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30 調査結果とディオの提案

お読みくださりありがとうございます!

 トレンカの町での仕入れも終わり、ウォルグが滞在している町まで戻ってきたディオは、再びウォルグの借りている家に滞在することになった。


「仕入れはちゃんと出来たか、ディオ」

「うん。ウォルグのおかげでもうちょっと上手く出来そうだよ」

「そりゃ良かった」


 商人を両親に持つウォルグに聞いたアドバイスが役に立った。

 いざ実践となると難しいこともあるが、それを組み込んで手応えがあるというのは素直に嬉しい。


 純粋に喜ぶディオにウォルグは兄貴分らしく笑った。


「ウォルグの方は上手くいった?」

「おう、バッチリだ。大丈夫そうな時に声かけてくれ」

「それじゃあ、少し休ませてもらうね」


 話はディオが一眠りしてからということだろう。

 戻ってきたばかりのシドたちにも休む時間はあってもいい。


 この前と同じ部屋に借りたディオたちは必要な荷物だけ部屋に運び込むと、すぐに寝てしまったディオが起きるまでに出来ることをやっておこうと細かな雑用を片付けていた。


 二時間ほど過ぎてからディオが起きる。

 珍しく起きてから少しの間ぼーっとしていたディオはプルプルと首を横に振ってからベッドから出た。


 飲み頃だと渡された紅茶を飲んで一息ついたディオはキビタキ村の話を聞くためにウォルグの部屋に向かった。


「ウォルグ、話聞きにきたよ」

「そうか、大部屋に移動するか」


 実際にキビタキ村に行ってきたメンバーからの話も直接聞けるようにと大きな部屋に移動する。


 いつでも集まれるようにとキビタキ村に行ったメンバーは家に待機させていたらしく、すぐに集まった。


「お前らから聞いてた通り相当ひどいな、あの村は」

「権力が集中しちまうとこはなぁ」


 事前の情報と、実際に見た村の様子に想像以上だったと零すメンバーたちは自分たちが調べてきた村の状況を伝え始める。


 ディオたちが戻ってきてから詳細は聞くとウォルグも詳しい内容は知らないらしい。

 そのことについては貴族相手ならシドとトリスがいた方がいいと事前にウォルグが伝えていたらしくなんの疑問も出ていなかった。


「村民からの話じゃ、確かに不作はあったがそれほどものじゃなかったらしい」

「それよか支援の打ち切りの方がダメージがでかかったみたいだぞ」

「特に農具を修理するための材料が手に入らないらしくって、農作業もできなくなってきてるみたいね」


 それからと、税金が上がったということや訪れる商人が変わり、行商人が来る回数が少なくなったという話が出てくる。


「ずっと変わらずにいる商人から聞いたところだと、この辺りの街道に小規模な行商人だけを狙う野盗が出るらしい」

「そのせいで今までの人たちも被害にあってこれなくなっちゃったんだって。護衛を雇うほどの余裕もないから、行きたいけど出来ないんだってさ」

 

 黙って彼らの話を聞いてたディオは報告が一通り終わると、一度目を閉じると片耳を手で塞ぎ、ウォルグやシドはその様子にディオが倒れやしないかと神経を研ぎ澄ませる。


 耳を塞いだまま目を開けるとゆっくりと息を吐きだし、キビタキ村を調べてきたメンバーに笑顔で礼を言った。


「ありがと、さすがウォルグが選んだメンバーだ。短い時間でよくここまで調べられたね」

「兄貴に認められてたなんて」

「ありがとう、そう言ってくれると嬉しいわ」


 ウォルグとシドは目を合わせてアイコンタクトを取ると、ウォルグは後はこっちで話し合うとキビタキ村を調べてきたメンバーをさっさと部屋から追い出した。


 彼らが部屋から出ていくとアルドを除く全員からディオは視線を向けられる。

 その視線はディオの心配と行動を咎めるものだった。


「うー、ごめん。でも、でも無理はしてない、してないから……ほら、倒れてないでしょ」


 視線を受け止めたディオは居心地の悪さに小さく唸って、弁解をする。

 無理とか無茶とかそんな範囲ではなくても、それは負担のかかるものだと分かられているから余計に心配される。まして、人のいる前でやるものではないのだ。


「そういう問題じゃないだろ」

「私たちも最大限の注意は払っていますが、妖精についてはディオ様本人に頼るしかありません」

「それこそ、この旅は……」


 シドたちがそれぞれディオに言葉をぶつけて、ウォルグが間に入る。

 彼らとは違う立場だからそこ、違う言葉をかけることも出来るのだ。まぁ、ディオ本来のことを考えるとウォルグもシドたちと同じようなことを言うべきなのだろうが。


「落ち着け。お前らの言いたいことはディオも分かってるはずだ。ディオ、お前だってシドたちを不要な危険に晒すつもりはねぇんだろ」

「うん。そんなことはさせない!」


 俯いた顔を上げたディオは力強く頷いた。


「ここの連中だって全てを信用出来るわけでもねぇ、お前の認識阻害が通じないやつがいるかもしれねぇ。その時、お前はどうするんだ?」

「……ウォルグ、シド、トリス、フラン、アルド。ごめん」


 ディオはこの場にいる全員の名前を呼んで、頭を下げた。

 心配してくれる彼らを不要な危険に晒したこと、自分が不用意な行動をしたことへの反省も入れてするべきではない謝罪で――。


「頭を下げるな、ディオ。今回はウォルグさんからの注意でこれ以上は言うつもりはないが、次やったらこの旅は終わりにするからな」

「うん。ありがと、シド」


 明るい声で礼を言ったディオは、話を元に戻す。


「それで村のことなんだけど」

「なんだ?」


 ディオはわずかに躊躇いを持って主にシドとトリスに向けて口を開いた。


「ウォルグ一人に護衛を任せるって言ったらシドたちはどう?」

「必要なのであれば」

「そうする理由にもよる」


 二人の返答にディオは頷くと、ディオは自分がやりたい大まかな予定について説明を始める。


「ヒタキ男爵の方はシドに行ってもらいたいんだ。仮にはなるけど爵位の剥奪をするためにも」

「それは確かに俺が行くほうが早いだろうな。それなら、トリスは?」

「ウォルグのことのメンバーと野盗退治、駐在騎士にも参加はしてもらうけど。男爵と繋がってるみたい」


 貴族との癒着があるならトリスがいれば話が早く進むということのようだ。


「そういうことなら。ウォルグさん、お願いできますか」

「お代は弾んでもらうからな」


 冗談めかしてそういうウォルグは快くディオの護衛を請け負ってくれる。

 強さもさることながらウォルグは想定外のこに対しての対応力も高いので、シドとしてもウォルグに任せるのは安心なのだ。


「その後なんだけどさ、村が混乱しないように騎士がつくまでの間の対応をウォルグたちの方に任せたいんだけど、頼んでいい?」

「任せとけ」

「ありがと。この町にウォルグがいて助かった」

 

 会議がお開きになると、各自自分たちのやることのための準備に取り掛かった。



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