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68リサへの説明

お読みくださりありがとうございます!

 リサを連れて先ほどの一番近い村まで戻ったディオたちは、まず商人スタイルの服装に着替えた。


 外套を着て一旦誤魔化したが、正装(あれ)ではあまりにも目立ちすぎる。

 ディオが妖精の力を借りたとしてもあの姿では誤魔化すのはかなりの高難度と言えるだろう。


 リサの姿を見たディオは、彼女がカトリーヌの母リサだとすぐに分かったらしい。


 まだディオが幼い頃に母であるエルザが時折会って楽しそうにしていた。

 うろ覚えであったけれど記憶の中のリサの姿とぴったりと重なった。妖精に愛される感じがどこか懐かしい。


「お待たせしました。それで、オレたちは王妃エルザからの使いとしてリサさんを迎えに来たんだ」

「……エルザ様が」


 リサは小さく呟いた。

 疑うわけではないが、いくら個人的に親しくさせて頂いているとはいえ王妃が直々が動くとリサは思っていなかった。

 しかし、エルザたち家族から一番愛されている第三王子クラウディオの迎えとくれば信じざるを得ない。


「母様のことよりも、まずはグレイ伯爵家について話すね」

「お願いします」


 エルザの起こした行動よりも、家のことが早く知りたいだろうとディオはグレイ伯爵家の現状の説明を始める。


 ベアトリーチェと言う女性が娘を連れて我が物顔で振舞っていること、その彼女たちがカトリーヌを使用人のように扱っていることや、以前いた使用人は庭師を除いて残っていないことなど――。


 リサに知りたいことを尋ねながら出来るだけ事細かにディオたちはグレイ伯爵家のことについてリサに教えた。


「まぁ、そうなの。カトリー(あの子)に何もなければずっとここにいたって構わないと思っていたけれど――」


 ディオたちから話を聞いたリサは悲しみに目を伏せた後、唇を噛み静かで重い怒りを抱いていた。

 それは愛する我が子が置かれた辛い環境への悲しみと、我が子を蔑ろされている母親の強い怒りで、ここにいない誰かへ飛ばしている。


「やっぱり、ダメだったのね」


 リサは初めから分かっていたかのように寂しげに呟いて笑って、切り替えるようにディオたちに明るい顔を見せる。


「今だけはこの再会を喜ばせてちょうだい」


 そう言って笑うリサにディオが気遣いの声をかければ、リサはこの地で軟禁(静養)してからすこぶる体調がいいのだ言う。

 いくら体調が良くても精神面では健康とは言えなかったようだが。


 なにせ家の使用人宛に手紙を送っても一切返事がないのだ。彼らがいるならカトリーヌのことも大して心配せずにいれたのにとリサは言って、それからディオに助けに来てくれたことの礼を言った。


 ディオはそれに対して無事で良かったと返した。


 話もひと段落ついて、リサはそれにしてもと呟いた。


「みなさん、大きくなられて」

「そう?」

「えぇ、クラウディオ様は大人っぽくなられて」


 幼い頃のディオの印象しかないリサからすると成人したというディオは随分と大人になったと感じる。


「本当?シドたちも」

「はい。シド君はとてもしっかり者になったのね。みんなのまとめ役かしら」


 そして、シドたちのこともリサは知っている。

 こうして対面することこそなかったが、一方的であれば噂やエルザから話は聞いたことがあるし、遠巻きに姿を見ることもあった。

 元々、シドもトリスもフランも有名なのだ。


「今はリーダーをさせてもらってます」


 元々しっかり者のシドだが、使用人たちをまとめる立場になったからか今まで顔つきが変わったように思う。


「トリスちゃんはますます美人さんになって、フラン君は可愛くなったわ」

「ありがとうございます」

「ありがとうございます――って、喜んでいいのかな」


 素直に礼をいうトリスと違い、フランは一瞬ためらった後で容姿を褒められたことに礼を言った。

 格好いいと言われるのには違和感もあるし、何より可愛いと言われて満更でもないのだ。


 カトリーヌと重ねて見ているのか優しい瞳でアルドを見つめるリサは、アルドは将来有望なのねと言い、褒められ慣れてないため戸惑うアルドの隣でディオが自慢げにしてリサはクスクスと可笑しそうに笑っていた。


「それで、これからのことなんだけど」


 ディオの言葉を引き継ぎ、シドが説明を始める。


「これはエルザ様からのご提案なのですが、伯爵家に帰らず城に滞在して頂きたいとのことです」


 そうすればカトリーヌにはすぐに会いに行けないことも伝えておく。


「理由を聞いてもいいかしら」

「はい、ご説明します」


 シドは僅かにだけ言いにくそうにして、すぐに意を決して口にする。

 あまり妻であるリサに聞かせる話ではないだろうから。


「エルザ様が簡単に終わらせるわけにはいかないと、ダメージを与えるのならしっかりと与えたいと言われまして」

「そう、ね。すぐにでもあの子の元へ行きたいけれど、私が帰ったところで何も変わらないものね」


 ベアトリーチェに乗っ取られている家に戻ったところでどうにもならないと、リサは城に行くことを了承する。

 ただ、自分の無事だけは伝えたいと手紙を送りたいとリサが言い、ディオたちはそれを了承した。


 それからディオたちは行きよりも速度を上げて城にリサを連れて帰った。

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