5 話し合いと
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夜になり、アルドが寝たのを確認したディオたちは馬車が出ると円になるようにたき火を囲って座った。
はじめに口を開いたのはシドだ。
「で、どうするんだ」
尋ねたのはアルドのことで、怪我が治るまでにまだ時間はあるがそろそろどうするか考えておかねばならないとシドは言う。
孤児院に預けるにしても、子供でも働ける場所に連れていくにしても、受け入れ先を探す必要がある。
シドにしても再びアルドをその日の暮らしすら大変な孤児にするつもりはない。
そのためシドはディオにアルドの今後についての考えてを聞く。
「オレはアルドが来てくれるなら嬉しい。無理強いはできないけど、あの子はなんていうか……」
パチパチと音を立てる火を見つめて、ディオが呟くようにシドに返し、フランが続きを促す。
「なんていうか?」
「ダニーと仲良くなれるんじゃないかって、そう思った。……それにオレは与えてもらうばかりで家のみんなに何も返せないから、せめて誰かに同じにって」
自虐めいたディオに言葉にフランはなんでといった表情をしてディオをしっかりと見据える。
「ディオ様、それは違うよ⁉︎それをいうなら、いつも足引っ張ってる僕の方がそうだよ」
立ち上がったフランはディオの発言を否定するように大きな声を出す。
ディオの言葉にまるで傷ついているかのような表情でフランはディオを見つめて、それ以上の言葉を紡げず小さく息をこぼす。
気がつけばシドは眉間にしわをいつも以上に寄せて拳を固く結んでいて、普段表情に乏しいトリスの顔には陰りが見えた。
思いをただ感情に乗せてディオに投げれば伝わるものでもないことは解っているからこそ言葉に詰まる。
何度も味わってきた感情にシドとトリスの視線は彷徨う。
ディオの返したいものと、シドたちが受け取っているものは違う。
それくらいは長い付き合いからシドたちも理解はしている。家のみんながディオに求めるものは、ディオに何かを求めるものではないのだ。
食い違いは分かっていて、それでも何度でも――。
「……ディオ、何度だっていうが俺たちはそうは思わない」
「一方通行にはなっていません。ディオ様」
シドたちはディオに伝える。
「うん。フランもシドもトリスも、母様たちもそうはいってくれるけどね」
だけどといったディオはそこから先の言葉が続かない。
お互いに分かっているから誰も何も言えずにしばらく、静かな時間が過ぎる。
抱えたものに蓋をしたディオは、底抜けに明るい声で沈黙を破った。
主が暗くなってどうすると、そんな思いでフランたちの沈んだ雰囲気も飛ばせるようにと。
「えっと、だからオレはアルドが来てくれるなら歓迎したい!もちろん、シドたちから見て問題がなければの話だけど」
「そうか。わかった」
頷いたシドはそれ以上は何も言わなかった。