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4 まともなのって

お読みくださりありがとうございます!

 アルドの怪我も順調に治っていて、ディオたちが出会ってからおよそ二週間が過ぎていた。


 フランの予定ではあと二週間でアルドは晴れて自由な身になれる。


 逃げ出すこともせずにディオたちの旅に同行したままのアルドは、それなりに一人でも動けるようになっていてリハビリも兼ねてディオたちの近くを歩くことも多かった。


 アルドがどれだけ辛辣な言葉を吐いても、迷惑だと伝えても構い倒してくるディオに嫌気がさすアルドは、逃げるようにして外にでた。


 いいとか悪いとか、そんなんじゃなくて単純にディオは鬱陶しく、初めて見る人種にどうしていいかもわからない。

 その上、全部見透かしたような目をしていて、それが妙に腹立たしい。


 追いかけてこないディオはたぶん、ふてくされて寝ているのだろう。

 アルドもこの二週間でそれくらいはわかってきた。


 外にでたアルドはずっとゴリゴリと音が鳴るが気になって音の出どころを探すと馬車の荷物置きでフランが何か作業をしていた。


 やることもないアルドは、フランの邪魔にならなそうな位置で作業を眺めることにした。


「アルド君。ディオ様から逃げてきたの?」


 アルドに気づいたフランが尋ね、アルドはそうだと答える。


 最近のお決まりのパターンだ。

 シドやトリスのところには行く気にはなれず、ディオは論外、誰かのところに行くなら消去法でフランしかいない。


「薬を作ってるんだよ」


 不思議そうに眺めるアルドに、フランは薬を作っていると説明をして、自分の周りに散らかしている容器の一つから乾燥した葉と、そばに置いている紙を指す。


 紙に描かれているのは乾燥前の葉のようだ。


「これ、町中でもよく生えてるやつだけど、胃薬の材料になるんだ。シドの必需品」


 そう言ってフランは、乾燥している葉をすり潰し始める。


 手際は素晴らしくいいのだが、材料の容器をあまりに散らかしすぎだとアルドは思うが、フランは気にする様子もなく薬をつくり続けている。


 しばらくして思い出しようにアルドに疑問を口にする。


「そういえば、ディオ様は?」

「知らない」

「そっか。寝てるんだね、きっと」


 アルドを構って逃げられると、ディオは大抵寝ている。

 普段からよく寝るディオにフランは気にする様子もなく音を響かせて薬作りを再開する。

 気を使うつもりはないようだ。


 そこにトリスが洗った食器を持ってやって来る。

 フランの周りに広がっている薬の材料を見て、一瞬だけ動きを止めた後淡々という。


「フランさん、せめて必要なものだけを出すようにしてください」

「そうなんだけどね」


 愛想よく笑うフランに直す気はなさそうだ。

 トリスは種類別に分けて片付けていたようで、足の踏み場がないほど散らかされることにため息をついた。


 いつものことだとはいえ、毎回やられるので対処に困る。

 馬車という狭い空間なのだ。使えるスペースは限られている。


「いっそ、フランさんのスペースはここに作った方がいいのでしょうか」


 トリスがそんなことを呟いていると、フランが何かに気がついて大きな声を出した。


「あ!トリス、あれ外しちゃったの?」

「はい、邪魔になりますから」


 アルドがトリスの服を思い返してみると、初日の頃と比べると装飾が減ってかなりシンプルなデザインになっている。


「そうならないようにつけたんだけどなぁ」

「必要ありません。仕事着なら着飾る必要はないですから」

「そっか、また考えよう」


 うんうんと納得して頷くフランは何かを考えているようだ。


 と、そこに後ろから声が飛んで来る。


「トリス、片付けは終わったか?」

「いえ、まだです。フランさんが散らかしているので」

「またか」


 呆れたふうなシドは手前の容器を適当に重ねて片付けると、まずフランの手から調合の器材を取り上げた。


「シド!」

「馬車の外でやれと何度言ったら分かるんだ、お前は。ディオが起きたらどうする」

「だって、外だと風とか――」


 シドは荷物の中から端に置かれた長細い袋を指差し、フランに怒気のこもる声を向けた。


「そのために簡易テントを買ったんだろ。お前にも確認させて」

「そう、だったね」


 フランはシドに目を合わせない。

 片付けるようにフランに指示を出したシドは、次にトリスの方を向く。


「トリス。片付けの効率を求めるなら確かに馬車(ここ)の方が早いが、ディオが起きないならと考えるのはやめろ。単純な昼寝の場合も考えろ」

「はい、兄さん」


 素直に己の非を認めるトリスは、フランの片付けを手伝い始め、シドからフランに馬車の中で薬を作らせないように言いつけられた。


「アルド、お前は万全なわけじゃないんだ。観察するにしても、立ってないで座れ」


 アルドが呆気にとられていると、シドは馬車に簡単なイスを出してから馬の様子を見に行った。


 よくいじけてふて寝するに子供っぽいディオ、あまり周りに配慮しないフラン、割と効率主義のトリス、苦労人のシド。


 それがディオたちに出会って二週間のアルドが思う彼らの性格で、アルドはなんとなくシドが一番まともなのでは思うのだった。

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