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39 いざ、実家へ

お読みくださりありがとうございます!

 王都に着いてまず始めに目につくのは荘厳な白亜の城だ。

 周囲の建物と比べて高さも大きさも桁違いの城はただそれだけ目を引いた。


 城に近づくにつれて活気付く町をアルドは飽きることはなく馬車に揺られながら眺めていた。

 フランもトリスも久しぶりに戻ってきた王都の変わらない様子を感慨深く眺めている。


 ディオはというと王都に入りほどなくして眠ってしまっていて今はすぅすぅと寝息をたてていて、久しぶりに帰る実家に緊張すると言っていたのが嘘のようである。


 走り続ける馬車はやがて、見上げなくてはならないほど城の近くを走り始め、アルドにはどこを走っているのか分からなくなった。

 ただ、騎士の姿が多く感じた。


 一度馬車が止まると、何やら外が騒がしくなりシドが何かを話しているようだった。

 だだの門にしては豪華で、しかし飾り気のない門を馬車はくぐりたくさんの荷馬車が出入りするその場所を走り抜けると、若い騎士が立つ近くに馬車を停止させた。


「お帰りなさいませ、シド様。ディオ様はお休みになられて――」


 騎士は敬礼をしてシドを出迎えると、すぐさまシドに駆け寄ると何よりも先にディオの安否を気にかけた。


「ああ。ダグラス、悪いが俺たちが降りたら馬車(これ)を西棟の裏にアルフ様の箝口令(伝令)が来たら隠しておいてくれ。馬たちはその後厩舎に」


 シドは御者席から降りながらダグラスの問いかけに頷き肯定をし、ダグラスは安心したように微笑んだ。


 体調の変化が読めないディオに、少なすぎるたった2人の護衛と心配な不安要素を挙げるとキリがないために日々ディオたちの安否は気にかかっていたのだ。

 手紙で無事が分かっていてもやはり直接姿を見るまでは安心は出来なかったのだ。


「はい。移動はアルフレッド様の箝口令(伝令)があってから、了解です」


 シドは復唱された内容に誤りがないことを確認すると馬車の扉を開け、トリスとトリスに促されたアルドが馬車を降りる。


 ダグラスは寝ているディオを起こさないよう配慮して小声で話をする。


 見慣れない顔(アルド)がを見てダグラスはトリスに彼のことを尋ねる。

 ここに連れて来られていると言うことは、ディオの意思を汲んだシドが人物を見極めて許可を出したことを意味するが騎士としてそのままというわけにもいかない。


「お帰りなさいませ、トリス様。そちらの方は?」

「商会の見習いアルドです」

「そうでしたか」


 ダグラスはトリスの返答を聞いて、腰につけたポーチから銀色をしたリングを取り出すと縦の溝に黒い線を三本入れると紐に通して首から下げられるようにしてアルドに差し出す。


