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47 計画的犯行?

お読みくださりありがとうございます!

「シド、行きたい場所があるから馬車出してくれる?」


 唐突にディオが言った。


 突然何かを言い出すのはよくあることなので驚きはしないが、ディオはよく詳細を言わなかったりするため言うがままに従うわけにはいかないため、シドはディオに質問をする。


「どこへ、何のために?」


 ディオは喋らずニコニコと笑ってクローゼットから一着の服を取り出すとシドたちに見えるように見せつけた。


 その服は普段着ではなく、パーティー会場などに行くために着るようなもので、滅多にディオが着用しないものだった。


「ちょっとね、グレイ伯爵に会いたくて」

「つまり、今日スパーク侯爵家で行われる誕生パーティーに参加をすると言うことですか」

「そう。急で悪いけど」


 トリスが確かめるようにディオに訊ねるとそうだとディオは頷いた。

 どこからかグレイ伯爵が参加することを掴んだらしい。これも千里を見通す力だろうか。


 シドはディオが公爵に頼んだことに合点がいったと頭を抱える。

 こういう場に出席しなければならないかもしれないからではなく、あの時にすでにディオの頭の中では組み立てられていたのだろう。


 ディオが公爵にした頼みごとは、ダニエルのパーティー用の服を一着貸して欲しいというものだった。


「ほら、アルドの服も用意してあるよ」


 そう言ってディオは子供用の服を取り出し、堅苦しそうなその服にアルドが思い切り顔をしかめ、その横ではフランがディオの手際の良さに感心していた。


「ディオ様ってばさすが。僕たちのも用意してくる」


 特別室に駆け出したフランを放置し、シドはため息をついた。

 まだ一つ問題が残っている。


「招待されてもないのに行くつもりか」


 王子という立場上、追い返されることはないだろうが迷惑な客人になることは間違いない。

 今更周りの評価を気にするほど小心者ではないが、ディオの行動としては不審な点である。


 ディオはシドの言葉にニッコリと笑って見せると、棚に置かれたアルフレッドそっくりのぬいぐるみを手にする。


「元々陛下の代理だったアル兄は手の離せない仕事が急遽入ったため、オレが向かうことになったっていう筋書き。招待状自体、名指ししてなかったし」


 堂々と言い切り、招待状を片手に持つディオにシドたちは呆れた顔をする。

 全てが全て嘘ではないが本当のことも言っていない。


「仕事、かは別としても手が離せないことがあるのは事実ですね」

「えっと、つまり……」


 アルドは状況に追いつけない頭でディオの言葉の意味を考えていると、頭上からシドの声が降ってくる。


「自分が帰ってきたことさえ組み込むか」


 アルドがシドを見上げれば、トリスがディオの言葉の真意を教えてくれる。


「ディオ様はジーク様の監視を放り出すわけにはいかないアルフ様の代わりにパーティーに行くつもりのようです」

「……あながち嘘でもないって言える、のかな」


 戸惑いながら言うアルドは、あの朝以来ジークベルトの姿を見ていないことに気がつく。

 あの過剰なほどディオを溺愛しているらしいジークベルトがディオに会いに来れていないのはそれが理由か。


 余計な仕事が増えただけのようにも感じてしまうが、ディオの帰還にアルフレッドたちは嬉しそうでアルドはそれが家族なのだろうと一人納得をする。


 ジークベルトの溺愛はディオが城を出るまでずっと続いてきたもので、強いていうのであればディオが生まれてから今日に続いている。


 そのため、苦労と呼ぶよりもただの日常と化していて、ルーティーンと呼べるようなものになっているためにこの方がアルフレッドたちも調子が良かったりする。ジークベルトだけは違うようだが。


「準備できたよ〜!急がないとね」


 特別室から既に着替えて出てきたフランはシドとトリス用の服を抱えていて、それぞれに手渡す。


 トリスは礼をいうと特別室に着替えのために入って行き、ディオたちも手早く着替えを済ませる。着替えに慣れているディオには一人で着替えてもらい、フランはアルドの着替えを手伝った。


「着替えたら馬車の前で待ってて、オレも忘れ物を取ってきたらすぐに行くから」


 着替えを済ませたディオはシドたちに先に馬車に向かうように伝えると、ちょっと忘れ物かあるとどこかへ行ってしまった。


「おい、ディオ⁉︎」

「忘れ物って、手ぶらでしか歩かないくせに?」

 

 ディオを引き止めることは叶わず空を切り、シドはその手を額に当て、慣れない服にムスッとしているアルドは半ば八つ当たりのように吐き出した。


 誰もディオの忘れ物に心当たりがなく、どこに行ったかも分からないディオを追いかけることはせずに、ディオの言葉通りに馬車へと向かう。


 今日はさすがにシドが御者を務めるわけにはいかないので、担当する御者が馬車を走らせる。

 やはり本職が馬を走らせるだけあって、シドが御者を務めている時よりも乗り心地は素晴らしい。


 やがてゆっくりと丁寧に馬車が止まり、ディオは馬車から降りると両手を組んで上に上げて大きく伸びをする。


「よし、頑張りますか」


 ディオは大きく深呼吸をするとシドたちを連れて会場へと歩を進めた。

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