24 キビタキ村の領主
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キビタキ村から馬車で半日ほどの距離にある町までシドはすぐに馬を走らせた。
馬車の中で一眠りしたディオはすぐに何かを考え込んでいて、いつものように騒がしくすることはなかった。
ただディオにだけは何が繋がっているようで一人百面相をしていたが、邪魔にならないようにとシドたちは極力ディオに声をかけないようにしていた。
シドが取った宿の部屋のソファに座ったディオは、すぐに町まで移動してくれたことに礼を言うとトリスとアルドにキビタキ村の領主の息子の様子を尋ねた。
あの怯えたふうな男の子の様子は、正体がバレることを危惧したためあまりディオが関わることが出来なかったこともあり、実際に接客したトリスたちから話を聞くしかないのだ。
「そうですね。怯えているというよりかは、遠慮をしているといったふうに思えました」
「遠慮ね。アルドからみてどう思った?」
トリスから見た様子を聞いたディオはアルドにも尋ねる。
「似たような感じ。あれこれ買い足されるのを必死に止めるみたいだった」
「そっか。あの家も何かありそうだね」
ディオはなるほどと頷き、シドの方を見る。
自分一人の意見で進めてもいいのだが、現場で一番指揮を執るシドとはしっかりと意見を合わせておきたい。
「ま、あまりいい領主ではなさそうだな」
「幸いなのはみんなで助け合いながら暮らしてるってことだよね。食堂での会話を聞く限りは」
キビタキ村の村人たちの会話を思い出しながらフランが言うと、ほとんど会話が耳に入っていなかったディオはその話をするようにシドたちに言った。
「そうだな。まずは店の人間からの話だが、六年ほど前に当主が代替わりしてから今まであった支援の一切が打ち切られたらしい」
「全て打ち切り、ね」
「ああ。あの店なら肉なんかの仕入れ先を斡旋してもらっていたようで、ツテがない村民からするとそれが頼りになっていたという話だ」
なるほどとシドの話を聞いて頷いたディオは、大変な村の暮らしにため息をついた。
「シドのことだからもっと聞いてると思うけど、先にトリスたちの話を聞かせてもらうね」
「わかった」
ディオはトリスたちの方を向いて、彼らが話す内容に耳を傾ける。
シドにはトリスたちからの報告を聞いた後でまとめつつ他の情報を聞くことにしようとディオは決める。
「今の領主がかなり恨まれているというのは分かりました」
「建国祭くらいは豪華にしたいって聞こえたけど、来てくれる商人も減ってほとんど何もできないみたいだよ」
建国祭という言葉に嫌そうな顔をしたディオは、首を横に振って今思ったことを飛ばすとアルドにも尋ねる。
「アルドは?」
「特には、でも、ギリギリって感じはした」
生活水準はアルドが孤児として一人で生きていた頃よりは少しマシといった程度だとアルドは言う。
「あの様子だとまぁ、長くは持たないだろうね」
「領民にはギリギリの暮らしをさせて私腹を肥やしているってことだな。それにしても大した金にはなるわけはないはずだが」
ほとんど男爵という爵位だけのような家なので、領民への支援を打ち切っても手に入る金額はわずかなはずとシドが言う。
もっとも、田舎の男爵家と考えればそれなりの大金にはなるのだろうがシドからすれば端金とも言える程度だ。
「あー、うん。その辺りにはついてはちょっと予測もあるんだ」
「すぐ動けるようにしておく」
「お願い。時間がなければ強行するかもしれないから、トリスもそのつもりで頼むね」
「はい、ディオ様」
戦う可能性を示唆したディオは準備だけはしておくようにと伝えて一度会議はお開きとなった。
リフレッシュにとフランはお茶を淹れて、ディオに渡す。
「ありがと、フラン」
フランに礼を伝えたディオは飲みやすいぬるめのお茶にすぐに口をつけて小さくため息をついた。
それをみてフランは小さく笑う。
「大変だね、ディオ様は」
「もう、他人事にして」
全くとフランに返したディオは、カップの水面を見つめて言った。
「意外とああいう家も少なくないのが辛いところだね」
人々の安寧の暮らしを任されているのが貴族だというのに、それが果たされていないとなるとやはり問題がある。
もちろん、そんな家よりまともに領地経営出来ている家の方がはるかに多いのだが、一定の割合で領民のことを考えていない領主がいるのも確かなのだ。
「嫌になった?」
「まさか、全然思ってないよ。オレが役に立てることだもん」
そう言って笑うディオは胸の前で拳を作り気合を入れる。
本来の自分の役目が果たせない以上は、こういったことで役に立つしかないと思っているのだ。
「僕からすればディオ様が元気でいてくれるだけ充分なんだよ。じっとしてられないのはよく分かってるけど」
フランはディオが元気でいるならそれでいいと笑い、シドたちにもお茶を配りに行く。
戻って来たフランを呼んだディオは、何かを書いた紙をフランに渡す。
「フラン。これ、用意できるようならしてもらってくれる?」
「分かった。明日、商会に聞いてくるね」
「よろしく」
フランは受け取ったメモをいつも使っているカバンの中にしまうとディオの対面に座った。
「ディオ様、体調に変化はない?」
「まだ大丈夫。ま、万全にして変わらないものだからね」
毎年この時期にディオは体調を崩すため、心配したフランが尋ねるとディオは今のところは問題ないと微笑んだ。




