については終える。

 真実を明らかにするばかりが正しい訳でもないのだ。


 それよりも気にかかることがある。


「そうか、わかった。無理はなさっていないんだな」

「はい。今は新入り(いい見張り)がいますから」


 ディオを昔から知っている騎士からすると、時に平然と無茶をするディオのことが心配なのだ。

 シドの言葉に安心をした騎士はそれならいいがといい、フラヴィオたちの連行を始める。


 騎士たちと別れたシドはアルドのところへと向かう。

 トリスの方はおそらくフランが助太刀に行っているはずなので問題ないだろう。


「だからっ、おれは何も知らない!」


 アルドがいるはずの部屋に近づくと、アルドの大きな声が聞こえた。

 大きな声を出すことが滅多にアルドだけに、声が聞こえた瞬間シドは歩を早める。


 緊急事態用に持たせた道具から連絡はなかったので無事だとは思うが、非力な子供なのでそこらへんではディオよりも心配だ。


 部屋に向かえば、アルド(子供)使用人(大人)が追いすがる光景が広がっていて、アルドはシドが来たことが分かるとすぐに助けを求めて飛びついた。


 アルドと使用人たちの間に割って入ったシドは、この状況について把握をするために話を聞き、わずかに眉間にシワを寄せた。


 フラヴィオたちが連行され、自分たちも捕まるのではないかとか、この屋敷をいきなり追い出されるのではないかという恐怖からディオに仕えるアルドにどうにかしてもらおうとしていたらしい。


 この騒ぎに納得をしたシドはすぅと息を吸い込んだ。


「この件に関しては第三王子であるクラウディオ様が任されているため、私たちがどうにか出来る問題ではない」


 シドやアルドにごまをすろうとした使用人がいたが、シドはそれは無意味だとハッキリと伝え、ついでと脅しもかけておく。


「クラウディオ様は千里を見通す力をお持ち故、全てお分かりになる。――信じるかは自由だが」


 実際はそんな力はないのだけど、それを隠す常套句をシドは伝えるとアルドを連れて部屋を出た。


 ディオは彼らの就職口も用意しているらしいので、これも少しはその振り分けの一助になるだろう。


 ディオがいるはずの部屋に向かえば、リサとカトリーヌが楽しげに会話を楽しんでいで、数年ぶりだけに会話が弾んでいるようだ。


 そのすぐそばではダニエルがディオを叩き起こしていて、ナサニエルは戸惑うようにしながらも止めることはしなかった。

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