「本日は来客の証としてこちらを身につけて頂くようお願い致します」

「は、はい」


 子供扱いをされず1人の客人として丁寧な対応されるのはどうにも戸惑ってしまうアルドだ。いや、ここが城の真下だと分かり状況に頭が追いついていないだけかもしれない。


 馬車の中からフランがひょっこり顔を出し、シドに助けを求めながらもダグラスを見つけて呑気に手を振った。


「シド、手伝って。あ、ダグラスさんだ。久しぶり〜」

「お久しぶりです、フラン様」


 どうやらフランはディオを馬車から出そうとしていたようだが自分1人では無理があるとシドを呼ぶことにしたらしい。


「よっ、と」


 寝てしまっているディオを馬車から降ろすのをシドに手伝ってもらったフランはそのままディオを背中に背負った。

 ダグラスは寝ているディオを前に声は出さずに敬礼をする。その目はディオが何事もなく帰ってきたことを安堵している。


「ディオ様は僕が部屋に連れて行くから、シドに連絡は頼んでもいい?」

「そのつもりだ。ディオは頼んだ、見つかるなよ」

「はい、兄さんも」


 ダグラスは人払いが済ませてあるルートをシドたちに説明をすると、お気をつけてと敬礼をして伝令が来るまで馬たちと待機を始めた。


 貴族の家と比較できないほど長い廊下をディオを背負ったフラン、トリス、アルドは歩いて行く。

 人払いが済ませてあると言葉通り、フランたちが歩く道ですれ違う使用人はほとんどいないが、使用人たちはフランたちの姿を認めるとすれ違う前に足を止めて頭を下げる。


「お帰りなさいませ、クラウディオ様」


 繰り返し聞こえて来るのはそんな言葉で、アルドは信じられないといった顔をしてフラン、トリスについて行く。

 その距離はいつもよりも近い。


 ディオと刻印の打たれたプレートのついた扉の前で止まるとトリスが扉を開けてフランから部屋の中に入った。


 部屋の中は広くいくつかのスペースに区切られていて、庶民の小さな家のすっぽりと入れたような作りになっている。


 フランがディオをベッドに寝かせると、フランとトリスは商人の格好から城の使用人スタイルに着替えると完全な手持ち無沙汰になる。


 主がいなくても掃除をされている部屋はさすが城の使用人と言うべきほどでどこを見て触っても汚れはなく完璧と呼べるほど掃除が行き届いている。

 そのため、扉は開けたままディオのベッドがある部屋の隣の部屋で待機することにする。

 今目的もなく部屋を出て城を歩き回るのは、無駄な騒ぎを起こしかねない。


 ソワソワと落ち着かない様子でアルドは、アルドにとって座り心地の悪いソファに腰掛ける。

 なんて言うかこれは居心地が悪いと言うだけではないだろうとアルドは思いながら部屋を見回しているとフランがのほほんと声ををかけた。


「珍しく緊張?アルド君」

「緊張っていうか、信じられないだけ。だって――」


 アルドは少し視線を彷徨わせてから口を開く。


「ディオが王子とか」


 ここまで来ればさすがにアルドでも分かる。

 ディオが第三王子のクラウディオだと。


 まあでも、王子だというのも妙に納得は出来た。

 有無を言わさない雰囲気を出したり、とんでもなく博識だったり、ディオ(自分)に何かあればシドたちが困るという言葉とか、料理の準備を一切手伝わされていなかったこととか。


 今思えば、シドが怒るのは大抵ディオとフランがバカなことをした時と、クラウディオ――第三王子の話題があった時だった。


「兄さんから話をされたと思うのですが」


 トリスはアルドが付いて来ると言った時シドが説明していたと思っていたのでアルドが何も知らないことに驚くが、シドからは付いて来るかどうかしか聞かれていない。


「言われたのはこのままここに残るかどうかだけ。残るなら孤児としてだけより心無い言葉は耳にするだろうとは言われた。あとは残らなくてもおれが暮らしていけるようにするとしか」

「そうでしたか」


 身分を口外しないというのも旅に出る前にした約束の1つだ。

 それに例え周囲に人がいないとしても軽々しく教え名乗っていい身分ではないのだ。


 トリスが納得したあと、アルドが疑問を口にする。

 新聞でも世間の声でもディオを批判する声があったのはアルドはなんとなく思い出して分かったのだが、シドがいうほどひどいものなのか疑問が残る。


 だってアルドの知るディオはちょっとお調子者だけど、すごく頼りになるそんな人だから。


「ねぇ、そんなにひどいの?その評価というか悪口というか」

「それはまぁ……。世間じゃ無能な第三王子いとその人に仕える人間だから、風当たりはかなり強いよ」


 あまり外に出されなれない(人目につかせられない)ディオなので、ほとんど訂正していないためにというのもある。興味を持たれない方がありがたい。

 もっとも、今はもう本人はさほど気にしていないのだが。


「アルドさんも覚悟はしておいてください」

「そういうもんか」


 理由を知らないアルドは不思議に思いながらもそれ以上の追求はせず納得することにした。


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