71 優秀な使用人
お読みくださりありがとうございます!
グレイ伯爵家から帰ってきたエルザは大層ご立腹だった。
何しろ可愛い妹分を追い出して愛人を家にあげて、その上で娘を虐げて使用人として扱っていたのだから仕方がない。
ご立腹のエルザはグレイ伯爵家での出来事の説明を全て公爵夫婦に任せて、怒りを吐き出すように大きく息を吐いた。
アルフレッドとジークベルトはそんなエルザを宥めている。
苦笑をした公爵は、グレイ伯爵家で起きたことについてをゆっくりと話し始めた。
「兄上、ご報告します――」
「やはり、縁談どころではなくなったか」
報告を聞いていたブルーノはある程度予想していたこともあり、驚きこそしなかったが笑っていた。
そのそばで一緒に報告を聞いていたディオはなんとも言えない表情をしていた。
白を切り通そうとしていたグレイ伯爵の振る舞いや、庭師のおそらく覚悟を決めての行動に嬉しさがありごちゃまぜの感情だ。
「あの時は急に老け込んだのに」
ディオがのんびりとそうこぼした。
急に身分を隠した王子がやってきて、隠しておきたいカトリーヌを連れ出そうとしていればそういうこともあるだろう。
しかし、断られずにカトリーヌを連れ出せたのは――。
「それだけディオが侮られてたんだろ。噂だけを鵜呑みにしてな」
「あはは、王家の恥だもんね」
決して優秀だと言われることのない世間のディオへの評価をグレイ伯爵も信じ切っていたのだろう。
そして、断れば何が起こるが分からない恐怖心から、断ることはしなかったのだ。
まして、悪評ばかりともなれば必要もない勘ぐりをしてもおかしくはない。
王家の恥だと呑気に言うディオは、自分の立場を受け入れて朗らかに笑う。
周囲にいる人間だって、ディオを堂々と表に出さないことは分かっていて悪評もほぼ放置しなければいけないと理解はしているが、やはり耳に入れば腹立たしくなる。
「――信用に足る者なのか」
庭師についてブルーノが尋ねる。
ディオたちから聞いているとはいえ、形式的は問いかけはこの場で必要なものだ。
「はい、こちらを」
大きく頷いた公爵はブルーノにグレイ伯爵家から持ち帰った宝石を差し出す。これはディオの報告でも聞いていないため、公爵が持ち帰ったものだ。
色とりどりの宝石が、決して普通の石ではないことをブルーノは一目ですぐに感じ取った。
「……妖精石か」
グレイ伯爵家には妖精がいるとは聞いていたが、妖精石が出てきたことでブルーノ、アルフレッド、ジークベルトは驚きを隠せない。
妖精石が出てきたことで全員の視線がディオに集まる。
内部に詳しいディオが知らなかったことへの疑問も込めて。
「あれ、言ってなかったっけ?」
「聞いてないぞ。シド、どういうことだ」
ディオはとぼけたような反応をして、アルフレッドはシドに尋ねる。
途中で寝てしまったりすることもあり、基本的には報告説明をするのはシドの役目であり、ディオの反応から妖精石のことは知っていたようだが報告は受けていない。
「クラウディオ様からの許可を得ておりませんでしたので」
「そういうところだけ真面目にしやがって」
しれっとシドが答えて、ジークベルトが突っ込む。
妖精石は気軽に話す内容ではないのは確かではあるが、ディオ自身ある程度シドの裁量に任せているので話すこと自体に大きな問題はないのである。
だが、それをしなかったあたりにシドの忠誠心を感じたブルーノは満足そうに笑った。
だからこそシドにディオを任せたことは正解だったと。
「専門家の言葉があれば疑うものもいないだろう」
「分かりました」
ブルーノは妖精石をフランにに渡してそう言って、受け取ったフランはわずかに嫌そうな顔してため息を吐く。
アルドだけはその意味が理解できず不思議そうな顔をしていて、行けば分かると誰かの声がした。




