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43 全く似てないわけでもない?

お読みくださりありがとうございます!


この辺りの話は『明るい復讐計画』にも書いてあるんですが、こっちの方がもう少し詳しい感じです。

 ディオが城に帰り、翌日――。

 早朝と呼ぶにもまだわずかに早い時間。


 起きているとしたら夜の見張りを担当している騎士か、朝早くからの仕事がある料理人などの使用人くらいだろう。

 かすかに鳥の鳴き声が聞こえる程度で大抵の人間はまだ夢の中のはずだ。


 特別室の扉の音が鳴らないように静かに注意をして部屋から出たシドは、ディオが寝息を立てて眠っていることを遠目で確認すると音を立てないようして軽いストレッチをする。


 日課でもあるが、これからくるであろう問題に対しての準備運動でもある。

 シドは出入り口を静かに見つめてその時を待つ。


「兄さん、おはようございます。兄さんも起きていたのですね」

「トリスか」


 同じように音を立てずに起きてきたトリスは小声で会話をしながら、やはりシドと同じようにストレッチを始める。


「部屋の前にいる護衛だけじゃ止めるのはキツイだろ」

「だと思います」


 決して護衛(彼ら)が弱いわけではないのだが、おそらく止めるのは難しい。

 相手が強いとか弱いとかじゃなくて、もっと単純に身分と勢いだ。

 手合わせでもないのに護衛対象に刃を向けるなんてことは簡単に出来ることではないのだ。


 そこに眠そうにあくびをしながらフランがやってくる。

 手には二本の水筒を持っている。


「早いね〜、2人とも」

「フランさん。おはようございます」

「お前も十分早い」


 そうだねと返しながら、フランは手にしていた水筒をシドたちに手渡す。


「寝る前に用意しておいたんだ。僕に止めるのは無理だし。役に立たないからこれくらいは」

「助かる」

「ありがとうございます」


 フランから受け取った水筒に口をつけて眠気を覚ますと、外がにわかに騒がしくなりシドたちは急いで水筒を邪魔にならない端に置くと臨戦態勢をとった。


 勢いよく扉が開きそいつは大きな声を出すが、素早くそいつの後ろに回ったシドは猿ぐつわとしてハンカチを口に巻いて大きな声を出させないようにする。


「ディ――」


 トリスはシドの動きに合わせて侵入者の腕を掴むとひねり、抵抗されないうちに組み敷いた。


「ジークベルト様、申し訳ございませんがディオ様が目覚めるまでお静かに願います」

「むぐっ。……ムガー!」


 侵入者――ジークベルトと呼ばれた男はアルフレッドによく似た顔つきをしていて、逆立ったような髪が特徴的だ。


 取り押さえられたジークベルトは逃げ出そうともがくが、トリスも伊達にディオの護衛を任されているわけではない。

 純粋な力では性別的に勝てなくても、力の使い方はよく分かっているのでジークベルトがどれだけ抵抗しようとびくともしない。


 不敬だと分かっていてもついついジークベルトに対してのため息をついて呆れるシド、出来るだけ目線を下ろすためにジークベルトのそばで屈んで声をかけた。


「ジーク様、流石にこの時間の訪問は迷惑ですので控えて頂けるとこちらとしても助かります」

「おへえらは〜!」


 ジークベルトはシドを睨みつけるだけで、意に返さない。

 自分がこんなことをされる理由はないという怒っているわけではなく、この男はディオさえ見せておけば別に害はないのだが、家族といえども睡眠を邪魔するのはどうかと思う。


「前にクラークさんから教わったな〜。なんていうんだっけ」


 なおも抵抗を続けるジークベルトを見つめながら、フランは何か考え事をして両手を胸の前で合わせて思い出したとジークベルトのそばに駆け寄った。


 「可愛い弟の睡眠を妨害することは、ジーク様の本意でしょうか」

「……………………」


 長すぎる沈黙の後、ジークベルトは首を全力で横に振る。

 これなら拘束を解いても騒ぐことはないだろうと拘束を解くが帰る気はなさそうだ。


 ジークベルトは立ち上がるとディオが眠るベッドへと直行し、ディオの寝顔を見つめて幸せそうに顔をだらしなく緩めている。

 起こさないだけマシだというものが、どちらかというとさっさと帰ってもらいたいのだが、ディオが起きるまで居座りそうだ。


 やがて日が昇り始め、目を覚ましたディオが起き上がるとすかさずジークベルトはディオを抱きしめた。


「ディオ、おかえり!お前が帰ってくるまでの間、兄ちゃんは心配で心配で」

「うぅん、ベル(にぃ)がどうしているの?」


