64 ディオの会と顔合わせ
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ディオの会一番乗りは、ディオの二番目の兄であるジークベルトだった。
「ディオー‼︎」
久しぶりにディオに会えるとはしゃぐジークベルトは、一緒に来ていたはずの妻ロザリアを放置して両手を広げてディオの元に駆け寄った。
ディオにハグでもするつもりだったのだろうが、シドがディオとジークベルトの間に入りそれを阻止する。
今日のディオの会において不適切としか言いようがないのだ。ラフな会とは言ってもジークベルトの本性をさらけ出されては困るのだ。
「本日はゲストの方の参加がございます」
シドにに淡々と告げられたジークベルトは、緩み切っただらしない顔を瞬時に真面目な外向きの顔に切り替えると、エスコートするためにロザリアを迎えに行った。
ロザリアはクスクスとジークベルトのことを笑い、そんなジークベルトを放置してディオと話をする。
ジークベルトと幼馴染という関係だったこともあり、ディオのことは実の弟だと公言してしまえるほどにロザリアはジークベルト同様にディオのことを大切に思っている。
「招待ありがとう、ディオ」
「ロザ姉にはいつもお世話になってるからね。今日はベル兄のことは任せてゆっくりしていって」
「そうするわ」
ロザリアとディオが会話を終えたことで、次は自分の番だと張り切るジークベルトだったが、カトリーヌの姿を視界に入れたロザリアはジークベルトを連れてディオから離れた。
「カトリー、よく似合ってるよ」
「あ、ありがとうございます」
社交辞令なのだろうが、屈託ないサラリとしたディオの言葉は本心のように思ってしまう。
ここ数日間を一緒に過ごして知ったディオの人柄から余計に。
「まだみんな揃うまで時間はあるからゆっくりしてて」
「はい」
どこにいればいいのかと迷ったが、退屈そうにしているアルドが見えたのでカトリーヌはそちらに向かう。
近くにいた一組の男女はなにやら騒がしく近づきたがいので、近寄らないことにする。
しばらくするとディオの両親である国王と王妃、それとアルフレッドが妻と子供を連れてやってきた。
軽く挨拶を交わして、ディオはエルザとアルフレッドをカトリーヌの元へ案内した
2人はカトリーヌ本人だとすぐに答えた。
リサによく似た容姿に、幼い頃の面影がよく残っていて見間違えようもないと。
エルザはカトリーヌの手を取ると優しくその手を包み込んだ。
「逢いたかったわ、カトリー」
抱きしめたいとも思うが、カトリーヌが求めるのはきっと母親であるリサだとエルザは手を握るだけに留めた。
「王妃、さま?」
カトリーが小さく確かめるように呟くと、エルザは目尻にほんのり涙を溜めて大きく頷いて小さく笑った。
「辛い思いをさせたわね」
「い、いえ。クラウディオ様が約束してくださいましたから」
戸惑いながらカトリーヌがそういうとエルザは頷き、自らもカトリーヌの母リサを絶対に見つけると約束をし、カトリーヌはありがとうございますと震える声で言った。
公爵夫妻の相手をしていたディオは、エルザとカトリーの様子を見て話が一区切りついたらしいと判断をして、ダニエルを連れてカトリーの元に行く。
「カトリー、紹介するね。彼はいとこのダニエル。この前のパーティーで偽物と会ってるから会わせたかったんだ」
「そう、でしたか。わたしはカトリーヌ・メル・グレイです。お会いできて光栄です、ダニエル様」
カトリーヌは洗練された動作で挨拶をして、偽カトリーヌとは似ても似つかない美しい立ち居振る舞いにダニエルは何もいえずに見つめていた。
そして、その様子を少し離れた場所から公爵夫妻は観察していた。
エルザがカトリーヌを激推ししており、妖精から好かれているというのであまり心配はしていないが。
「ダニー。彼女が本物のカトリーヌ・メル・グレイ。正真正銘、グレイ伯爵家の一人娘」
「初めまして、カトリーヌさん。僕はダニエル・ノア・オーキッドです」
ディオに紹介されたダニエルは、一瞬にして切り替えると公爵家と言うべき立ち居振る舞いでカトリーヌに挨拶をした。
ダニエルの視線がカトリーヌの右上へと移った。
ダニエルの目にはぼんやりと光る妖精が映っていて、何か声が発していたが聞き取れない。しかし、妖精の様子からカトリーヌが妖精に好かれているのは伝わった。
ディオは妖精に目だけで喋っちゃダメだと伝えていたのだが、特に効果はなかったようでシルクに向けて困った表情をしていた。
「さてと、ダニーたちとはしっかり話したからそろそろ行くね」
カトリーヌの相手は任せたとダニエルの肩をポンと軽く叩いたディオは、ダニエルのそばを離れてアルフレッドの妻マルティナに会いに移動する。
「ティナ姉。子供たちは一緒じゃないの?」
「ええ。フランお姉さんのところに行くって」
マルティナが冗談混じりに言って、ディオはクスクスと笑った。
フランは容姿からかひとまとめに姉妹と呼ばれることもあり、割とそう言った呼ばれ方も多い。本人は褒め言葉と思っているが。
「そっか。フランに負けちゃったか」
「アルフ様たちがいつもよりディオ君のことを話すから久しぶりな気がしないのかもしれないわ」
ジークベルトほどではないがアルフレッドからもディオの話題が出ないことの方が珍しいほどで、マルティナもしばらく会っていなかったと思えないらしい。
「それ、嫌気さしたりしない?」
「うーん、そうね。ディオ君のことを話すアルフ様は輝いてるから、つい聞き入ってしまうのよね」
心配そうに尋ねたディオの言葉にマルティナは自分でも呆れたというふうに笑みをこぼす。
「それならいいけど、ロザ姉みたいに怒ってもいいんだからね?」
「考えておくわ」
「うん、そうして」
続けそうになった言葉を飲み込んで寂しげな顔をしてディオが言う。
その贅沢すぎる愛は、時として恥ずかしくて周囲にとって鬱陶しいものに映ってしまうとディオは思っているから。
自分にそこまでの価値がないとは言わないけれど、きっと心配からくるものだから。
マルティナは優しげに笑うと話題を変えた。
ディオが隠したいのなら気がつかなかったふりをすることにして。
「そうそう、まだ先のことではあるのだけど、アレンが父の代わりにこっちにくる予定があるの」
「アレンが?」
「ええ」
マルティナの弟が久々にやってくると知ったディオは途端に笑顔になる。
ディオにとって唯一の王子である友人だ。
「ディオ様、助けて〜」
5、6歳の子供たちにまとわりつかれるフランがディオに助けを求めてやってきた。子供はアルフレッドとマルティナの子供たちだ。
「こら、やめなさい」
マルティナは子供たちへのお説教タイムに入ったため、ディオはフランを連れてその場に離れると、ダニエルの様子を見ていた公爵夫妻とアルフレッドの元に移動した。
「上手くいきそう?」
「うんざりする様子ないし、相性は良さそうかな」
「あの感じなら進めて問題ないだろう」
初めての顔合わせは上手くいったようでディオはホッとするのだった。




