63 ディオの会は
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――ディオの会当日。
会場の手伝いにやって来ていたロザリアの侍女をカトリーヌのことを任せて、ディオたちは会場の準備を始める。
フランが古着を利用して作ったなんちゃって給仕服に着替えたシドたちは朝から忙しなく動いていた。
使用人は城から何人か借りているが、メインはシドたち4人で進めていくために忙しい。アルドが加入してもまだ子供のアルドに頼めることは少なく、やはり3人で進めるのが基本となる。
身分相応で王子らしくありながらもラフな格好をしているディオは退屈なのかアルドの手伝いをし始め、大きな荷物を運んでいたシドがそれを目ざとく見つけると、ディオに声を飛ばした。
「ディオ、お前は何もしなくていいから寝てろ」
その声を聞いたトリスとフランが同時にディオの方を振り向き、シドと同じように手伝わなくてもいいと声をかけた。
「手伝ってくれるのは嬉しいけど、体力は温存しておいて」
「ディオ様は休んでいてください」
手伝わなくてもいいと言われたディオはむぅと唸り、アルドを味方につけようと試みる。
「元気だから大丈夫なのに。ね、アルド」
「主催者が途中で寝てもいいわけ?」
返ってきたのは冷たい返事で、しかもアルドの冷ややかな視線付きだった。
シドから教わった今日の魔法の言葉なるものをアルドはディオに向かって唱えてみると効果は抜群だったようだ。
ディオはアルドから目を逸らして、カタコトで返事をする。
「ヨクナイデス」
アルドも細かな事情は知らないがディオがずっと起きていられないと知っているので、途中で寝なければ無理があるとは思っている。
ディオ自身もそれはよく分かっているし、受け入れてはいるのだ。
ただ、無理だと分かっていて虚勢なのか見栄なのか起きていようとしているだけで、普通の人の活動時間である十数時間をずっと起きていられない。
元気であると振る舞うほど休憩は多くなってしまう。
拗ねるように鼻を鳴らしたディオは、シドがディオのために用意していた簡易ベットの上に移動して座り込んだ。
「何もするなだって。……うーん、分かってるけどさ」
ディオはテキパキと動くシドたちをベットの上から眺めて、そばにいるシルクと会話をしながらウトウトとし始める。
「――シルクはどう思う?」
シルクが返事を返すともうその頃にはディオは眠っていて、シルクはフヨフヨと浮かぶとベットの端に座ってカタカタとベットを鳴らした。
その音に気がついたフランは眠ってしまったディオの上にタオルケットを掛けるとシドに伝えた。
シドはその方が作業が捗るとテキパキと準備を始めていく。
手伝おうとしてくれるのはありがたいことだが、ディオにさせるわけにはいかないので止めるの面倒なのだ。
踏ん反り返って尊大な態度をとまでは言わないが、王子らしく使用人のやることを眺めていればいいのだがディオは自分にも出来ることならやろうとする。
ディオからすれば迷惑料とでも考えているだろうが、シドからすればいい迷惑なのだ。
手がかかろうとそれに全力で応えるのがこの仕事だと少なくともシドは思っている。もとより、迷惑だと思っていたらディオの使用人として後続を押しのけてまで残る気はなかった。
ディオはもう少しくらい我儘でいてくれたっていいのだ。そう思うのはきっとシドだけはないだろう。
時計を確認したシドは、最終確認をトリスたちに任せるとディオを起こしに行く。
微力ながらシルクも起こすのを手伝っていた。
「ディオ、起きろ」
すぐに目を覚ましたディオは眠気を飛ばすように首を振って立ち上がった。
形式的なパーティーと違い、ディオの会は格式張ったものではないのでキッチリした格好というわけではなく一から着替える必要もない。
なので、ディオの着ている服と髪を軽く整えるだけ準備は終わる。
「ありがと、シド。シルクもね」
当たり前だと胸を張るシルクにディオは小さく笑うと、妖精用のスペースも作って貰ったと言い、シルクとは分かれて来客を待った。




