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65 シルクとディオ

お読みくださりありがとうございます!

 ダニエルとカトリーヌの顔合わせのためのディオの会も無事に終わって数日、カトリーヌを家まで送ったディオたちは城に帰ってきていた。


 寝起きのディオはまだわずかに暖かさの残る昼食をゆっくりと食べ始める。

 今日のメニューはジューシーな肉を挟んだサンドイッチで、温め直しを遠慮するディオのために料理長が冷めても美味しいものをと気を使ってくれたようだ。


 サンドイッチにかぶりつくと咀嚼して飲み込み、齧った断面から視線を離したディオはアルドに勉強を教えていたシドに顔を向けた。


「シド、リサさんの居場所が分かりそうだって聞いたけど」

「ああ、伯爵の交友関係からいくつかに絞り込めたらしい」


 ディオたちがカトリーヌをグレイ伯爵家から連れ出す間に、アルフレッドたちの方はグレイ伯爵の交友関係を調べていたらしい。


 人付き合いの少ないグレイ伯爵はそれほど調べるのに時間はかからず、静養に出せそうな土地を持つ人間はそう多くなかった。

 そのため、リサの居場所はかなり絞り込めたようだ。


「そっか。場所は聞いてる?」

「大体の場所だけなら」


 ディオはシドからその場所を聞くとフランが運んできたお茶を飲んでから、声を出さずにシルクを呼んだ。


 城の中をフラフラと自由に飛び回っている妖精たちだが、ディオが呼べばある程度はやって来る。

 何かディオにしか分からない繋がりがあるようだ。


「母様がどこにいるか分かる?」


 シルクにエルザの居場所を尋ねたディオは、シルクからの返答に聞くと急いで残りのサンドイッチを食べきるとシルクの言う場所に向かった。

 トリスが付き添いでついていく。


「母様。父様も一緒だったんだ」

「どうしたの、ディオ?」


 エルザの元に向かうとブルーノも一緒にいて、ディオはちょうど良かったと2人に話を始める。


「リサさんがいる場所についてなんだけど」

「調査を広げようかと思っているところなのよ」


 絞り込んだ範囲で捜索させているのだが、リサは見つかっていないらしく探す地域を広げようと考えているらしい。


「それなんだけどさ、オレ行ってくるよ。妖精に聞けば分かるだろうし」


 ディオの提案に両親はあまりいい顔をしなかった。

 現状打てる手ではいい方法ではあるのだが、エルザもブルーノも良しとしない。


「確かにディオならすぐに分かるかも知れないが、あまりいい方法とは言えないな」

「それはディオに負担がかかりすぎてしまうでしょう。母様はお願いとは言えないわ」


 ディオの言う妖精に聞くと言うのは、かなりディオの負担が大きいことを両親よく分かって、だからこそそうすることを躊躇う。

 幼いディオが苦しんで来たからこそ余計に、もうあんな姿を見たくないと思うから。


「昔とは違うよ、今は。だから大丈夫」


 元気よく笑って見せるディオに両親は困った顔を浮かべ、トリスは口を挟むべきではないと思いながら口を開いた。


「ブルーノ様、エルザ様。ディオ様が無理をなさるつもりなら私たちが全力で止めさせて頂きます」


 親の顔で心配するエルザとブルーノを見て、ディオにそうさせたくないのは重々承知の上でトリスはそう言葉を伝える。


 (シド)ならそうするはずだと。

 ただ従うだけでなく、容赦なく主人(ディオ)を叱り怒るシドは絶対に止めると確信できる。

 それにディオに無理をさせたくないのはトリスも同じだ。ただ、シドのように大声を上げてまで喧嘩はできないけれど。


「そう、ね。きっと言ってもディオは聞かないでしょうし。トリス、ディオを頼むわね」

「もちろんです」


 トリスが返事をするとエルザは満足そうに頷いた。


「一番怪しい場所は?そこに行ってみるから」

「それなら、アピオス領かしら」

「トリス、シドとルート確認よろしく」


 一番リサのいるかもしれない領地を教わったディオはその行き方をトリスとシドに任せる。

トリスが部屋を出て行くとディオはシルクに用があるので迎えは要らないと言った。


「そう、ディオ。カトリーには悪いのだけどリサは一度、城に来てもらいたいのよ」

「それはいいけど……」


 小さな庭でシルクを見つけたディオは、シルクに事情を説明すると謝るように続けた。


「だからねシルク、しばらくの間シルクにふた――イタッ」


 言葉の途中でシルクが思い切りディオを叩き、ディオは戸惑うようにシルクを見た。


 ディオの視界に映るシルクは怒っていて、けれど恨んではいない。ただ、ディオが申し訳なさそうにしてることへ苛立っているだけ。


 それが分かっているからディオは言葉を変えた。


「ちょっとだけ我慢してね、シルク」


 謝ることはしなかった。

 ただ、事前に知らせるだけ。シルクとディオは繋がっているから、互いの異変はすぐに気づける。


「オレはシルクほど能天気じゃ――いたっ」


 またシルクにも叩かれたディオは、今度は笑った。


 家族や使用人たちとも違うこの距離感はディオが物心つく前からの距離感で、何を言ってもお互い本心がバレてしまうから隠し事はしない。


「うん、頑張ってくる。シルクは忘れて怒らないでよ。ただでさえきついんだから」


 どうだかと飛んで行くシルクを眺めたディオは、そばでこちらを眺めていた妖精たちに笑いかけた。


「ありがと、でも大丈夫」


 短い言葉を妖精たちにかけるとディオはあくびをして、心地よい気温にうつらうつらし始め眠りについた。


 ディオのそばに集まってきた妖精の一人がフワリと城の中を飛び始め、アルフレッドにディオが寝てしまったことを知らせたためアルフレッドがディオを迎えにいった。


 アルフレッドとシドから叱られることを眠り始めたばかりのまだ知らない。


Q. やはりアルフレッド様とシドは同じことを言ったのですか?


A. そうだよ、ほとんど似たような言葉でね。最近はアルドもたまに怒ってくるんから嫌になるよ。

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