67 妖精聞けばわかるよ
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リサがいる湖近くの別荘までディオたち一行は、道中に点在している小さな町や村を経由し、情報収集をしながら進んでいく。
ディオは妖精相手に情報収集をしては気分を悪くしてフランとアルドに介抱されっぱなしだった。
昼時に辿り着いた村で休息も兼ねて立ち寄り、村人の話だとここが湖に一番近い村という話だった。
湖までは馬車で二時間ほどとのことだ。
湖の辺りにはいくつかの貴族の別荘があるだけで他には何もなく、避暑シーズンに貴族ご連れて来た時以外は医者もいないという。
そのため、フランが分かる範囲で村人たちを診るとすごくと喜ばれて割と警戒されずなんでも話してくれた。
なんでも最近は避暑シーズンでもないのによく湖に向かう馬車のすがたを見ると不信がりながら教えてくれた。
普段は滅多に通ることのないお貴族様の馬車に不思議はあっても直接聞くことは恐ろしいことだと、興味はあっても分からないままのようだ。
「準備してから行こうか」
ディオたちは母エルザから押し付けられた正装と言う名の脅し用の服装に着替えると、リサがいる別荘の戸を叩いた。
何故、王子がここに?
使用人たちは絶句をし、突然の出来事に軽くパニックを起こしていた。
例え冗談でも王家の紋がついたものを身につけるものなどいるはずもなく、ならば、目の前で人懐っこい笑み浮かべるのはやはり本物でしかないと、戸惑いを隠せない。
どれだけ評判の悪い王子とはいえ、王子は王子だ。それに、王子の側仕えには侯爵家の兄妹もいる。
丁重な接客を心がけなければならない。
「クラウディオ王子がこのような田舎に何か御用でしょうか」
「ここにリサ・グレイがいると聞いて」
ディオがニコニコと笑みを崩さず言って、使用人たちに一瞬戸惑いが走る。
外部に出ていないはずの情報をなぜディオが知っているのか疑問であるが、それを無理やり隠して主人に言いつけられているように使用人はしらを切った。
「そっかぁ、ここにはいないんだ」
「はい、そうでございます。クラウディオ様」
ディオたちの対応に当たる使用人がそう言って、誰にいうともなく言い返した。
「そうなの?」
「……はい」
諦めが悪いとでも思っている使用人はリサはいないのだからさっさと帰れと言葉には出さずとも態度に出ていた。
そんな使用人の言葉が聞こえていないのか、ディオはまるでここにいない誰かの話に耳を傾けているようだ。
そして、フランは疲れたとでも言いたげに使用人たちに向かって口を開いた。
「ねぇ、格上の家が訪ねてきたのに門前払いってそんな簡単なことなの? 大抵は客間通すとかするんじゃないの」
お前が言うなとでも言いたげにシドとトリスはフランに冷たい視線を向ける。
フランの家はそう言った常識のようなものに疎くこともあるが、そもそもフランの場合はディオを気遣ってなのか素でいっているのか分からない。
青ざめたように使用人たちはディオたちを客間に案内をする。
この王子は評判の悪さ故にどんなことをされるか分からないと言う想像が余計に彼らの恐怖を膨らませる。
椅子に座ろうとしなかったディオをシドは無理やり座らせる。
安全が確保されていないような場所で王子が自ら動くことはシドやトリスにとって許容できない。それに威厳というものもあるし、なによりディオの体のこともある。
仕方ないというふうに笑ったディオはシドに一つの部屋を伝えた。自分でも疲れ切っているのは分かっている。
「シド、二階右奥薄緑のプレートの部屋」
ディオの言葉に幾人かの使用人が肩を跳ねさせた。
分かりやすい反応にディオは気がつかないふりをして、フランにこの家の使用人を集めて来るように指示を出した。
「分かった。そこの眼鏡さん、手伝ってくれる?」
他の使用人がチラチラと見ている中年の眼鏡をかけた男性がここのトップなのだろう。フラン はその人に手伝うように声をかけ使用人を全員集めた。
シドがリサを連れて戻ってくると、フランが王子に嘘をついていたことをつついて、彼らに自分たちの身の安全と引き換えにリサをディオたちがここから連れ出すことを領主たちに隠し通せと使用人たちに約束させた。
こう言った柔らかな脅しのようなことはシドやトリスよりフランが上手い。
シドがリサを連れてくると、使用人たちへの念押しをシドに任せて馬車に乗り込み近くの村までディオたちは戻った。
Q.フランさんにも交渉って出来たんですね?
A. 町中での買い物の交渉ならフランは得意だよ。 byディオ
ただ、相場を分かってないから困るんだよな。 byシド