 この過剰な愛情表現にいつものことと慣れているし割り切っているディオは驚く様子もないが、こんな朝早くからジークベルトがここにいることは疑問に思ったらしい。


 ジークベルトは当たり前だと言うようにディオの疑問に答える。


「そりゃ、ディオが帰ってきたっていうからお前の顔を見るためだよ。昨日は止められたからな」

「そうなんだ。ベル兄はすぐ仕事抜け出しちゃうもんね」


 ディオは納得して、きっと昨日は国とって大事な来客が訪れていたのだろうと推測をして、ジークベルトは胸を張って答える。


 そこでノックの音が聞こえたのでシドはこの場をトリスに任せて来客の対応に向かう。

 きっとジークベルトの従者が迎えに来たのだろう。


「ディオより優先度の高いことはないからな!」

「やっぱりここでしたか。ジークベルト様、いい加減にしてください!」


 杞憂で終わればいいと願いながら心配をしながらジークベルトの部屋を除けば案の定部屋はもぬけの殻だったので、慌ててやって来たというジークベルトの従者はとても冷ややかな目をしていたが、すぐにディオに視線を向けて爽やかな笑みを浮かべた。


「ディオ様、お帰りなさいませ。無事に戻られて心より嬉しく思います」

「ただいま、バート。バートたちも元気そうで嬉しい」

「ありがとうございます、ディオ様」


 ディオに礼を言うと、ジークベルト用に切り替えたバートは怒りを滲ませた声を出す。


「朝食はご一緒出来るようしておきますので戻りますよ」

「嫌だ」


 意見を一蹴するジークベルトにバートはため息をつく。

 シドたちの迷惑になるのでさっさと連れて帰りたいと思うのだが、引きずって帰るわけにはいかないのだ。


 一応こんなでも、世間一般のイメージというのもあるのだ。人目に触れるのにそんなことはできない。

 もっとも、王子の部屋だけで全て解決するのならバートも容赦はしなかった。というか、殴ってでも傍迷惑な時間にジークベルトがディオの元に押しかけるのを止めていた。


「――さっきからうるさいんだけど」


 そこに周囲の騒がしさで起こされた不機嫌なアルドが枕を抱いてやってくる。


「ああ、すまん」

「申し訳ありません」


 不要な騒ぎで起こしてしまったことに関して詫びるとバートはシドにアルドの紹介を求めた。


「うちの新入りです。説明をしてなかったので」

「そうでしたか。ディオ様の……でしたらジーク様のことは問題ないですね」


 偶像と素に落差はあるが、ディオの使用人ならこちらに慣れてもらわなければならない。


 アルドはシドとバートの会話に聞いて、とりあえず大丈夫だろうと判断すると、騒ぎの元凶と思われるジークベルトに向かって枕を投げつけた。


「あっ!」

「おい、アルド」


 投げられた枕はジークベルトに命中。

 威力はなかったことにシドは安堵をし、アルドにゲンコツを落とすと声は出さずに視線だけで何をしていると訴える。


「――っ。ディオの、同類ならいいかと思って」


 頭の痛みに目に涙を浮かべるアルドはそう言って、同類という言葉にバートは堪えきれずに吹き出す。


「いい訳がないだろ。あれでも王子だ、あんな扱いをしていいのはディオだけだ」

「ひどいよ、シド!」

「シド、それでもディオに仕える人間か⁈」


 そこでやっとディオ以外にもまともに意識を向けて、ジークベルトはアルドの存在に気がついた。


「見慣れない顔があるな」


 シドはジークベルトにアルドのことを紹介するが、お前のせいで紹介が遅くなったと隠しきれていない。


「構わない。機会を与えなかったのは俺だ」


 そう言ってシドの方を向いたジークベルトは、先ほどまでの緩み切った顔からキリッとした真面目な顔になり別人のようだ。

 真面目にしていると、ジークベルトはアルフレッドによくに似ていた。


「相変わらずだね。ジーク様って」


 変わらないジークベルトに対してフランは笑い始め、トリスは呆れた表情をする。


「奥様もいらっしゃるのに」

「だから、ロザリア様が選ばれたんだろ」

「ええ、そうです。あれではどこにも行かせられませんから」


 この溺愛ぶりは今に始まったことではなく、多分初めからだ。それでもきっと、異常事態(イレギュラー)さえなければここまでにはならなかったのだろうけど。

 ついでに言えば、ディオが家を出てから溺愛はさらに加速した気さえする。


 ディオとの朝食を楽しんだジークベルトはその後、アルフレッドに捕まりディオも笑顔で送り出したためジークベルトは渋々仕事に向かった。



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